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浮世離れの魔女様は主を一途に愛します  作者: かめ


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2/6

魔女の呪い


「………!」

タケルは討伐隊の仲間と共に隊列を組んで歩いていた。

「え…?」

「どうした?」

タケルの隣を歩いていた同僚が不思議そうに声をかけてきた。

「いや…ここはどこだ?」

「あー、もう魔女の森は抜けてるだろ。あと1時間程で帰れるんじゃないか?」

「抜けた?」

「はあぁ、全員無事で帰れるのは喜ばしいけれど、帰ったら説教かと思うと気が重いな。今回も魔女を見つける事すら出来なかったなんて」

「え……?」

タケルはそれ以降口を閉ざして王都に向かって歩き続けた。




「おかえり〜兄ちゃん!」

アオイとベニコが無邪気に競うように2人でタケルに駆け寄って来る。

「いい子にしてたか?」

タケルは膝をついて2人まとめてハグで迎え入れた。

「オレは父ちゃんがお薬飲むの手伝った」

アオイが報告すると負けじとベニコも割り込んでくる。

「私をはみんなのご飯作るお手伝いしたよ!アトはねー…」

幼い2人の話を笑顔で聞きながらタケルは両親の待つ家の扉を開いた。



「おかえり、無事で良かった」

炊事場に立っていた母がタケルを出迎えた。

「ただいま。ちょっと顔色が悪いよ。横になろう」

「そう?討伐隊が帰ってきたと聞いたからアンタの好きな物を作ったんだよ」

「ありがとう。いい匂いだ。着替えたら頂くよ」

横になる気配のない母の細い肩をタケルは優しく押しながら彼女を寝室へと誘導する。

「おお、タケル。おかえり」

「ただいま。父さんも立たなくて良いよ。さ、母さんは横になって」

タケルの父は自分の膝をパンパンと叩いてため息をついた。

「本当にすまない。町まで迎えに行きたかったが、このポンコツが今日はいつもに増して痛むもんで」

タケルは気にするなと言うように父の肩をポンと叩いてアグラをかいて座った。

「今回も魔女には会えなかったのでしょう?」

「そもそも魔女なんて住んでいないんじゃないか?あの森に」

「あ、あぁ…」

タケルは平静を装いつつ頭の中は混乱の嵐だった。


(あの魔女は幻だったのか?夢?ボクの頭はどうなってるんだ?!)



「兄ちゃーん!マシロちゃんが来たよー!」

アオイが弾んだ声で玄関から叫んでいる。

「マシロ?」

(誰だ?)

