初登校 2
末っ子神様、再登場の巻。
「う、う〜ん。はっっ!ア、アリア?」
すこぶる爽快な目覚め。これはかなり本格的に寝てしまったのではと焦る私。
「お目覚めですか?」
「アリア!私どれ位寝てしまったの?」
「リフレシア様、落ち着いて下さい。大丈夫です。一時間程ですよ」
よ、良かった〜。いや、良くありません。初登校で到着した途端寝るなんて!……しかも殿下もいらっしゃるはずではなかったでしょうか?失態です!
「……どうしましょう……。殿下に不敬な事をしてしまいました」
「うん?呼んだ?」
「…………」
「気分はどう?リフレシア嬢」
「………………」
目の前に艶やかな黒髪に黒曜石の瞳の美少年が、殿下らしき人物が居ます。いや、無いでしょう?うん、無い。そうか、これは夢です。夢の中で夢を見ているのです。もう一度寝て、起きたらいいのよね。よし、寝ましょう。
「えっ?もう一度寝るの?いいけど、体調が悪いなら医者を呼ぶ?診て貰ってからの方が良くない?」
「へっ?現実?」
「っ、ははっ、現実だよ。夢と思ったの?可愛いい。……この間とは随分違うね、こっちが素かな?」
「か、可愛いい?ほえっ、えっ?ア、アリア〜」
「リフレシア様、落ち着いて下さい。現実です。そしてこの御方はクロード殿下です」
起きてすぐなのに殿下は居るし、砂糖はぶち撒くし私の頭は大混乱で側に居たアリアの腰に抱き付き顔を隠します。やんわりと抱き返して頭を優しく撫でて貰う内に、じわじわと理解する現状に身体が小刻みに震えます。それを感じたアリアが抱く力を強め囁くように話ます。
「リフレシア様、大丈夫です。事情を説明したのに強引に部屋へと踏み込んでこられたのです。寝起きですので、理解が追い付かず不敬な事があっても不問にすると言質は取ってありますから」
……行動・思考パターンを把握されているのはわかっていましたが……うちのアリアって有能すぎません?
等と明後日な事を考え現実逃避をしていたら、忙しないノックと共に扉が開きます。
「クロード殿下っっっ!!やはり此処に……駄目だと念押ししたはずですよね?」
しれっとした声で殿下が答えます。
「そうでしたか?僕はただ、級友を案じて見舞いに来ただけです。たった1人の級友ですよ?登校初日に倒れたと聞いたら心配するのは当然の事では?」
「それでもです。淑女が寝ている部屋に押し入るなど許される行為ではありません!」
「嫌だなあ、叔父上。僕達はまだ9歳ですよ?間違いなど起こるはずも無く、この校舎に僕達以外はいないのだから噂にもならない。ね?何の問題もないでしょう?」
「そ・れ・で・もです!……それにリフレシア嬢の気持ちは無視なさっておいでです。こんな事を平気で押し付ける相手に心を開くと思いますか?」
「っっ、そ、それは……」
アリアの腕の中で顔を上げて見えた殿下は狼狽え、目が泳いでいました。
「……貴方は御自身の立場を理解しておいでのはずです。リフレシア嬢がいくら筆頭公爵の令嬢であっても貴方を拒む事は出来ないのです。ご自分の欲求のままに相手の心を無視する事を私は許容出来ません」
「………………」
冷静な諭す様なポアロ様の言葉に俯き唇を噛む殿下は、諭された内容よりも辛そうです。
「……ポアロ様。少し驚きましたが、私は気にしていません。それ位にしてさしあげては如何ですか?」
「…………。リフレシア嬢がそう言うのであればこれ以上は控えましょう」
言い足りなさそうですが、とりあえずは堪えてくれたみたいです。
「クロード殿下。少し驚いて取り乱してしまいましたが、お見舞いありがとうございます」
アリアから離れ、ベッドの上ではありますが姿勢を正し殿下にお礼を言います。
「っっ、僕は……」
「ふふっ、変な顔で寝てなかったでしょうか?流石に淑女教育を受けても寝顔まではわからないので。もし、変な顔だったとしたら秘密にして下さいね?お嫁に行けなくなってしまいますから」
「……ごめん、リフレシア嬢。考えが足りなかった。以後気を付けるから、許してくれる?」
「ええ、勿論ですわ。許すも何も、そもそも怒っていませんから。……ですから、お気になさらないで下さいませ。殿下は笑顔の方が素敵ですわ」
「っっ、あ、ありがとう。え〜と、これからもよろしく」
「はいっ!此方こそよろしくお願い致します」
良かった、殿下が笑っています。殿下の立場上、ちょっとした悪戯すら許されなくて、きっと窮屈だったに違いありません。此処は隔離されていてポアロ様の結界も張られています。誰の目も気にせずに殿下が過ごせる唯一の場所。出来るなら先程みたいな辛そうな顔でなく笑顔でいて欲しい。これから闇の神様に供に携わる仲間として、そう思った私でした。
これから始まる学園生活。
……リフレシアは平穏無事に過ごせるのでしょうか?




