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家系ラーメンが好きすぎて、擬人化してしまった!?  作者: 源三郎


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第5話 直系巡礼の罠

店主は言った。


「最後の一杯が、近いのかもしれねえな」と。


その言葉は、ただの脅しではなかった。


メンちゃんは一度、自分が家系ラーメンという枠を超えても、メンちゃんとして隣にいられるのだと知った。


だがそれは安心ではなく、新しい不安の始まりでもあった。


家系ラーメンの擬人化である彼女は、主人公の家系への愛から生まれた。


ならば、主人公が他の家系ラーメンを愛したとき、メンちゃんは何になるのか。


今回は、主人公がメンちゃんを救う手がかりを求めて、直系家系ラーメンの巡礼へ向かう。


しかし、愛のはじまりをたどる旅は、彼女を救うどころか、その存在をゆらがせていく。

あれから数日が経って、俺とメンちゃんの食卓は少しずつ変わっていた。


朝はうどんや焼きそばが出てくる日が増え、家系ラーメンは週に一、二度になった。


不思議と、間を空けた一杯のほうが前より美味しく感じる。


久しぶりに食べた一杯は、一口目から鶏油がいつもより甘かった。


あの甘さを感じられたことに、俺は少しだけ安心した。


それでも、メンちゃんの胸元に灯った赤い光のことを、俺はまだ忘れられずにいた。


その朝、俺はいつもより早く、目覚ましが鳴る前に目を覚ました。


窓の外はまだ薄暗く、部屋には夜の冷たさが少しだけ残っている。


布団の中で数秒、天井を見つめてから、ゆっくり起き上がった。


キッチンから、豚骨醤油の匂いはしなかった。


そのことに少しだけ安心して、少しだけ不安になる。


人間の感情は面倒だ。


朝から家系ラーメンを出されれば胃袋が絶望するくせに、出されなければ今度は心が落ち着かない。


俺は洗面所で顔を洗い、鏡を見た。


寝不足の顔、目の下の薄いくま、働く大人としてはよくある顔だ。


ただ、昨日までと違うものがひとつ、洗面台の横に置いてあった。


俺の直系巡礼ノートだ。


直系というのは、家系ラーメンの本家の流れをまっすぐ受けついだ店のこと。


家系好きにとっては、聖地みたいなものだ。


表紙は少しすれて、角は丸くなり、何度も開いたページは柔らかく波打っていた。


そこには、俺がこれまで行った家系ラーメン屋の記録が書いてある。


店名、最寄り駅、営業時間、並びの人数、券売機の位置、チャーシュー麺の値段、ライスの質、スープの濃度、鶏油の香り、麺の硬さ、海苔の耐久力。


我ながら気持ち悪い。


だが、気持ち悪いくらいでなければ、愛とは呼べない。


少なくとも俺は、そう思って生きてきた。


昨日の夜、俺はそのノートを開いて、今日回る店に印をつけた。


一軒、二軒、三軒――ペンを走らせる手が止まらなくなった。


気づけば、印は十二軒までふくらんでいた。


十二軒。


まともに考えれば、一日で回れる数ではない。


一杯に三十分、移動に三十分、それを十二回。


計算するまでもなく、日付が変わってもゴールにたどり着かない。


それでも俺は印を消せなかった。


どの店にも、消せない理由があった。


それが、家系好きというものだ。


「ご主人様?」


背後から声がして振り返ると、メンちゃんが立っていた。


寝起きなのか、金色のツインテールは少しだけ乱れ、赤いリボンも片方だけゆるんでいる。


俺の大きめの部屋着の袖から、細い指が少しだけのぞいていた。


いつもなら朝から湯気みたいな元気をまとっている彼女が、今日は静かだった。


「早いね」


「起きた」


「それは見れば分かるよ」


メンちゃんは小さく笑った。


だが、その笑顔には薄い影があった。


昨日、店の外で見えた白いフリルの少女、澄んだスープみたいな瞳、そして店主の言葉。


最後の一杯が近い。


その意味を、俺たちはまだ知らない。


知らないからこそ、怖かった。


「ご主人様、そのノート」


メンちゃんの視線が、俺の手元へ落ちる。


