第二話 村一番のガキ大将
桃から生まれた桃太郎は、おじいさんとおばあさんに大切に育てられました。
よく食べ、よく眠り、すくすくと大きくなりました。
桃太郎は身体が大きくなるのも早ければ、物覚えも早い子どもでした。
村の子どもたちと遊ぶようになると、桃太郎のまわりには自然と子どもたちが集まるようになりました。
ある日のことです。
「桃太郎くん。なんで川の水ってなくならないの?」
一人の子どもが聞きました。
桃太郎は川の上流を指さしました。
「上からずっと流れてくるからだ」
「じゃあ、その上は?」
「山だ」
「山の水は?」
「雨が降るだろ」
「あっ、そっか!」
また別の日のことです。
一人の子どもが木の下で聞きました。
「桃太郎くん。この木、登れるかな?」
「登れる。でも、その枝はやめとけ」
「なんで?」
「細い。お前が乗ったら折れる。こっちから登れ」
桃太郎が別の枝を指さします。
子どもは言われた通りに木へ登りました。
「登れた!」
「桃太郎くん、すごい!」
いつしか桃太郎は、村の子どもたちの中心になっていました。
そんなある日のことです。
「桃太郎くん、遊ぼう!」
「いいぞ」
「今日はなにする?」
「かくれんぼをするぞ」
「わーい!」
「桃太郎くんが鬼?」
「ああ。俺が鬼だ」
子どもたちは隠れる場所を探しました。
桃太郎が言いました。
「ただし、俺の視界から出たらアウトだ」
子どもたちは止まりました。
「えっ?」
「見えないところに隠れちゃダメなの?」
「そうだ」
「でも、桃太郎くんから見えてたら、見つかっちゃうよ?」
「そうだな」
「見つかったら?」
「アウトだ」
「じゃあ……どうやって隠れるの?」
「考えろ」
子どもたちは必死に考え始めました。
木の陰から半分だけ身体を出す子。
草むらにしゃがみながら顔だけ出す子。
とうとう一人の子どもが聞きました。
「桃太郎くん、これでいい?」
桃太郎はその子を見ました。
「今、俺と目が合ったな」
「うん」
「見つけた」
「ええっ!」
困り果てる子どもたちに、桃太郎は楽しそうに口角を上げました。
「いいぞ。その顔だ」
しかし、子どもたちは桃太郎を嫌いにはなりませんでした。
むしろ次の日も、その次の日も桃太郎のところへやってきました。
「桃太郎くん、今日はなにして遊ぶの?」
「お前ら、俺が満足するまでそこに石を積め」
「わかった!」
子どもたちはせっせと石を運び始めました。
大きな石。
小さな石。
平たい石。
崩れては積み、崩れてはまた積みます。
「桃太郎くん! これくらい?」
桃太郎は積まれた石を確かめました。
「まだだ」
「わかった!」
子どもたちはまた石を積み始めます。
少し離れたところでは、おじいさんとおばあさんがその様子を眺めていました。
おじいさんは首をかしげました。
「あれのどこが遊びなのかのう」
おばあさんは両手を頬に当てました。
「あらやだ♡ 桃太郎ったら、あんな小さな子たちに激しいことを要求して♡」
「ただ石を積ませておるだけじゃぞ」
「でも、みんな顔を真っ赤にして……限界まで追い詰められてますわ♡」
「日なたにおるからじゃろう」
おばあさんはくすくすと笑いました。
「私も若い頃は、あんな風におじいさんに追い詰められましたわね♡」
「何を言っておるのかのう」
「嫌だわ、おじいさんったら♡」
そんな桃太郎でしたが、村の子どもたちからはとても慕われていました。
夕方になり、子どもたちは家へ帰っていきました。
「桃太郎くん、また明日ね!」
「ああ」
「明日も遊ぼうね!」
「ああ。またな」
桃太郎は笑顔で手を振りました。
子どもたちの姿が見えなくなりました。
「ふぅ……」
桃太郎は肩を回しました。
「バカどもの相手は疲れるな」
こうして桃太郎は、すくすくと育ちました。
おばあさん「おじいさんの若い頃はもっと……」
おじいさん「もっと、なんなんじゃ」