聞き覚えのない名前だがアオイが呼んでいるので取りあえず立ち上がって玄関にむかった。


「やっほー」



「えええええええ?!?!」



マシロと呼ばれる客人を目の前にしてタケルは自然と大声を出して驚いてしまった。



腰まで届く艶やかな黒髪と黄金の瞳、少し陽に焼けた健康的な美しい肌にぽってりと潤った唇。

以前と違って、メガネをかけ、肌の露出のない清楚な服に身を包んではいるがメリハリのある体つき。


森で会った魔女だった。



「おかえりなさい!あ・る・じ!」


魔女…マシロはサイドで1つに束ねた三つ編みを指先で弄びながらニッコリ微笑んでいる。

「あ、あなた…まじょ」

「疲れたでしょう!疲れに効く薬草を煎じて持ってきたのよ!」

マシロは大声でタケルの声をかき消してズイっと家の中に入ってきた。

「ちょっと!」

「コップはどこかしら?アオイ」

「はい、どうぞー」

慌てふためくタケルをよそにマシロとアオイは普通に会話をしている。

「ア、アオイ!この人と知り合いなのか?!」

訳がわからず弟に質問を投げかけるとアオイは目を見開いて驚いた。

「マシロちゃんのこと忘れちゃったの?兄ちゃんの恋人でしょ?」

「ええ?!」

間の抜けた声をあげてタケルはマシロを振り返ると彼女はニッコリ微笑んでいた。

「やだー、まだ怒ってるの?」

「ケンカしちゃったの?」

「ちょっとね。だから仲直りしに来たんだよ」

「兄ちゃん、絶対仲直りしてね。オレ、マシロちゃん大好きだから」

「……」

タケルが言葉に詰まっていると玄関扉が開いた。

「あ、マシロちゃん、いたー♪」

嬉しそうに入って来たベニコの姿を見てタケルはビクリと体を震わせて驚いた。

「外にクロイがいたんだ〜」

「にゃーん」

ベニコの腕のなかには魔女の魔獣クロイが抱かれていた。猫のように。



「あ、ちよっと、あのー…マシロさん?外で話したいのですが」

「そうね」



2人は外に出て向き合った。

「…あなた、孤高の魔女ですよね?」

自分の記憶がおかしくなったのか、状況が何一つ飲み込めずにタケルは聞いた。

「そうだよ」

「!あの、契約の話しは現実だった…て事で合ってます?」

「もちろん。ごめんね、混乱させてるね」

「ええ、何がどうなってるのか…」

「主が家族の元に帰りたいと言ってたから、足止めさせていた討伐隊の記憶を操作して一緒に帰ってもらったんだよ」

「そうか…じゃあ、ボクの頭がおかしくなった訳じゃあないんだ」

事実を知ってホッとしたのも束の間、次の疑問が頭をもたげる。

「アオイとベニコにも記憶の操作を?」

「ああ、幼馴染で恋人という設定だ」

「やめてください!」

ドヤ顔で話す魔女マシロの言葉にタケルは厳しい声をかけた。

「どんな仕組みか知りませんが幼い子供の記憶を操作するなんて!今すぐ元に戻して下さい」

「………」

魔女は驚いてタケルの顔を真っ直ぐ見つめて立ち尽くしている。

(しまった!キツイ口調になってしまった。魔女を怒らせたらどうなるのか…)

「あ、あの、すみません!どんな副作用があるか分からなくて、心配で」

焦るタケルの顔の前に魔女はスッと腕を伸ばして手のひらを向けて言葉を制した。

「謝らなくて良い」

「……」

「主の気持ちも考えず大事な2人の記憶を操作して心配をさせてしまった。私が悪い。安心して。私の記憶操作…催眠は有限だから。かけ続けない限り一晩眠れば元に戻る。主が嫌がるならもうしない」

「…ありがとうございます」

魔女は気に入らない事があれば怒ると勝手なイメージを持っていたタケルは、彼女があっけなく折れた事に拍子抜けしてしまった。

「私は、ずっと森で暮らしていて人との交流は皆無だった。これからも何かと至らぬ事をしてしまうだろうけれど、主が嫌がる事はしたくないから都度教えて欲しい」

美しい黄金の瞳で真っ直ぐに見つめられると、正直、胸の高まりを感じるタケルだったが、魔女が話の通じる相手だと安心した。

「では、1つお願いがあります」

タケルから話題を振ってくれた事にマシロの表情は一気に明るくなる。

「何?主の願いなら何でも聞くよ」

はしゃぐマシロを前に言いづらい言葉だが、タケルは意を決して口にだした。



「契約は出来ないので森に帰ってください」

「それだけは出来ない」


タケルが何を言おうとしていたのか予想がついていたのか、マシロはかぶせるようにキッパリと宣言してきた。



「マシロちゃ〜ん!クロイがお腹減ってるみたいで暴れまくってる!」


家の中からベニコが大声で呼んでいる。


「はいは〜い!今行く!さ、戻ろう」

マシロは満面の笑みで呆然と立ち尽くすタケルの腕に自分の腕を絡ませて引っ張った。



(……もしかして、これは、魔女の呪いなのかーーーー!!!)

ありがとうございました^ ^

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