さておきたくはないんですが……
今回キリが良かったので短めです。
羊の皮を被った狼さんの独壇場の巻……
「殿下!先程騎士に先導されて、避難されたのでは?」
私が口を開くより先に、お兄様が若干の苛立ちをのせ問い掛けました。
うん、わかるよお兄様。
王族の責任まで持てないよね?
「そう怒らないで。君達に責任を負わせたりしないから」
いやいや、王子様がそう言っても何かあったら周りは納得してくれませんから。
「それより、王宮詰めの魔導師達は直にここに来るだろうけど、この魔は彼等では手に負えない。多分対処出来るのは叔父上、魔導師長くらいだと思う」
……責任問題をさておきたくないんですが、やむを得ません。
後さらりと仰いましたが、魔導師長が王子様の叔父って……えっ、国王陛下の弟!?
「……魔導師長はどの位で此処に?」
あ、お兄様、魔導師長=叔父のところ気付いたのに無視しましたね。
「早くても2、30分はかかる。ここには転移の魔方陣がないから」
転移魔法は刻まれた魔方陣と魔方陣を行き来するものなので、魔方陣がないと出来ません。
私の魔力ギリギリの時間、この魔に対して賭けのような方法は危険です。
……仕方ありません。
「クロード殿下、先程闇の結界は引き受けると仰いましたが、お兄様と同調は出来ると考えてもよろしいのですか?」
複数の人間が同じ対象に魔法をかけるはとても難しいのです。お兄様とシリスのように魔力の質の近い者同士や、何度も練習を重ねた魔導師同士でないと出来ません。各々の魔法を反発しない様に調整しないといけないからです。その調整は高い魔力・制御・熟練度を必要とするので、魔導師の中でも一握りの人にしか出来ないと聞いています。
お兄様と殿下が魔法訓練を共にしたなど聞いた事もなく、魔力の質も近いとは思えません。
それでも出来ると言うのでしょうか?
「うん、大丈夫。調整も僕がする」
この切迫した雰囲気の中、あくまで優雅に鷹揚に微笑みながら答えた殿下。
信じましょう。
策としては一番確率が高いです。
ちらりとお兄様に視線を送ると、小さく頷きが返ってきます。
とにかく今は、時間がありません。
シリスの汗が顎から床へと落ちていきます。
顔色もかなり悪くなってきました。
「殿下、手順は?」
「ユリウス殿は暫くそのまま結界を維持、僕がその上から闇の結界を張る。シリス君は出来るだけゆっくり小さな穴を少しずつ広げる感じで結界を解いて。シリス君の結界が解けてユリウス殿の結界いっぱいに魔が広がったら氷が徐々に溶ける感じで結界を解除、解除したら僕の結界の上に同じように結界を展開して」
……イメージを言語化する事でお兄様とシリスの魔法展開・解除を簡単にしました。
やはりこの王子様は、見た目通りではないようです。
「リフレシア嬢、君はそのまま現状維持ね」
ほぇ?何で?魔力まだ残ってますよ?
ほら、アクシデントに備えて他の結界を準備するとか。
色々ありますよね?
疑問符がいっぱいな私を余所に、お兄様とシリスはうんうんと頷いています。
「じゃあ始めよう」
不満でいっぱいな私を無視して、美少年な王子様の開始宣言がなされたのでした。
Q:(あの)ロザリア様が一言も会話がありませんが?
A:ロザリア様はリフレシアが水と光の結界を張った時点で睡眠状態になっています。起きていると何かと(主に声)不都合な為と思われます。
Q:王子様(狼さん)が避難したのをユリウス君が見たのに何故ここにいるのでしょう?
A:王子様(狼さん)は一旦避難して部屋に籠った後で王宮あるあるの隠し通路を使ってやって来ました。どうやらかなりの隠し通路を把握しているみたいです。
……らしいです。