そして、開いたページの、十二個の印を見つけた。


「……ご主人様。この丸、いくつあるの?」


「十二だ」


「じゅうに」


メンちゃんの声が裏返った。


「一日で?」


「一日で」


「無理だよ!」


彼女はノートを両手でつかんで、俺の顔の前にぐいと突きつけた。


「見て。ここからここまで、電車で一時間だよ。で、次はバス。その次、また電車で反対方向」


「知ってる」


「知ってて、なんで丸したの!?」


「消せなかった」


「大人がそういう理由で予定を組んじゃだめ!」


まったくもって正論だった。


だが、家系巡礼に正論は効かない。


「ご主人様、本当にそういうところマメだよね」


「仕事では雑だが、家系では手を抜かない」


「そこ、胸張るところかな」


「人には守るべきものがある」


「かっこいいこと言ってるけど、ラーメンの記録だよ?」


「だからだ」


メンちゃんは苦笑して、それから少しだけ真剣な顔になった。


「今日、行くの?」


「ああ」


「どこに?」


「何軒か」


「何軒か」


声が固くなった。


メンちゃんは俺のノートを見つめたまま、袖を握る。


「ご主人様、私、ついていっていい?」


俺は少し迷った。


正直に言えば、一人で行くつもりだった。


メンちゃんを連れて行けば、他のラーメンの擬人化が現れるかもしれない。


メンちゃんがまた透けるかもしれない。


けれど、一人で行ったところで安全なわけでもない。


俺はノートを閉じた。


「来い」


メンちゃんの目が少しだけ丸くなる。


「いいの?」


「お前のことを調べに行くのに、お前を置いていくのは筋が通らない」


「ご主人様……」


「それに」俺は玄関の方へ歩きながら言った。「俺の食べ方を横で監視したいだろ」


メンちゃんは一瞬きょとんとして、それからぱあっと笑った。


「うん! 海苔を沈めすぎたら注意するね!」


「そこは少し見逃せ」


「だめ。海苔は命だから」


「重いな」


「家系だからね」


そう言ってから、メンちゃんは急に人差し指を立てた。


「あ。ご主人様、今日から家系法度に一条足すね」


「家系法度」


「私が勝手に決めてる、大事なルール」


「勝手に決めるな」


「第五条」彼女はえへんと胸を張った。「一日に回っていい家系は、三軒まで。四軒目からは浮気とみなす」


「三軒」


「四軒目からは浮気」


「十二軒だぞ」


「だから浮気九軒分だよ!」


数えるところが妙に細かかった。


俺はため息をついた。


だが、そう言って笑うメンちゃんの指先は、今日は透けていなかった。


だが、昨日より少しだけ冷たく見えた。


俺はそのことを、見なかったことにはしなかった。


見なかったことにした瞬間、たぶん何かが終わる。


そういう予感があった。


駅へ向かう道は、まだ朝の匂いがしていた。


濡れたアスファルト、コンビニの揚げ物、通勤前の人間の眠気。


その中に、メンちゃんだけがほんのり豚骨醤油の気配をまとっている。


本人は気づいていないらしいが、すれ違う人が少しだけ鼻を動かす。


俺は何も言わなかった。


ハードボイルドとは、時に黙っていることだ。


たぶん。


駅の券売機の前で、俺はノートをもう一度開いた。


十二軒を、時間の順に並べ直す。


一軒目は九時開店、二軒目は十一時、三軒目は昼を外して十四時。


紙の上ではきれいに並ぶ。


だが、現実の電車は、俺の家系愛に合わせてダイヤを組んでくれない。


「ご主人様」メンちゃんが横から時刻表をのぞいた。「これ、二軒目に着くころには、一軒目のスープがまだお腹にいるよ」


「胃袋は根性でなんとかする」


「胃袋に根性を求めないで」


「家系はいつも根性でできてる」


「できてない! 豚骨と鶏ガラでできてる!」


まったく正しい指摘だった。


俺はきっぷを買い、ホームへ降りた。


十二軒のスタンプラリー、その一個目を、まだ押してすらいない。


なのに、もう胃袋が遠くで悲鳴を上げている気がした。


電車に乗った。


休日の朝の車内は平日ほど詰まっていないが、それでも席はほとんど埋まっている。


