最後の一時
後少し……お付き合い頂ければ嬉しいです。
もうひびが無いところ探す方が難しい位の珠は、最初の頃とは違い銀色に光っています。
きっと日付が変わる時には、砕けてしまう。
全ての始まりと出逢う。
その時訪れるのは……。
『お前が私に望むことはないのか?』
あります。
『くっ、即答だな。ほとんどの力が失われた私に出来ることであれば良いが』
多分リーベルタースにしか出来ないことです。
『なら言ってみろ』
貴方が取り込んだ神様を解放してあげて下さい。
『いいだろう。確かにそれは私にしか出来ないことだ。信じられんだろうが、約束する』
くすっ、信じますよ。
短い時間でしたが、ずっと一緒にいましたからね。
『あまいな。お前よく今まで無事に生きてこれたな。まあ、その分周りがしっかりしてるが』
そうですね。
私が私でいられるのは、皆がいてくれるからです。
この世界でも何度か消滅しそうになりましたからね。
『は?私が仕掛けたことは全て潰されただろう?いつ、そんな事態になった?』
まあ、良いではないですか。
もう過ぎたことです。
それより神様のこと、解放してリーベルタースは大丈夫なんですか?
『力は削がれるだろうが、大丈夫だろう。だが、それだけか?』
ええ、私はそれで十分です。
ですが……。
『わかっているさ。己のしてきた事への報いは覚悟している。……神から何らかの罰を与えられるだろうこともな』
そう、ですか。
ねえ、リーベルタース。
『なんだ?』
私は今も、貴方がしたことを全て許すとは言えません。
『……当たり前だ』
でもね……私は貴方がリーベルタースが好きですよ。
『っ、馬鹿なことを。お前は私の一番の被害者だ。憎め、愚かな私を。何度もお前の未来を、大切な人との絆も記憶も奪った私を』
馬鹿なのはリーベルタースです。
……全て終わったことです。
もう戻らないものです。
貴方を憎んでも戻らない。
それに。
私が直接生んだものではなくても、人間が生んだ負の感情が貴方を歪ませました。
負の感情から生まれても、本来の貴方の役目は人間を害することではなかったはずです。
ですが人の欲望は際限なく、神々の予想を超えてしまった。
それが貴方に振りかかって……一番の被害者はリーベルタース、貴方です。
『私は仮定で話をするのは嫌いだ。だが、リフレシアの側にいて何度か思わずにいられなかったことがある』
珍しいですね。
『そうだな。私も自分で驚いたさ。だが……。もっと早くにお前と出逢い、お前を知ることができていたなら、私は違っていただろうと思わずにはいられなかった』
リーベルタース……。
『日付が変わる時、封印は解かれる。そしてその時、神の審判は下されるだろう。だが、私の心は永く生きてきて今一番凪いでいる。リフレシア、お前のおかげだ。感謝する』
私はただ貴方を知りたかった。
ルチアと同じ貴方が、何を感じ、思うのかを。
負の感情以外の人の気持ちを知った貴方が、どう変わるのかを。
それを知るために過ごした時間が、私も変えたのです。
リーベルタース、もう一度、いえ何度でも言います。
貴方が好きですよ。
『……本当に馬鹿な娘だ。だが、まるで愛の告白のようだな?こんな会話、あの金や黒に聞かれたら即刻踏み潰されそうだ』
金はポアロ先生、黒はクロード殿下です。
リーベルタースは二人を名で呼ぶのが嫌なようで、そう呼ぶのです。
まあ、お二人は私の庇護者で守護者ですから。
『お前も大概だな。もう、成人なんだ。鈍いのもいい加減にしとけ』
……だって相手は神様ですよ。
リーベルタースは何でも恋愛方面に考え過ぎです。
サマーセット家の皆と一緒です。
『大丈夫なのか、これ。いや、わざとか?これも手管なのか?』
相変わらず失礼極まりないですね。
何の手管ですか。
そんな高等テクニック、私が使えるわけないでしょう!
『それも、そうか。リフレシアだしな』
いや、それも何か嫌です!
『くくくっ、さて。リフレシア、そろそろ時間だ』
ええ、リーベルタース。
忘れないで下さいね。
例え二度と会うことがなかったとしても、貴方を好きだと言った人間がいたのを。
それが少しでも貴方の心を癒してくれますように……。
『忘れたくても忘れられないさ。お前は人も神も闇さえ魅了する女なのだから』
次回の投稿は9/24(木)です。




