その後? 2
かなりの人物が再登場です。
それと父様なのですが、これまたとんでもない物を作り出したのです。
私が父様に呟いた何気ない一言が切欠だったそうです。厳格な審査と調査をくぐり抜けた我が家の使用人の皆は身内同然で、私達家族が最も信頼している人達です。その人達を疑わなければいけないと言う事にやるせない思いをしたのは父様も同じ、いえきっと長く接してきた父様が一番辛かったのでしょう。何とか疑わずに済む様にと魔道具の開発を始めたのです。
サマーセット家は血筋等により王家を諫める事が出来る唯一の家。その為宰相という役職を代々受け継いできました。元々父様は穏やかでやや内気な、魔道具の研究をコツコツするのが好きな青年だったそうです(母様談)。ですがサマーセット公爵家嫡男と言う立場は国を揺るがす程重く、それを深く理解していた父様は成人するのと同時に研究を止めたのです。そして、周囲の期待を裏切る事無く公爵となり、宰相となりました。
ですが私の言葉が切欠となり、父様の押し込めていた心に火がついてしまいました。宰相、公爵の仕事もこなしつつ、領地の引退した魔導師様や若かりし頃の伝手すら使い、寝る間を惜しんで作り上げたのが、我が家の使用人達の胸にとめられた小さなブローチ。それは一枚の葉の形をしています。見た目は緑の葉っぱなのですが、負の感情が多くなる度に葉の数が増えていきます。また負の感情が魔力とリンクすると色が変化し、緑から黄色、黄色から赤へと変わるのです。これによって周囲に負の感情の増加やそれに伴う魔法が認知されるのですぐに対応出来ます。それだけでは無く、神官の協力のもと浄化魔法が付与されていて葉が3枚になった時と色が赤になった時、自動で浄化魔法が作動するという優れもの。魔道具の発動原理そのものを負への一点のみに絞った事で難しい魔法術式も要らず、大量生産が可能になりました。ただ、浄化魔法の使い手が少ないのが難点だったのですが、私達家族とクロード様並びにポアロ先生が居たのでクリア出来ました。お二方には申し訳なかったのですが、歴史に残る素晴らしい魔道具の制作に携われるのは願ってもない事だと言うので遠慮無く協力してもらいました。それに小さな爪程のブローチに浄化魔法を付与するのは難しく魔力操作の練習になり、今やクロード様は魔力を糸の様に細くし自在に操れるまでになったのです。勿論、ポアロ先生にはまだ敵いませんが。
トルティナ修道院には月に一度、マリネラ様とカノン様と一緒に面会に行っています。
憑き物が落ちた様に大人しくなったロザリア様は、修道院の規律に逆らう事無く、日々慎ましい生活を送っています。実の父に捨て駒にされ、戻る家を失ったと知らされても動じる事無く淡々と受け入れたそうです。修道院で受けられる教育に前向きに取り組み、身の回りの事を自らこなそうとする姿勢はきっとロザリア様本来の姿なのでしょう。私に行ってきた全ての言動を恥じ、真摯に謝ってくれました。マリネラ様とカノン様に対しても最後のお茶会で彼女達に罪を擦り付けた事を謝っていました。魔に支配されていても自我はあり、自らは動けなくても自分の言動はわかっていたそうです。ですが、彼女の中に魔が発する嫉妬や妬みはあったのだとも教えてくれました。
本来のロザリア様は濃いローズピンクの髪に真紅のルビーの瞳の美少女です。ややつり目がちで勝ち気に見えますが、気高さの方が勝ります。元公爵令嬢は伊達では無く、マナーも完璧であんな事さえ無ければ引く手あまたの女性になったに違いありません。かく言う私も、彼女の潤んだ真紅の瞳に見つめられると胸がドキドキします。それを告げると3人は顔を見合わせ、朗らかに笑い声をあげました。何故笑われたかはわかりませんが、3人がとても楽しそうだったので良かったです。
クロード殿下の手元にある闇の神様を封印した珠は、綻ぶ事も無く沈黙を保っています。
このまま大人しく封印されていてくれたら良いのですが、そうもいかないのはわかっています。
『その時』はもうそう遠くないでしょう。
…………先月、私は12歳の誕生日を迎えました。
来年の春には、正式に学園に入学します。
入学したらきっと私の人生の歯車は加速します。
それは予感というよりも確信に近いもので、避ける事は出来ないと思います。
この世界でリフレシア・サマーセットとして転生してから7年の月日が過ぎました。
私は前世も今も含めて、素晴らしい人達に出逢い、溢れんばかりの多くの愛情を与えられた事に感謝しています。
でも、リフレシアとしての7年間は特別なもので、周りの人達への愛着は自分でも呆れる程です。
だからこそ、私は未来を諦めたくないと強く願うようになりました。
必ず起こる闇の神様との邂逅?
ええ、受けて立ちますとも!
いつかいつかと怯えていた、かつての私と同じと思わないで下さいね?
私は、人間は諦めない限り無限の可能性を持っているんです。
沢山の人達との絆が、恐怖に怯えて未来を諦めていた私に立ち上がり、向かっていく勇気をくれました。
だから……
闇の神様、覚悟していて下さいね?
小さな魔道具に込められた想いはアルヴィスさんとレティシアさんの心の奥に……




