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ポアロ・ベルフォード(神様) side



暫くの間、別視点が続きます。



ストックが無くなった為、後書きは暫くお休みします。

……たまに書ければいいな、と思っております。



ボードフォール公爵令嬢の事情を知ったリフレシアに異変が起こった。


赤金色の陽炎を纏い、紫の瞳がルビーのような赤に変わる。

普段余り見る事のない険しい表情が彼女の怒りを表していた。

そして、あろう事か前世の最期と同じく輪郭を失いかけている。

あってはならない、いや、これを防ぐ為のこの世界で何故?

ボードフォール公爵令嬢はリフレシアの近しい者ではなかったはずなのに……


思考するのは後でいい、今はリフレシアを何とかしなくてはいけない。だが、ここにきて自ら望んだ現世のこの身が枷となった。この身体では神としての大きな力は使えない。そうなると彼女の魂をここに留める手段は無いに等しい。思わず抱き締めるも赤く染まった瞳は虚ろで何も見ず、煌々とした光を増すばかり。魔につかれているわけでも身体を害しているわけでもないこの状態に光魔法が効くとも思えない。彼女自身の強さに頼るしかなかった。


為す術のない私には彼女の名を呼ぶ事しか出来ない。


「リフレシア嬢、大丈夫、大丈夫だから息をして」

ただただ赤い瞳を見開いて呆然と佇む彼女は、呼吸すらしていなかった。

だがほんの微かに私の声に反応し、腕の中の彼女の身体が弛緩する。それとともに小さな吐息が感じられた。少しずつ瞳の色も私の愛してやまない美しいアメジストへと戻ってゆく。それでも私の不安は胸に巣食ったままで、彼女の声を求め再び彼女の名を呼んだ。


「リフレシア嬢、大丈夫だから」


彼女の瞳に力がこもる。

声無き彼女の心が聞こえる。


……ああ、彼女はここに戻ってきた!


ただ彼女の身体と魂は極限まで疲弊していた。

それもそのはず、今までならこの世界でなければ、過去と同じく消滅したに違いない程の力の行使なのだから。戻ってきたのはいいけれど、余りにも危険な状態に彼女の身体と魂を眠らせる必要があると判断する。……ただ眠らせるのではない深い深い休息、一葉の世界でいうならばコールドスリープと呼ばれる眠り。リフレシアの身体と魂が元に戻るのに、どれ位の時間が要るのかわからないが……


「少し疲れたでしょう?だから今は休めばいい」


彼女にそう伝えると儚い微笑みとともに声無き応えが返ってくる。


(……少しだけ眠ってもいいよね?)


何時に無い自分を責める響きをのせたその返事に私の胸は締め付けられた。

少しでも彼女の心が軽くなるように精一杯の心を込めて彼女の言葉を後押しする。


「ええ、貴女が望むだけ。おやすみなさい、リフレシア嬢」



彼女の宿命を絶ちきり、今まで得られずにきた普通の人生や幸福を与えてやりたいとこの世界へ転生させた。

何も出来ず見守る事しか出来なかった私が、ほんの少しでも直接手助けしたいと現世の身体を手に入れた。


なのに、何ひとつ叶わない……


常日頃、神の御技を行使しているにもかかわらず。


神は、私はなんと無力なのだろう……





苛む心を呑み込んで、私は小さな温もりを抱き締めた。








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