(美少年な)王子様はキレ者でした!
安定(?)のロザリア様。
……何故か嫌いになれません。
「リフレシア嬢、大丈夫かい?」
お兄様から離れ、私の横まで来られた殿下はにこりと微笑みます。
っ、眩しいです!
超絶美少年の笑顔が輝いてます!
「「「ほぅ〜〜」」」
?
場違いな桃色の吐息が聞こえたような?
「わたくしボードフォール公爵家のロザリアと言いますの。貴方お名前はなんと?」
「………………」
「公爵令嬢のわたしくが聞いていますのよ!早く名乗りなさい!!」
ひぃぃ〜、やらかしてくれました!
ええ、とんでもない事をやらかしてくれました!!
……我が家が動く前に、ボードフォール公爵家潰れる。
「………………」
にこりとした笑顔で、無言の殿下。
当然ですよね。
先程と同じく許可のない直答、さらに王族に対する高圧的な物言い。
不敬以外の何ものでもありません。
超絶美少年の笑顔が怖い……
殿下と全く気付かないロザリア様は、答えのない事が我慢ならなかったのか、私達に近寄り持っていた扇を振り上げました。
!!!
そこまでしますかっ!?
予想外の出来事に、魔法を発動出来ず私は殿下の前に出ました。
さすがに王族に怪我をさせるなど、幾ら子供といえどただでは済みません。
殿下さえ無傷なら、首の皮は繋がるはず……と衝撃に備えました。
?
あれ?
ロザリア様が腕を上げたままの状態で止まっています。
「そこまでですよ、ボードフォール公爵令嬢」
後ろから聞こえるお兄様の声で、ロザリア様の腕が凍っているのに気が付きました。
ガラスが細かく砕け散る様にロザリア様の腕から氷が剥がれます。
流石お兄様です!
動きを封じ且つ腕を傷付けない、繊細な氷魔法の発動!
「ユリウス様っ!」
お兄様に気付き、頬を染めるロザリア様。
ええ……頬を染めてる場合じゃないと思いますよ。
「ボードフォール公爵令嬢、今貴女がした行為を、正しく理解しておられないようですね?後、名前呼びは止めて下さい」
ほんのり頬を染めたまま、きょとんとするロザリア様。
「……貴女はご自分が今、誰に、何をしようとしたのかを知らねばなりません。まもなく警備の者がここに来ます」
そう言って、私にちらりと視線を寄越すお兄様。
はい、結界解除ですね?
了解しました。
……殿下がここにいるという事は、(気配は薄いですが)王家の監視下であるという事です。
私の結界で全ては見えていなくても、内容は概ね把握されているでしょう。
王族への暴行となると、厳罰は免れません。
……こんな結果を、望んだわけじゃありません。
「クロード殿下、発言をお許しいただけないでしょうか?」
「リフレシア嬢……何かな?」
私達の会話で今自分が殴ろうとした相手が、第一王子とわかったロザリア様の顔が、真っ青になりました。
……遅すぎます。
「言い訳になりますが、クロード殿下は令嬢のいる場にあまりお出でにならないので、お顔を知らない者も多いのです。ボードフォール公爵令嬢も、その一人でございます。それに彼女の暴挙の矛先は、わたくしです。決して王家に対して、二心があっての事ではございません。その事を加味したご判断を、お願い申し上げます」
初めて会った私の言葉を、殿下がどれだけ聞いてくれるかわかりませんが、何もしないよりはましなはずです。
そう思ったのですが……
「そ、そうですわ!わたくしは嫌われ者のサマーセット公爵令嬢に、罰を与えようとしていただけですわ!」
と、甲高い声で全部ぶち壊してくれました。
「って言ってるけど?リフレシア嬢」
「っっ、……」
「リフレシア嬢、心配しなくていいよ。処刑なんてしないから」
「し、処刑?!」
ロザリア様!もう黙ってて下さい!
……殿下もわざと言ってますね。
綺麗なお顔に似合わず、なかなかいい性格をお持ちのようです。
ですがこうして軽口を言うくらいなら、案外厳しい処罰にはならないかもし……
「北にある戒律の厳しい修道院。外との接触は全く取れず、院長が認めないかぎり還俗も出来ない。王家の管理下にあるから、脱走も不可能。そこで一から学んでもらうとしましょう」
と、にっこり微笑むクロード殿下。
……厳しい処罰、決定みたいです。
でも本来なら、もっと重いものだったはずです。最悪、ボードフォール公爵家が潰れていました。ロザリア様がきちんと心を入れ替え、真摯に学べば還俗も出来ます。可能性の残った処置と言えるのではないでしょうか。王家としてもある程度罰しておかないと舐められてしまうので、絶妙な加減の落としどころです。
……それにボードフォール公爵家に貸しを作れ、何かあった時の切り札に出来ます。
この王子様、かなりのキレ者です。
お話では出て来てないですが、サマーセット公爵家はリフレシア以外は3属性を持っています。
アルヴィスは火・土・闇の3属性。
レティシアは水・風・光の3属性。
ユリウスは水・土・光の3属性。
シリスは火・風・闇の3属性です。
サマーセット公爵領は、魔物の多い森と山に接しているので討伐の為、魔導師が交代で常駐しています。
代々のサマーセット公爵が育んだ領地は栄えていて、領民も穏やかです。
なのでサマーセット公爵領に赴任してきた魔導師が、居心地の良さに定住し婚姻し子孫が出来た結果、国で一番魔力持ちの多い領地になりました。
魔物討伐の出来る魔導師はエリートで複数の属性持ちも多く、その子孫もまた同じ。
なのでサマーセット公爵家の兄弟が、3属性持ちでも領内ではそう驚く事ではないのでした。




