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……どうして狼さんはここにいるのでしょう



読んで下さりありがとうございます。

気がつけばブックマークが二桁に!

ありがとうございます!

皆様の暇潰しにでもなれば幸いです。



今日も今日とてリフレシアは残念美形とともにゆく。



私の結界が解けた途端、黒い膜が魔だけを包みます。

魔の黒とは違い光沢のある美しく深い黒です。

これはシリスの闇魔法?

更にその膜が凍っていきました。

お兄様お得意の氷の結界です。

聖水の結界を張っている間に他の人達は避難したのでしょう。

ホールには私達以外誰もいません。

こんな状況にも関わらず、お兄様達の結界がキラキラと光輝くのに目を奪われてしまいます。


……盲点でした。魔だけに結界を張れば魔力は少なくてすみます。ただかなり繊細な制御が必要なので自信がないと出来ません。


氷の結界はお兄様の十八番ですが、黒い膜は一体……


「シリス、上手く出来てる。現状を維持する事だけに集中するんだ」

「はい」

「……お兄様、黒い膜は何なのですか?」

「うん?黒いのはシリスの闇の結界だよ」


闇の結界?

えっ、闇の結界って魔に効くの?

黒と黒だけど……


「どちらも黒いから効かないと思った?」

ふぉ、声に出してないよね、何で?


「……リフレシア、全部顔に出てる……」

……さようですか。


「魔導師様の討伐に同行した時に、何度か試したから大丈夫。拘束するには有効なんです」


ちょっとドヤ顔のシリスが可愛いい。

討伐に同行した?

「なんて危険な事してるんですか!」


「「……あっ」」

2人して『しまった!』みたいな顔してもダメです!


お兄様は12歳、シリスは8歳。どう考えても魔物討伐に同行出来る年齢ではありません。2人に何かあったらと想像するだけで、胸がきゅうっと痛くなります。きっちり釘をささねばと口を開く前にお兄様が話しだしました。


「リ、リフレシア。今近衛騎士が王宮の魔導師と、魔導庁に応援を呼びに行ってる。彼女はこのままでもつ?」


……誤魔化しましたね?

今は緊急事態なので後にしますが、この件は有耶無耶にはしませんからね?と半眼になりながらも答えます。


「何事もなければ大丈夫です、お兄様達は?」

「そう。僕はまだ余裕がある……だがシリスは魔力がどこまでもつかどうか」

「っ、ごめんなさい。兄上の言う通り、もう暫くしかもちません」


すまなそう謝るシリスの額には、うっすらと汗が浮かんでいます。結界系の魔法は魔力の消費が多いのです。むしろ8歳のシリスの魔力量で展開出来ている事が凄いのです。


「となると僕の結界だけになる。それは流石に危うい」

「先程の水と光の結界をもう一度張ります」

「リフレシアの魔力もそう残ってないだろう?」

「大丈夫です、2人が代わってくれたので、まだいけます」

「…………」


一番良いのは私がシリスと代わり闇の結界を張る事なのですが、私は水・風・光の3属性持ちに見せています。最悪家族にばれても問題はないのですが、実は闇と時空の魔法が苦手なのです。熟練度自体はアリアが限界まで上げてくれていたので、本来なら他の属性と同じように扱えるはずなのですが、何度やっても上手くいかないのです。繊細な制御が必要な結界など、この状況では怖くて出来ません。

だとすれば先程の水と光の結界しかありませんが、2属性を同時に使うという事は倍の魔力を消費します。2属性の結界なんて、魔力を垂れ流しているようなものなのです。


だけど……

「光のみの結界だと、未熟な僕達では彼女を壊しかねない」


……そうなのです。

光だけの結界を使えなかったのは、魔と繋がったロザリア様にどこまで影響するのかわからなかったからなのです。

光魔法は魔にとても有効です。消滅させるなら最強の魔法です。

ですがこの魔は聖水では消滅しなかった。

そうなると、後は全力の浄化くらいしか思い付きません。

でもそんな事をしたら、ロザリア様は……


魔とは人の負の心の成れの果てです。

多少の差はあっても、人は心に負の感情を抱えています。

それは当たり前の事で、負の感情を全く持たない人などいません。


でも光魔法は魔を滅します。

加減を間違えば人の内にある負の感情を全て滅してしまうのです。


負の感情を全く持たないという事は、人という形から外れてしまうことです。感情はもとより個性や人格、自我など、その人を形どる全てを失い、ただ生きるだけの人形になってしまうのです。


光魔法とはある意味、人に対しても最強の攻撃魔法と言えるのです。


実際のところ、お兄様の言う通り2属性の結界を長く保てる程の魔力は残っていません。

ロザリア様にかけている浄化魔法をお兄様に代わってもらってたとしても、2、30分が限界でしょう。

……最悪の時は今まで練習してきた、あの魔法を使うまで、と私が静かに覚悟をしていた時、この場にあってはいけない声が聞こえてました。


「闇の結界は、僕が引き受けるよ」


誰もいないガランとしたホールに響く柔らかなボーイソプラノの持ち主は、真っ先ににここから遠ざけられなけばならないクロード殿下でした。


……どうして狼さんはここにいるのでしょう。


私は心の中で大きな溜息をついたのでした。













「リフレシアそのまま範囲を拡大して」

「……っ、う、あ〜!」


手のひらの上に浮かんでいた黒い球体はさらさらと形を崩し消えてしまいました。


「う〜ん、水・火・風・土・光だと完璧なのに、どうして闇と時空はこうなるのかな?」

「〜面目ないです……」


(残念イケメン)神様との魔法特訓でぶつかった壁。

どうやら私は闇と時空の魔法が苦手みたいです。


「他の属性と基本は同じだから後はリフレシアの想像力の問題だと思うよ」

「……はい」


本当は何となく苦手な理由はわかっています。

闇と時空の魔法はどちらも黒っぽくて……怖いと思ってしまうのです。

魔法は想像力、怖いと思ったら制御出来ません。

何度も失敗しているし……きっと神様にもばれています。


「リフレシア、心配しないで。きっといつか出来るようになる。誰だって苦手な事はあるよ」

「……はい、絶対諦めません!」

「そうそう、その意気だよ〜」



ちょっぴり残念なところはあるけれどいつだって優しい神様です。

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