いざゆかん、学園へ!!
皆様、覚えていますでしょうか?
彼女達はこれからも登場しますのでよろしくお願いします。
父様と話をしてから部屋での軟禁は解かれ、あれよあれよという間に母様とアリアによって準備が整い、いよいよ初登校の日となりました。
あれから父様は宣言通り、あちらこちらに行っているみたいで我が家には仮眠をとる位しか帰って来ません。たまに顔を合わせても最低限の会話のみですぐに何処かに行ってしまいます。だけど、この間の思い詰めた様子は払拭されて、むしろ生き生きと瞳を輝かせているので心配はしなくて良さそうです。
問題は父様ではなく私の方で、新しい事にわくわくする気持ちもありますが、殿下を含めた多くの人達と接する不安の方が大きくて、ポアロ様を待つ今も胸のドキドキが止まりません。アリアが一緒なのが唯一の救いです。
ポアロ様が我が家の庭にあるガゼボに転移の陣を刻んだので母様とアリアと数人の使用人で待機しています。その中に件の子爵令嬢達マリネラ様とカノン様もいます。私が目覚めた後、すぐに当家に来て貰ったのですが、その際私の出した条件で疲労困憊しています。それは侍女見習いとしてのお仕事と私と同じレベルまでの教育とマナーの習得。公爵令嬢レベルの教育とマナーは学んでいて損はありません。高位貴族に嫁いでも通用しますし、官僚としても就職可能になります。私はこれから学園へ通うので、その間は侍女見習いとして、学園がお休みの日は私と一緒に家庭教師に習います。期限は13歳の学園入学までで、それまでに私に追い付いて貰う事を最初2人は『そんなに時間は必要ない。すぐに追い付ける』と息巻いていたのですが、3日で言を翻しました。今では初めの勢いは露程も無く、日に日に萎れた花の様になってきました。勿論、週に一度完全なお休みもありますし、月に一度は特別な行事が無い限り好きな日に休む事も出来ます。……ただ、通常雇用では無く処罰としての労働なので給金はありません。ですが4年弱で最高峰の教育とマナーも学べるなら悪くは無いと思うのですが……慣れるまではそんな事を考えられなさそうですね。
兎に角今は学園の事です。
私としては目立たず、人との交流も最低限にし、本来の入学時期までを穏便に過ごしたいのです。
ポアロ様が言うには、特別入学と言う形なので他の生徒と同じ授業は受けなくて、ポアロ様の部屋のすぐ側に新しく一棟作られた学舎、あらゆる防御結界付きの魔法訓練場が私と殿下の教室らしいです。
新しく一棟って、とは思いましたが使用するのが桁外れの魔力持ち2人で、しかも殿下と公爵令嬢なのだから問題ないと言われるとそれもそうかと納得したのです。更に言えば現存の訓練場は、私達の魔法の威力では意味を為さないそうです。他にも理由はあるそうですが、『それは追々ね』とはぐらかされてしまいました。
その学舎は魔法訓練場だけでなく、座学を学べる部屋や、魔道具制作を行える作業場、魔法薬などを作れる研究室、更には小さな図書室まであるそうで、至せり尽くせりなもの。私としては権力誇示みたいで若干の罪悪感もありますが、これからの事を考えると整った環境で学べるのは有難いです。……本音を言えば今まで魔力や熟練度を隠しての訓練で、部屋で結界を張り僅かな時間しか出来なかったので、ちょっと嬉しいです。
そんな事をつらつら考えていたら、馴染んだ清廉な魔力を感じました。
「おはようございます、ポアロ様」
「おはよう、リフレシア嬢」
このガゼボは私のお気に入りで、此処の周りは大きな木で囲まれています。特別な花なども植えられておらず、足元に咲くのはどこにでもある野花。白詰草や菫など前世の記憶にある花もちらほらあります。森の中の秘密の休憩所みたいにしたいとお願いしたのです。
その素朴な風景を背景に清廉な魔力を纏い、穏やかな微笑みを浮かべるポアロ様は溜息が出る程美しく、侵しがたい神聖な宗教画の様です。……実際中身は神様ですが。
「おはようございます、ポアロ様。わざわざリフレシアの為にありがとうございます。どうかよろしくお願い致します」
「おはようございます、レティシア様。朝日に輝く様は一枚の絵画のようですね。リフレシア嬢の送迎をさせて貰えるのは光栄な事と思っていますので遠慮はいりません。勿論、リフレシア嬢は私が責任を持って預からせて頂きますので、心配なさらないで下さい」
流れる様に私の手を取ったポアロ様とすっと側に寄るアリア。
「殿下を待たせる訳にはいきませんので、早速ですがお暇させて頂きます。リフレシア嬢、よろしいですか?」
「はい。では母様、行って参ります」
「ええ、いってらっしゃいリフレシア」
さあ、いざゆかん、学園へ!!
……秘かにリフレシアは魔法大好きっ子です。
一葉時代の一番のお気に入りは魔法少女のアニメでした(笑)