俺とメンちゃんはドアの近くに立った。


窓の外を、ビルや踏切や古い商店街が流れていく。


一軒目のページには、前回行った時の感想が書いてある。


スープは骨の旨味が強め、醤油ダレは立つがとがってない、鶏油は控えめ、チャーシューは燻製の香りつき、ライスやや柔らかめ、海苔は強い。


メンちゃんが横からのぞき込んだ。


「海苔、強い」


「大事な情報だ」


「うん。海苔が強いお店は信用できる」


「そこは同意する」


「でも、ご主人様」メンちゃんの声が、少し低くなった。「この感想、すごく嬉しそう」


「うまかったからな」


「そっか」


彼女は笑った。


だが、その笑顔は少しだけ固かった。


俺は何か言おうとしたが、電車のアナウンスにかき消された。


次の駅名が告げられる。


目的地だった。


一軒目の店は、駅から少し歩いたところにあった。


赤い看板、少し色あせた暖簾のれん、店の外まで漂う豚骨と醤油の匂い。


行列は八人、休日の朝としては悪くない。


俺は最後尾につき、メンちゃんは俺の隣に立って、暖簾をじっと見つめている。


「緊張してるのか」


「してないよ」


「してる顔だ」


「ご主人様が他の家系を食べるの、横で見るの初めてだから。ご主人様は、いろんな家系が好きなんだよね」


「ああ」


「私は……私は、ご主人様の家系なのかな」


その問いは、行列の中でやけに重く響いた。


前に並んでいる男はスマホを見ている。


後ろの学生らしき二人は麺の好みを相談していて、店の中からは麺を上げる音が聞こえる。


世界はいつも通りだった。


だが、俺たちだけが少し違う場所に立っていた。


「分からん」


俺は正直に言った。


「分からないの?」


「ああ」


「そこは、私だけだって言ってくれてもいいんだよ?」


「嘘になる」


メンちゃんの肩が小さく揺れた。


だが、俺は続けた。


「俺は家系が好きだ。直系の空気も、店ごとの味のブレも、券売機の前で迷わない瞬間も、全部好きだ。でも、お前はそれとは別だ」


「別?」


「家系が好きだから生まれたんだろうが、今ここにいるのはお前だ」


言ってから少し恥ずかしくなって、俺は視線を暖簾へ戻した。


「それ以上の答えは、まだ持ってない」


メンちゃんは黙った。


怒ったかもしれない、泣いたかもしれない。


そう思ったが、横を見る勇気はなかった。


しばらくして、袖を引かれた。


「ご主人様、今の、ちょっと美味しかった」


「何が」


「言葉」


「言葉を食うな」


「でも、じんわり温かかった」


メンちゃんは小さく笑った。


その指先は、まだ透けていなかった。


やがて店内へ案内され、券売機の前に立つ。


チャーシュー麺、ライス。


迷わない。


指が勝手に動く。


食券が出てくる音がして、小さな紙がトレイに落ちた。


その瞬間、食券の端が、ほんの一瞬だけ赤く光った。


俺は動きを止めた。


「ご主人様?」


メンちゃんがのぞき込む。


だが、次に見たときには、食券は普通の白い紙に戻っていた。


「……何でもない」


そう言いながら、俺は心の中で舌打ちした。


何でもないわけがない。


あの赤だ。


麺ノ家で見た、あの赤いにじみ。


食券は、もう切られた。


店主の声が、頭の中でよみがえる。


俺たちはカウンターに座った。


店員が食券を受け取る。


「お好みは?」


「硬め、濃いめ、多めで」


いつもの言葉。


だが、今日は少しだけ重かった。


「ご主人様、本気だ」メンちゃんが横で、小さく息をのむ。


「いつも本気だ」


「知ってる」


店内には寸胴の音が満ちている。


寸胴というのは、スープを何時間も炊き続ける、あのばかでかい鍋のことだ。


麺をゆでる音、湯切りでお湯を振り切る音、丼にタレを入れる音、鶏油がすくわれる光。


家系ラーメン屋の音は、俺にとって音楽だった。


いや、音楽というより、お参りに近い。


大げさだと思うかもしれないが、疲れた人間にとって、救いは時に丼の中にある。


目の前に、ラーメンが置かれた。


