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アルヴィス・サマーセット side



次回から視点が戻ります。


……シリアスに疲労困憊です……





今、目の前で起こっている事に私は身動きすら出来なかった。



異例の王家主催のお茶会は2人の王子殿下の側近と婚約者を選ぶ為のもので、宰相である私は事前に知っていた。我が家の権力が強すぎる為、我が子達が側近にも婚約者にも選ばれない事もわかっていた。だが表向きはお茶会なので、筆頭公爵家の私達も招待しないわけにはいかなかったらしい。王家直々の招待を断る事も出来ず嫌々ながらに参加しただけだった。だから、あんな事になるなど考えもしなかったのだ。


以前から度々リフレシアに絡み、根も葉もない噂を撒き散らしていたボードフォール公爵令嬢が第一王子や我が子達を巻き込んで騒動を起こすなど誰が想像できただろう。


ボードフォール公爵令嬢から出現した前例のない魔に、この国最強の魔導師が出てきた。しかも、その場には第一王子も我が子達も居合わせたのだ。駆けつけた多くの魔導師に止められ、側に行く事すら出来なかった。


我が子達に会えたのは全てが終わった後で、顔色を悪くした3人を見た時は安堵より大人気ないとわかっていてもボードフォール公爵令嬢に殺意さえ覚えた程に肝を冷やしたのだ。

子供達は当事者で事件の詳細を話さねばならなかったのだが、色濃い疲労に翌日魔導師長自ら我が家へ足を運んでくれる事になった。


そして我が家に訪れた魔導師長、ポアロ様が捜査結果とそれから推測されたボードフォール公爵家の話をし始めた。

妻や子供達は口を挟まず、私とポアロ様の会話を聞いていた。

だがボードフォール公爵令嬢の話になった時、突然リフレシアが激昂したのだ。


ただ怒りに駆られただけなら良かった。


だがリフレシアの怒りは今まで見た事も聞いた事もない現象を起こした。


赤金色の陽炎を纏い、瞳の色さえ変えたのだ。



輝きを増してゆくほどにリフレシアの輪郭がぼやけていく。

赤く染まった瞳も何処を見ているのかわからない。


声を掛ければ、刺激すればそのまま消えてしまいそうで、私は声も出せず動く事すら出来なかった。

視線だけで隣を見れば妻や息子達も、息をのみただリフレシアを見詰めていた。


そんな中、ポアロ様はリフレシアを抱き締めてひたすらに声を掛け続けた。


「リフレシア嬢、大丈夫、大丈夫だから息をして」


何度も何度も、娘の名前を呼ぶ。

まるで此処に引き留めるかのように。

焦燥と慈しみがこもった優しい声で。


何度めかの呼び掛けにポアロ様に抱き締められたリフレシアの身体が反応を示す。纏っていた陽炎が消え、瞳の色もいつもの美しいアメジストへと戻っていく。だが瞳は涙で潤み、酷く憔悴していた。リフレシアは一言も声を発していないのに、ポアロ様は会話しているかのように語りかける。


「少し疲れたでしょう?だから今は休めばいい」


リフレシアは儚い微笑みを浮かべた。


「ええ、貴女が望むだけ。おやすみなさい、リフレシア嬢」


ポアロ様がそう言うとリフレシアは静かに目を閉じた。




……私は何も、何も出来なかったのだ。





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