初登校 1
ポアロ様VSアリア
意外な勝敗結果かも?
繋がれていない方の手を振ると、にこやかに微笑む母様。
「では、失礼致します」
ポアロ様の声とともに感じる浮遊感に驚き、ぎゅっと握ってしまった手は宥める様に振られます。
「くすっ、着きましたよリフレシア嬢。転移は初めてでしたか?大丈夫ですよ」
……凄い!
一瞬で見知らぬ場所に居る事に先程感じた小さな恐怖よりも好奇心が勝り、心がわくわくします。
「リフレシア様ならすぐに習得出来ます。そうしたら私と二人で登校しましょうね。楽しみにしています」
「……リフレシア嬢、ゆっくりと覚えたらいいんだよ。他にも色々な事を覚えなくてはいけないし、何なら覚えてからも警護を兼ねて私が送迎するよ」
「警護は私で間に合っております。お忙しいポアロ様にお願いせずとも大丈夫です」
「リフレシア嬢の送迎にかかる時間を確保するなど造作もない事だから気にする必要などないよ」
「いいえ。繰り返す事で熟練度は上がります。練習のためにもお嬢様がなさるべきかと」
「っっ、だが不測の事態に備えて監督する者も必要だと思うよ」
「……ちっ」
……最後舌打ちが聞こえた様な?
ポアロ様とアリアの怒涛の勢いに口を挟めない私は交互に二人を見ていたせいか、くらくらしてきました。
「「リフレシア嬢(様)!」」
傾いだ身体を二人が素早く支えてくれたおかげで倒れずにすみました。
危なかった!初登校で早退は避けたいです。
「リフレシア嬢、転移にまだ身体が慣れてないから暫くは気を付けないといけないね。もしかしたら余り相性が良くないかもしれない。能力的には問題は無いはずなんだけどね」
「ご気分は如何ですか?とりあえず、一度横になった方が良いと思います。ポアロ様、場所はありますでしょうか?」
「うん、新校舎の保健室にベッドがあるから、そこに運ぼう。リフレシア嬢、失礼するよ」
「へっ?」
膝裏に手を入れて抱き上げられます。
お、お姫様抱っこ?
いや、ちょっとふらついただけです。
しかも、多分転移のせいじゃなくて頭の振り過ぎが原因です。
や〜め〜て〜
心の中で叫ぶも過保護モードに入った二人は足早に進んで行き、あっという間に保健室らしき部屋のベッドに降ろされます。
「暫くは横になっていなさい。通常の授業とは違うから別に時間は気にしなくて良いから」
「えっ?いえ、私は全然大丈……」
「そうですね。学園の準備などで忙しくしていた疲れもありますし、少し眠られた方が良いと思います。側に付いていますから、安心してお休み下さい」
……寝るのは決定事項みたいです。
まぁ、確かにここ2〜3日は興奮気味でしたので、言われてみると疲れてる気がします。
自覚すると何だか眠くなってきました。
「そう……ね、その方がい……いか……」
最後まで話す事も出来ず、眠りの底に意識は落ちてしまいました。
□□□□□
「……リフレシアは眠った?」
「はい、かなり深く。実際ここ数日は興奮気味で眠りもかなり浅かったみたいですので」
「そう。なら、暫くはそのまま寝かせておこう。普通の入学ではないから式典もないし、担当教師は私だから何の問題も無いからね」
「そうですね、その方が良いかと。ところで何故殿下と交流させるのですか?今、殿下の元に封印したものがあるのですよね?交流する事で触発したりする可能性があるのでは?」
「誰が封印したと思ってる?例え綻びが出ようともこれだけ頻繁に近くにいたらすぐ気付ける。それも含めたこの状況なんだよ。それにリフレシアにも執着しているから完全に離してしまうのも悪手だからね」
「……アレの殿下とリフレシア様への執着は転生を繰り返す度に酷くなっている様に思えます」
「いや、アリアの言う通りだよ。だからこそ、父上の協力のもとに創られたこの世界で、今回で全て終わらせなければならない。その為に、私達に出来る事は全てしておかなければ。人の器では制限はあるけれどね」
「……はい。御心のままに」
「リフレシアの事を案じているのはアリアも同じだろう?……傷付いて頑なになってしまった彼女の心に寄り添い愛情を注ぎ続けた君を私は信頼してるよ。私の居ない所で事が起こった時の判断は任せる」
「……っ、了解しました」
「……ただ、もう少しポアロとしてリフレシアの側に居るのを許容してくれると助かるんだけど?」
「それは了承しかねます。人としての役割はサマーセット家の侍女で、雇い主はポアロ様ではございません。リフレシア様に群がる害虫駆除も専属侍女の私の役目ですので」
「……が、害虫って……」
「最近のポアロ様の御様子は、害虫に該当すると認識しております。しかも少々たかが外れております故」
「……自覚はあるよ。でもこの感情がアリアの心配しているものなのかはわからない。何分初めての感情だからね?でもリフレシアが誰かを望むなら、喜んで協力するつもりだよ。リフレシアが幸せになる事が一番優先するべきなのだから」
「……そう出来るとよろしいですね。わかりました、少しは許容致しましょう。ですが見かねましたら遠慮無く物申しますので、それはご了承下さい」
「はいはい。まぁ、そんなアリアが側に居るから安心出来るのだけどね」
眠っている間に、二人でこんな会話がかわされていたなど知る由もない私なのでした。