チャーシュー麺と白飯。


表面に浮かぶ鶏油、濃い色のスープ、太麺、海苔、ほうれん草、チャーシュー。


完璧だった。


「ご主人様、まずは」メンちゃんの声が震えていた。


「分かってる」


俺はレンゲを取った。


一口目はスープ。


これは礼儀だ。


店の完成形を受け止めて、自分の味に変えるのはそのあとでいい。


スープを飲む。


濃い。


骨の旨味が舌に乗り、醤油ダレのキレが後から来る。


鶏油は厚いが、くどくはない。


朝の胃袋に重い。


だが――


「……うまい」


本心だった。


嘘でも義務でもなく、俺は本当にうまいと思った。


なら、大丈夫なはずだ。


メンちゃん自身を見ると決めたのだから、本心の「うまい」は、彼女を温める。


そう信じていた。


だが、横でメンちゃんの身体がふわりと揺れた。


「メンちゃん?」


彼女の髪の先が、湯気のように薄くなっていた。


「大丈夫」メンちゃんは笑った。「ご主人様が美味しいって思ったから、胸の奥があったかくなった」


「なら、何で」


「分かんない」彼女は自分の手を見た。指先が、ほんの少し透けている。「でも、少しだけ、私の中に別の家系が入ってきた感じがする」


背筋が冷えた。


店のスープの匂いが、急に濃くなる。


いや、匂いだけではなかった。


カウンターの向こうの寸胴から立つ湯気が、いつのまにか店じゅうに満ちていく。


天井が白くかすみ、鶏油の光が、まるで窓から差す朝日みたいに俺たちを照らした。


隣の客も、店員も、そのことに気づいていない。


まるで、この店の一角だけが、家系の海の底に沈んだみたいだった。


俺はその湯気の中で、はっきり感じた。


メンちゃんの感情が、高ぶっている。


「出るか」


「だめ」メンちゃんが即答した。「まだ食べてない」


「お前が」


「ご主人様」メンちゃんは俺の手首をつかんだ。感触は薄い。だが、確かに温かかった。「ちゃんと食べて」


「何言ってる」


「無理してじゃないよ。怖がって止めるのも、違う」彼女は苦しそうに笑った。「ご主人様が本当に美味しいと思うなら、食べて」


その言葉に、俺は黙った。


メンちゃんを守るために食べる。


メンちゃんを守るために食べない。


どちらも、たぶん違う。


俺は目の前の一杯を見た。


このラーメンに罪はない。


俺の愛が重すぎるだけだ。


麺を持ち上げる。


硬めにゆでられた太麺が、スープをまとって光る。


すすった。


うまい。


どうしようもなく、うまい。


そのたびにメンちゃんの輪郭が少し揺れたが、彼女は笑っていた。


痛いくらい、嬉しそうに。


俺は海苔を一枚取り、スープに沈めて、一秒、二秒、引き上げる。


白飯を巻き、豆板醤をほんの少し。


口へ運ぶ。


米、海苔、スープ、辛味、世界が完成する。


「……うまい」


メンちゃんが目を細めた。


「その顔、好き」


「見るな」


「見るよ。私は、その顔から生まれたんだもん」


その言葉は、以前なら照れくさいだけだった。


今は、少し怖かった。


俺が美味しいと思う顔、そこから生まれたメンちゃん。


なら、俺が別の店で同じ顔をしたら、彼女は何になる。


一杯を食べ終えた頃、湯気は少しずつ引いていった。


店は元の店に戻り、メンちゃんの輪郭も戻っていた。


少なくとも、見た目は。


だが、彼女の胸元に、小さな赤い光が浮かんでいた。


食券と同じ色だった。


「メンちゃん、胸」


彼女は自分の胸元を見る。


赤い光は、すぐに消えた。


「今の」


「……分かんない。でも、何か、増えた気がする。私の中の家系が」


その言い方は、妙に嫌だった。


俺の中の家系なら分かる。


多くの店を食べてきて、それぞれの味が記憶にある。


だが、メンちゃんの中に増える。


それは彼女が豊かになることなのか、それとも薄まることなのか。


その時だった。


メンちゃんの髪の色が変わった。


金色のツインテールが、一瞬だけ暗い茶色に沈む。


赤いリボンが、見知らぬ店の暖簾みたいな色に染まる。


「メンちゃん?」


俺が呼ぶと、彼女が顔を上げた。


