第一話 桃から生まれた桃太郎
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、上流から大きな桃が流れてきました。
ドンブラコ。
ドンブラコ。
「おや、大きな桃。おじいさんのおみやげに持ち帰りましょう」
おばあさんは大きな桃を拾い、家へ持ち帰りました。
居間には、おばあさんが拾ってきた大きな桃が置かれています。
「おじいさん……私の桃、夜に割ってください♡」
「なんで今すぐ割らんのじゃ。夜にする意味などなかろう」
おじいさんは台所から包丁を持ってきました。
「さて、それじゃあ割るかのう」
「優しくしてくださいね♡」
「桃をか?」
「嫌だわ、おじいさんったら♡」
「何も嫌なことは言っておらん」
おじいさんが包丁を構えた、まさにその時です。
パッカーン。
「おおっ!」
おじいさんが包丁を当てる前に、桃が勝手に真っ二つに割れました。
そして、中から元気な赤ん坊が飛び出してきました。
おじいさんは赤ん坊を見ました。
手に持った包丁を見ました。
もう一度、赤ん坊を見ました。
「なぜまだしておらぬのに生まれておるのじゃ?」
おばあさんは両手を頬に当てました。
「おじいさんったら……気が早いですよ♡」
おじいさんは首をかしげました。
「いや、これはわしの気が早かったからなのかのう?」
赤ん坊は畳の上にちょこんと座っています。
子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、それはそれは喜びました。
おばあさんは赤ん坊を抱き上げます。
「あらやだ♡ もうご立派でした♡」
おじいさんは真顔で聞きました。
「どこを見て言っておるのかのう」
「嫌だわ、おじいさんったら♡」
「だから、どこを見たのか聞いておるだけじゃ」
桃から生まれた男の子なので、二人は桃太郎と名付けました。
こうして桃太郎は、おじいさんとおばあさんのもとで育てられることになりました。
この時、おじいさんはまだ知りませんでした。
末永く幸せに暮らすとは、どういうことなのかを。
「おじいさん、まだ割りますか?♡」
「ばあさんは何を言うておるのかのう」
おばあさん「パッカーン♡♡」
おじいさん「何をしておるのかのう」




