無理無理の無理です!
今回キリの良いところまで……と思ったら長くなってしまいました。
神様の名前が某チョコレート(ピンク色の)みたいです……
……私の事を考えるのは後にしないと。
今はそれどころじゃないですから。
「ホールへの結界は張り終えました」
「では、殿下、ユリウス君お願いします」
ぱちんと殿下が指を鳴らすと同時に2人の結界が解けます。
結界がなくなった途端、黒い靄が大きくなります。
?魔が殿下の方に向かってる?
そう思った時、鈴のような音とともに靄が丸く透明な結界に閉じ込められました。
凄いです!!
強い光結界の上に氷結界が覆っていて、さらにはロザリア様との繋がりを断ち切っていました。
先程の殿下とお兄様の結界とは違いこの結界は透明な球体で光る水晶みたいです。
透明なのに内包する魔の黒さは見えず結界の強さがわかります。
結界はさらに圧縮していきビー玉程の大きさとなりころんと神様の手のひらに収まりました。
ロザリア様にも全くダメージがありません。
これを一瞬で……
どれもひとつひとつは出来ると思います。
けれど、寸分の狂いもなく全てを一瞬でなんて今の私では無理です。
神様が言ってた事が、どんな状況でも自分の感情を律する事が必要なんだと実感します。
ふふっ、まだまだ頑張る事がいっぱいですね。
うじうじ悩んでる暇がなんかないです。
「無事に封印出来ました。物理的結界を解除して大丈夫です」
わぁと興奮気味に歓声をあげる魔導師様達。
「叔父上!流石です!」
クロード殿下も瞳をキラキラさせて神様を見上げています。
先程までの大人びた様子はどこにいったのか年相応の子供らしさに笑みがこぼれました。
「……っっ!」
笑い声に気付いた殿下と目があいます。
ですが頬を赤らめすぐにそっぽを向いてしまいました。
……怒らせたかな?
ごめんなさい、バカにして笑ったんじゃないんです〜謝った方が良いのかなと脳内会議をしていたら神様に話掛けられました。
「リフレシア嬢、お疲れ様。もう浄化魔法は解いて大丈夫ですよ。ボードフォール公爵令嬢の眠りはどれくらいもちますか?」
「お気遣いありがとうございます。そうですね、2〜3時間くらいは大丈夫かと」
魔法を解いて若干脱力した身体に力をいれつつ答えます。
すっと近付いた神様は当たり前のようにふわりと私の腰を支えてくれました。
む〜、イケメンな上にスマートとは……ずるい!
でもお見通しですね、おかげで立つのがかなり楽になりました。
「誰かボードフォール公爵令嬢を魔導庁まで運んで下さい。それと浄化と鑑定のできる神官も呼んでおいて下さい」
神様の指示に魔導師様達はてきぱきと動きだし、あっという間にホールには殿下と神様、私達兄弟だけになります。
……不謹慎だとわかっています。
ですが、毛色の違う美形様達に囲まれたこの状況。
緊張がとけ柔らかな雰囲気の美形様……背景にキラキラオーラが見えそうです。
平常運転なんて無理、無理無理の無理です!
美形に囲まれて育っても美形に慣れるわけじゃなかった!
何だかいたたまれなくなり頬も熱いです。
ですが王族の前で筆頭公爵家の令嬢が失態を演じるわけにはいきません。
……それでなくても高飛車令嬢から進化して巷の小説にならったのか悪役令嬢などと呼ばれているのですから。
何とか体裁を保つ為に、赤くなってるだろう顔を俯く事で誤魔化します。
「場所を変えましょう。殿下と3人にはここまでの状況説明をお願いしたいので」
「もちろん全てお話します。ですが僕だけではだめでしょうか?弟妹は魔法の行使でかなり疲弊しています。出来るならば家に帰し休ませたいのです」
お兄様の私やシリスを案じる故の提案に顔を上げます。
「お兄様、私は大丈夫です。ですが、魔導師長様……」
「ポアロでいいですよ、リフレシア嬢」
……被せてきましたね、確かに言いにくいですが。
「ではお言葉に甘えて。ポアロ様、シリスは……弟は帰して頂けませんか?弟は先程の魔法行使で魔力の枯渇寸前です。体力は回復魔法で戻りましたが魔力はそのままです。それに弟はまだ8歳です。もし、どうしてもと仰るのでしたら両親の同席の上でお願い致します」
神様は優しい方です。
ですがやはり人とは違います。
一番違うと私が感じるのは絆に対する感情の希薄さです。
私に対しては過剰な程の慈しみを持って接してくれますが他者に対しては冷淡と感じるほどです。
本人にはその意図は無いのです。
『人』の感情がわからないのだと思います。
なので時々私が指摘すると悲しそうな顔で「ごめんね」と謝るのです。
幼い子供が独りで大人から事情を聞かれるような事は前世でもこの世界でもあり得ません。
保護者同伴のもとに行われるべきです。
それは法の観点からだけでなく子供の心の負担を減らすために必要です。
もちろん保護者の心の負担も減ります。
人からしたら当たり前の事でも神様からしたら未知の考えだと思うから伝えたのです。
神様は言葉で伝えればきちんと受け止め、考えてくれます。
……案の定、神様の瞳が微かに泳いでいます。
「すみません、考えが至りませんでした。今日は3人とも家に帰ってもらって大丈夫です。ユリウス君、リフレシア嬢の2人には話を聞かせてもらいますが明日で構いません。今日はゆっくり休んで下さい。明日此方からサマーセット家に伺います」
ほら、神様はやっぱり優しい……
「リフレシア、彼等に起きた事は彼等が解決すべきです」
「っ、でもお兄様が困ってて、私の魔法でなら……」
「リフレシア、駄目です。リフレシアの魔法はまだ人に知られてはいけない。……わかっているのでしょう?」
「…………」
わかっています。
私が持つ魔法の力は普通ではありません。
人に知られてしまえば私は鎖に繋がれてしまいます。
権力という鎖、研究という鎖、下手をしたら兵器として本当の鎖に繋がれてしまう。
わかっているけれど。
大切な家族を助けられる力があるのに、と諦められないのです。
なのに神様は先程より強い口調で言いました。
「リフレシア、絶対に駄目です」
悲しくて、悔しくて私は走って庭にある木の陰に隠れます。
膝を抱えて泣いていたら、木を挟んだ向こうからアリアが話だしました。
「リフレシア様、彼の方の癖をご存知ですか?」
唐突な質問に戸惑いました。
ですがアリアはいつだって大切な事を教えてくれます。
この質問にも意味があるはずです。
「癖?私の頭をすぐ撫でるとか?」
「……まあ腹立たしい事にそれも癖になりつつありますが、もうひとつあるのです」
「どんなの?」
「本意ではありませんが、今回の件については私も同意見なのでお教えします。彼の方の瞳をよくご覧になって下さい」
「……瞳」
「ええ、本当に微かですが目が泳ぐのです。そして、それは彼の方が悲しいや苦しいという感情を隠す時の癖です」
「…………」
「きっと今も目が泳いでいるはずです」
そんな事をアリアから聞いた後、恐る恐る神様に近付きました。
私の気配に此方を見た神様の目は……ほんの僅かに泳いでいて、それを見た私は
「神様、ごめんなさい!」
と、素直に謝る事が出来たのです。
それから神様を観察すると私を注意した後などは必ず目が泳いでいるのに気付きます。
きっと注意する神様も悲しいんだ、出来るだけ神様が注意しなくていいように頑張ろうと決意したのでした。