目が違った。


琥珀色ではない。


もっと濃い、別の醤油ダレの色。


俺を見ているのに、俺を知らない目だった。


心臓が止まりかけた。


「……ご主人様?」


瞬きをする。


次の瞬間、金色が戻った。


赤いリボン、琥珀色の瞳。


メンちゃんだった。


「今の、髪の色が」


「え?」


彼女は自分の髪をつかんだ。


金色だった。


いつものメンちゃんだった。


「ご主人様、何か見えた?」


「……いや」


嘘をついた。


見えた。


はっきり見えた。


あの一瞬、メンちゃんは「別の家系ラーメン」になりかけていた。


透けるのではない。


上書きされる。


俺がこの店のラーメンを「うまい」と思うたびに、メンちゃんの中の家系が、この店の味に寄っていく。


消えるより静かで、消えるより怖い。


知らないうちに、隣にいる人間が別の誰かになっている。


それは、俺が一番恐れていることだった。


だが、メンちゃんには言えなかった。


彼女は不安そうに俺を見ていたが、俺が「何でもない」と言ったことを信じようとしていた。


信じたかったのだろう。


俺も、信じたかった。


店を出ると、外は少し明るくなっていた。


メンちゃんは俺の隣を歩く。


いつもなら袖をつまむ距離だが、今日は少し離れていた。


俺はノートを開いて、一軒目の丸に、小さくチェックを入れた。


十二個のうちの、たったひとつ。


朝の九時をとっくに過ぎている。


残り十一軒。


紙の上では、まだまだ先が長い。


胃袋の中では、もう一杯が満員だった。


「ご主人様、次は?」


「二軒目だ」


「二軒目、どこ?」


「バスで、少し行った先」


「バス」メンちゃんが顔をしかめた。「一軒目のお店から、駅まで歩いて、電車で二駅戻って、それからバスだよ。この地図」


彼女はノートの余白を指でなぞる。


「これ、わざと遠くしてない?」


「わざとじゃない。うまい店が、たまたま遠いだけだ」


「うまい店が、たまたま、全部反対方向にあるの?」


「家系は、そういうふうにできてる」


「できてないよ! 街の都合でできてるだけだよ!」


正しかった。


だが、家系好きにとって、店の配置はいつだって理不尽な神の采配だった。


近い店ほど普通で、遠い店ほど恋しくなる。


その仕組みだけは、何年通っても変わらなかった。


二軒目は、駅からバスで少し行った場所にある店だった。


俺のノートには、醤油強め、鶏油多め、チャーシュー厚め、ライス硬め、海苔は普通、とある。


メンちゃんは「海苔、普通」の文字を見て、少し不満そうだった。


「普通って何?」


「普通だ」


「海苔に普通なんてないよ」


「ある」


「ない。海苔は全部、人生を背負ってる」


「背負わせすぎだ」


そんな会話をしながら店へ向かったが、二軒目の前に着いた時、俺は足を止めた。


店の前に、見慣れない少女が立っていた。


背が高く、大きめのパーカー。


山盛りの野菜みたいにふわりと広がる髪。


ニンニク色のヘアピンに、黒いブーツ。


存在感が強い。


強すぎる。


見ただけで、胃袋が身構えた。


それだけではなかった。


彼女が立っているだけで、二軒目の暖簾までの道が、なぜか遠く見えた。


距離は五メートルもない。


なのに、彼女の後ろの空気が、もやもやと盛り上がっている。


もやしと、キャベツと、分厚い豚と、ニンニクの山。


見えないはずのそれが、透明な壁みたいに道をふさいでいた。


「量の壁」だと、俺の胃袋が本能で理解した。


少女はこちらを見て、にっと笑った。


「やっと来た」


メンちゃんが俺の前に出る。


「誰?」


少女は腕を組んだ。


「ジロ子」


「ジロ子?」


「二郎系」


その一言だけで、妙に納得してしまった。


圧があって、量があって、逃げ場がない。


まさに二郎系だった。


俺は二軒目の暖簾へ行こうとした。


だが、足が前に出なかった。


見えない野菜の壁が、みしり、と重くなる。


一歩踏み出そうとするだけで、胃袋の底に「無理」という重石が乗る。


