焼き菓子が嫌い?ありえませんっ!
リフレシアは何処に向かっているのでしょうか……
……顔が緩むのを止められません!
今日の目標は全種類制覇!だったのですが、流石に全部はお腹に入りそうにありません。
予定変更です。
目標は食べられるだけ食べる!
王宮のお菓子を、人の目を気にせず食べられる機会なんて、そうそうありません。
普段なら夕食の事を考えて、控えめにするのですが今日は違います。
例え後で怒られても、限界まで食べると決めています。
いざ、ゆかん!
ですが左手に取り皿、右手にトングの状態で私は固まってしまいました。
細長いテーブルの上に鎮座するスイーツは、少なく見積もっても30種類はあったのです。
いくらお茶菓子用でプチサイズとはいえ、30個は食べられません。必ずくるであろうお腹の限界の先にあるスイーツは、味わう事が出来ないのです。
余りの悲しみに、項垂れてしまいました。
「くくっっ、この世の終わりみたいな顔しないでよ」
お兄様が、小さく笑いながら言います。
「種類が多すぎて、全部味わえません……っっ」
「あー!わかった、わかった手伝うから!こんな所で泣いちゃダメだ、リフレシア」
「ほ、本当ですか?」
「僕がリフレシアに嘘言った事ある?」
「無い、無いです!お兄様、愛してますっ!」
「うっ、リフレシアは一口ずつ食べたらいいよ、残りは引き受けてあげる」
「約束ですよ?男に二言はないですね?」
「りょ〜かい。でもリフレシア、無理はだめだよ?それはわかっているよね?」
「……悔しいですが、お兄様に手伝ってもらっても、全部は無理だとわかっています。……悔しいですがっ」
「悔しいって2回言うほどなのか……まあ、わかってるならいいよ。リフレシアの限界まで、お付き合いしますよ?」
少しおどけた様に言うのは、お兄様の癖です。
誰かを助ける時、相手の負担にならないように。
「僕も手伝います!……兄上と同じ、というわけにはいきませんが」
「シリス!ありがとう!」
健気な事を言う可愛すぎるシリスに、ぎゅっと抱きつきます。
シリスは8歳ですが私より少し背が高いので抱きつく形になってしまうのです。シリスもきゅっと抱きしめ返してくれました。
「………………シリス」
「どうかしましたか?兄上?」
うん?
お兄様とシリスの目から火花が散っています。
二人とも笑顔なのに、ひんやりします。
二人にはよくある事なので、放っておいても大丈夫でしょう。
何はともあれスイーツです!
端から順に食べようと思っていましたが、焼き菓子は後にします。本当は食べたいけれど、お腹がふくれやすいので苦渋の選択です。
表面はカリッ、中はしっとり。底に隠されたカスタードと、焼かれて甘さの増した林檎が絶妙なアップルパイ。
一般には出回らない、希少な南の国の果物がゴロゴロ入ったシャーベット。
苺・ブルーベリー・ラズベリーが可愛らしくのったベリータルトなど。
素晴らしく綺麗で、美味しいスイーツをぱくりぱくりと食べていきます。
私は一口ずつなので、思ったよりも種類を食べていたみたいです。
うきうきとおかわりを取りにいった時には、焼き菓子以外は残りわずかとなっていました。
これなら焼き菓子も少しは食べれるかも?
と、最後のケーキを皿にのせた時後ろから声がしました。
「焼き菓子は嫌いなの?」
!
なんですって?
焼き菓子が嫌い?
ありえませんっ!
何て事を言うのかと憤慨しながら振り返ると、そこには超絶美少年がいました。
そう、神様に並ぶとも劣らない美形だったのです。
さらさらの濡羽色の髪に、黒曜石のような瞳。
歳は私と同じくらいでしょうか。
ただそこに立っているだけなのに、そこはかとなく漂う気品。
ですが、今まで会った事のない少年です。
……会った事がない。
!!!
私は慌ててワンピースの裾をつまみ、カーテシーをします。
「大変失礼を致しました。お初にお目にかかります。サマーセット公爵家が長女、リフレシアと申します」
「ふっ、そんなにあらたまらなくて、大丈夫だよ。僕はクロード、よろしくね」
濡羽色を纏う美少年は。
第一王子、クロード殿下でした……
サマーセット公爵家の居間にて
「兄上!抜け駆けしましたねっ!」
「おや、何のことかな?」
「知らばっくれるつもりですか?証拠は掴んでいます!」
「……アリアか?」
「ええ。アリアは姉様以外に興味がないですから、すぐ教えてくれました」
「………………」
「今回抜け駆けしたからには次は僕だけですからね!」
「チッ」
シリスに内緒で人気のスイーツ店にリフレシアと出掛けたユリウス。
ユリウスとシリスはリフレシアに関して協定(?)を結んでいるので抜け駆けするとペナルティとして次回のお出掛けには行けなくなるのです。
バレるのは想定内だったのですが、わかっていてもリフレシアとのお出掛けが減るのは悔しいユリウスでした。
「あ〜美味しかった!シリスも来れば良かったのに。ね、アリア?」
「リフレシアお嬢様が満足されたのでしたらそれで良いのではないでしょうか。きっと次はシリス様が新たな美味しいお店に連れて行ってくれますよ」
「そうね!次は3人で行けば良いのよね!」
「……多分シリス様と2人だと思いますよ」
最後のアリアの言葉はリフレシアには聞こえていません。
今日も今日とてマイペース(やや鈍感)なリフレシアなのでした。




