美味しいは正義です!
リフレシア撃沈→復活の巻?
馬車が緩やかに停車しました。
どうやら王宮に着いたようです。
開かれたドアからお兄様が先に降り、私に手を差し出します。その手にエスコートされ馬車から降りた私の視界に、夜会並に着飾った紳士淑女とその子供達が映りました。
お日様が高く明るいこの時間には少し(かなり?)不釣り合いな色とりどりの装いは、皆様の意気込みの現れなのでしょうが、お茶会とは思えない様相です。私達の後ろの馬車から降りて来たお父様とお母様も、呆れた顔をしています。
その時、馬車についている公爵家の家紋を見た従僕の方が、人々の間をすり抜けてこちらへやって来ました。
「サマーセット公爵家の皆様ようこそお越し下さいました。このまま会場へご案内致しましょうか?それとも別室にて一旦休まれますか?」
お父様は私達を見渡し大丈夫そうだと確認して告げる。
「このまま案内を頼む」
宰相を勤めるお父様には王宮の案内など必要ないかもしれないけれど、形式上要らないとも言えないのでしょう、小さく溜息を溢しました。
それを見た従僕の方は、苦笑しながら会場へと案内してくれます。
「アルヴィス様、宰相の仮面が剥がれていますよ?」
「剥がれもするさ。休みの日に魑魅魍魎が闊歩する王宮に、愛する家族を同伴させられ、挙げ句のはては勝手知ったる場所を案内などされればな」
「そう仰らないで下さいませ。私共もこれが仕事ですので」
「わかっているさ。だからこうやってお前の後ろを大人しく歩いているんだ」
「フッ、確かに。常日頃の貴方さまなら誰かの後ろを歩くなどあり得ませんね」
「だろう?」
人気の無い廊下で交わされる会話は、とてもくだけていました。実はかなり親しい人かしら、などと2人の話に耳を傾けるうちに、大きな扉の前にたどり着きます。
重厚そうな扉の前には、騎士様がいました。
「ではごゆっくりとお過ごし下さいませ」
一瞬で雰囲気の変わった従僕の方は、綺麗な礼をして戻っていきました。
騎士様が2人がかりで扉を開くと同時に、私達の来場が告げられます。
「サマーセット公爵アルヴィス様、サマーセット公爵夫人レティシア様、サマーセット公爵子息ユリウス様ならびにシリス様、サマーセット公爵令嬢リフレシア様のお越しにございます」
既に会場入りしていた人達の視線が、此方に集中します。様々な思惑を孕んだ視線に、私はいつまで経っても慣れません。
居心地が悪くなり、少し伏し目がちになってしまったのを見つけたお兄様が、さりげなく視線を遮ってくれます。シリスもそっと手を繋いできました。
そのおかげで少しましになりましたが、早くこの視線から逃げたい私は、お父様をちらりと見上げます。今日は人数の関係上、王家への挨拶は成人(ここでは16歳)以上なので、退散しても問題ないはずです。
お父様が小さく頷いたのを確認し、お兄様のジャケットの背中を少し引きます。お兄様はちらりと顔だけ振り返った後、私の手をとり人混みの中をするすると移動します。もちろん私と手を繋いでいたシリスも一緒です。こうして広間の隅にある、閑散としたテーブルに辿り着いた私は椅子に倒れ込みました。
ふぅ、やっとちゃんと息が出来ます。
……仲良くしている方達なら大丈夫なのですが、多くの貴族がひしめきあう場は苦手です。
何故か気分が悪くなるのです。
子供だけならまだ我慢出来るのですが、大人はほぼ無理です。
最悪な時は立ち上がる事も出来ない位に。
それを知っている家族は、周りに気付かせる事なく、その場から連れ出してくれます。
その技はもはや匠の域、ありがとう!
私自身に認識阻害の魔法をかければましになるのでしょうが、私は自分の魔法の量や質をごまかしている(神様曰く、そのままだとかなりの数の面倒事が起きるらしい)ので使えません。人が多ければ多い程見破られる可能性が高いですし。
……でも、使えるし、使ったら楽になるのがわかっているのに使えないのって、ちょっとイラッとしちゃうんです。
うん、このイライラはケーキを食べて発散しましょう。
そうです、今日は食べ放題なのです!
一気にテンションが上がってきました。
リフレシア復活です!
握りこぶしを胸にすっくと立ち上がり、お目当てのものを探します。
!!!
私達がいるテーブルは会場の隅っこです。庭園がよく見える、全面ガラスと壁に囲まれています。
その壁際にずらりと並んだお菓子たち!
くるりと振り返りお兄様を見つめます。
するとお兄様は、少し照れくさそうに目を逸らして言いました。
「あ〜リフレシアのことだからお菓子の近くが良いと思ってね?」
「お兄様!大好きっ!」
「飲み物の場所もわかってるからね、姉様」
「シリスも大好きっ!」
お日様の光を浴びて、キラキラと光るスイーツを見て、先程感じた不快感もすっかり忘れてしまった私。
うん、美味しいは正義!
今回のお茶会でリフレシアは胸の下に切り返しのあるライトグリーンのパブスリーブワンピースを着ています。
スクエアカットの襟ぐりと裾に銀糸で小さな花が沢山刺繍された可憐なものです。
髪はハーフアップにしてあり所々に金細工の小さな蝶のピンが差してあります。
ワンピースはお母様とアリア監修の元作られました。
ドレスのデザイン画を見たお父様、お兄様、シリスによって蝶のピンも作られました。
今回のお茶会の為に作られた皆の愛が詰まった服と装飾品ですがリフレシアは知りません。
リフレシアは自分を飾る事にあまり興味がなく放っておくとクローゼットの端から着かねないので家族やアリアが本人には内緒で作り、こっそりと入れ換えています。