「言っとくけど」ジロ子が笑った。「あたしを通り過ぎて、あんたがそのラーメン食べるのは無理だよ」


「なぜ」


「あたし、量だから」ジロ子は肩をすくめた。「逃げ腰の胃袋には、あたしは越えられない壁になる。まっすぐ向き合ってるやつにだけ、道を空けるんだ」


理不尽だった。


だが、体が納得してしまっていた。


俺の胃袋は、たしかに今、逃げ腰だった。


ジロ子は俺を見た。


「あんたが、硬め濃いめ多めの男?」


「その呼び方はやめろ」


「いいじゃん。分かりやすい」


メンちゃんがむっとする。


「ご主人様は私のご主人様だよ」


「ふうん」ジロ子はメンちゃんを見下ろした。「家系の子か。重そう」


「あなたに言われたくない!」


「褒めてる」


「絶対違う!」


ジロ子は笑い、それから急に真顔になった。


「で、硬め濃いめ多めの男」


「だから」


「あんた、自分の食べ方、愛だと思ってる?」


空気が変わった。


店の前の匂い、通り過ぎる車、遠くの信号の音、全部が少し遠くなる。


見えない野菜の壁だけが、いっそう濃く、俺の前に立ちはだかった。


「何が言いたい」


ジロ子は俺のノートを指さした。


「それ、愛の記録? それとも逃げ道の地図?」


メンちゃんの表情がこわばる。


俺はノートを握った。


「お前に関係ない」


「あるよ」ジロ子は一歩近づいた。圧が強い。体格的にも、オーラ的にも。「あんたが逃げるたびに、この子の味が薄まってる」


「薄まってない!」メンちゃんが叫んだ。だが、その声は少し震えていた。


その瞬間だった。


メンちゃんの髪が、また色を変えた。


金色が、さっきの店の茶色に沈み、次の瞬間、まだ行ってもいない二軒目の暖簾の色に染まる。


赤いリボンが、青にも紫にも、俺の知らない何色にも、ちらちらと乱高下した。


「メンちゃん!?」


「や、やだ、なにこれ」


メンちゃんが自分の髪をつかむ。


つかんだそばから、色が変わる。


一軒目の色、二軒目の色、まだ食べていない三軒目の色。


俺のノートの丸の数だけ、彼女の髪が、ぐるぐると点滅していた。


「ご主人様、私、私、どれが本当の色!?」


「落ち着け」


「落ち着けない! 髪が信号機みたいになってる!」


家系の色が、彼女の中でせめぎ合っていた。


俺がこれから食べようとしている十二軒ぶんの味が、いっぺんに彼女へ押し寄せているみたいだった。


ジロ子はその様子を、静かに見ていた。


「な。増えてるんじゃない。混ざってるんだよ」


「……」


「家系って、自分の濃さに誇りを持つもんじゃないの? なのにこの子、あんたの巡礼のたびに、色を失ってってる」


メンちゃんの髪が、また金色に戻った。


だが、その金は、朝より少しくすんで見えた。


彼女は自分の手をぎゅっと握って、下を向いていた。


俺は一歩前へ出た。


「言いすぎだ」


メンちゃんが傷つく顔を見たくなかった。


ラーメンが壊れることより、こいつの目が曇ることのほうが嫌だった。


いつからそうなったのか、自分でも分からない。


「そう?」ジロ子は俺を見た。「なら聞くけど、あんたはこの子を救うために巡礼してるの? それとも、いつも通り嫌なことから逃げるためにラーメン食べ歩いてるの?」


胸の奥を殴られたような気がした。


俺は黙った。


仕事がきつい日、上司に無茶ぶりされて失敗だけ押しつけられた日、自分が空っぽに感じた日、俺は家系ラーメン屋へ行った。


それは救いだった。


だが、ジロ子は逃がしてくれなかった。


「食ってんじゃなくて、背負ってんだよ」ジロ子は低く言った。「ラーメンは荷物じゃない。向き合うもんだ」


メンちゃんが俺を見る。


「ご主人様」


その声が、痛かった。


ジロ子は腕組みをほどいた。


その瞬間、俺の前をふさいでいた見えない野菜の壁が、すうっと軽くなった。


道は空いた。


だが、なぜか、もう二軒目に入る気は起きなかった。


「残すなとは言わない。でも、向き合いな」


彼女の口癖なのだろう。


その言葉は、妙に重かった。


「その十二個の丸、全部押しても、あんたは何も救えないよ」ジロ子は俺のノートを顎で示した。「一日で十二軒回る男に、向き合う一杯なんてないだろ」


図星だった。


「最後の一杯は、逃げながらじゃ食べきれないよ」


「最後の一杯って何だ」俺が聞くと、ジロ子は笑った。


「それを知りたいなら、店主に聞きな」


「麺ノ家の?」


「他にいる?」ジロ子は振り返った。「あの人、昔やらかしてるから」


「やらかした?」


「愛しすぎたんだよ。あんたみたいに」


その言葉を残して、ジロ子は歩き出した。


人混みの中へ。


山盛りの野菜みたいな髪が、角を曲がって消える。


その直後、店の暖簾が揺れた。


風は吹いていない。


暖簾の影から、長い髪をきっちり結んだ少女がこちらを見ていた。


麺の白、つけ汁の焦げ茶。


彼女はメンちゃんではなく、俺を見て言った。


「浸すのは、食べる瞬間だけでいい」


「……誰だ」


俺が言う前に、少女は消えた。


メンちゃんが俺の袖をつかむ。


「今の人、距離が冷たかった」


「距離が冷たいって何だ」


「分かんない。でも、近づきすぎない味がした」


俺とメンちゃんは、その場に立ち尽くしていた。


二軒目の暖簾が揺れ、店内からラーメンの匂いがする。


うまそうだった。


だが、今の俺には、その匂いが少し重かった。


「ご主人様、私、薄まってるのかな」


俺は答えられなかった。


今朝まで、答えは持っていたはずだった。


メンちゃんを見ている、家系ラーメンだけでなくメンちゃん自身を、それで十分だと思っていた。


だが、ジロ子の言葉が刺さったまま抜けない。


食ってんじゃなくて、背負ってんだよ。


俺はメンちゃんを見ていたのか、それとも、メンちゃんを見ている自分に安心していたのか。


分からなくなった。


「帰ろう」俺は言った。


「食べないの?」


「今食ったら、たぶん逃げになる」


メンちゃんは目を見開いた。


「ご主人様、それ、美味しい言葉?」


「知らん」


「でも、じんわりする」


俺たちは二軒目に入らなかった。


券売機の前まで行って、食券を買わなかった。


それは、俺にとってかなり珍しいことだった。


ほとんど事件だ。


ノートを開いて、俺は残り十一個の丸を見た。


そして、ペンを取り出し、一本の線で、その全部を、すうっと消した。


「ご主人様……」


「今日はもう、いい」


「三軒までなら、法度、許すよ?」


「一軒でいい」


メンちゃんは、少しだけ泣きそうな顔で笑った。


帰りの電車で、俺は巡礼ノートを開いた。


今日行く予定だった店、これまで行った店、麺ノ家。


ページをめくる。


何度も書いた店名、何度も引いた線、駅名、日付、感想。


ふと、俺は気づいた。


店の並びが、偶然ではない。


俺が何年もかけて通ってきた店、気に入った店、また行きたいと思った店。


それらを線で結ぶと、ひとつの中心に集まっている。


横浜家系 麺ノ家。


そして、その周囲に、昔の修業先や店同士のつながりみたいなものが浮かび上がる。


「……何だ、これ」


メンちゃんがのぞき込む。


「地図?」


「いや」俺はページを見つめた。手が少し汗ばんでいた。「家系図だ」


「家系図?」


「店の」


「ラーメンの家系図……」


メンちゃんはその言葉をゆっくり繰り返した。


俺は、消したばかりの十一個の丸を、もう一度見た。


今日ここを全部回っていたら、俺はこの線に、たぶん気づかなかった。


十二軒を追いかけているうちは、店は「次に行くところ」でしかなかった。


一軒でやめて、はじめて、店と店のつながりが見えた。


家系愛は、俺をここまで連れてきてくれた。


だが同時に、走り続けることで、大事なものを何度も通り過ぎさせてもいた。


救いであり、逃げでもあった。


その両方が、このノートの中に、線になって残っていた。


次の瞬間、メンちゃんの胸元に赤い光が浮かんだ。


一軒目で見た光より、少し強い。


「メンちゃん!」


俺が手を伸ばすと、彼女は胸を押さえた。


苦しそうではない。


ただ、驚いている。


「聞こえる」


「何が」


「スープの音。いろんなお店の音。寸胴の音。湯切りの音。食券の音」メンちゃんの目が揺れる。「全部、麺ノ家につながってる」


電車がトンネルに入った。


窓の外が暗くなり、ガラスに俺とメンちゃんの顔が映る。


そして、その後ろに、一瞬だけ誰かの影が見えた。


白いフリル、淡い水色のリボン、澄んだ瞳。


しおりん。


店主の言葉のあとに見た、塩ラーメンの擬人化。


彼女は窓の向こうで、口だけを動かした。


声は聞こえない。


だが、何を言ったのかは分かった。


最後の一杯が近い。


トンネルを抜けると、窓の向こうにはいつもの町が戻っていた。


しおりんの姿はない。


メンちゃんは俺の袖を握っている。


その指先は、冷たかった。


答えは、麺ノ家にある。


店主が知っている。


たぶん、俺たちが知りたくないことまで。


その日の夕方、俺たちは麺ノ家の前に立っていた。


暖簾は出ていて、赤い看板はいつものように少しくたびれている。


店の中からは豚骨醤油の匂いが漂っていた。


俺は深く息を吸った。


うまそうな匂いだった。


救いの匂いで、そして少し怖い匂いだった。


「聞くの?」メンちゃんが俺を見る。


「ああ」


「怖い?」


「怖い」


「ご主人様でも怖いんだ」


「俺はラーメン以外にはわりと弱い」


「ラーメンにも弱いよ」


「それはそうだ」


俺は暖簾に手をかけた。


店主がカウンターの向こうで顔を上げる。


「おう」


いつもの声。


だが、今日は少しだけ違って聞こえた。


俺はカウンターに座らなかった。


食券も買わなかった。


ただ、店主を見た。


「聞きたいことがあります」


店主は目を細めた。


「食う前にか」


「食う前にです」


「珍しいな」


「今日、二軒目を食わなかった。予定は十二軒あったのに、一軒でやめました」


店主の手が止まった。


寸胴の湯気が、ゆっくり立ちのぼる。


「十二軒」店主は少し笑った。「相変わらず、ばかみてえに愛が重いな」


「よく言われます」


「そうか」


「ジロ子に会いました」


店主の表情が、わずかに変わった。


「あいつ、出てきたか」


「知ってるんですね」


「多少はな」


「あんた、昔やらかしたって言われました」


店内の空気が重くなった。


メンちゃんが俺の袖を握る。


店主はしばらく黙っていたが、やがて火を少し弱めた。


寸胴の音が静かになる。


「兄ちゃん。そこまで来たなら、もう隠せねえな」


店主はカウンターの下から、古い缶を取り出した。


茶色くさびた菓子の缶。


ふたを開けると、中には古い食券が何枚も入っていた。


その中の一枚だけが、赤く染まっている。


俺の背筋が冷えた。


麺ノ家で見た色、今日一軒目で見た食券の光、メンちゃんの胸元に浮かんだ光。


同じ赤だった。


店主は、その食券を指でつまんだ。


「昔、俺にもいたんだよ」


「いた?」


「愛しすぎたラーメンが、人の姿になった」


メンちゃんが息をのんだ。


店主は、赤い食券を見つめたまま言った。


「名前は、まだ言えねえ」


「なぜ」


「言ったら、戻ってきそうでな」


その声は、初めて聞くほど弱かった。


店主は笑っていなかった。


俺も、何も言えなかった。


「兄ちゃん」店主は俺を見る。「お前、メンちゃんを救いたいなら、食い続けるな」


「でも、食わなきゃ」


「それが罠だ」寸胴の湯気が揺れた。「愛ってのはな、義務になった瞬間、味が死ぬ」


その言葉が、昼間のジロ子の声と重なった。


食ってんじゃなくて、背負ってんだよ。


十二個の丸。


あれは愛でもあり、荷物でもあった。


「今日、十一軒ぶんの丸を消しました」俺は言った。「消したら、少しだけ、隣が見えた気がします」


店主はしばらく俺を見て、それから、ふっと息を吐いた。


「……そりゃ、いい一日だったな」


メンちゃんの手が震えた。


俺は、赤い食券を見つめた。


食券はもう切られた。


その意味が、少しずつ分かり始めていた。


だが、まだ全部ではない。


店主は缶を閉じた。


「詳しい話は、明日にしよう」


「今じゃだめなんですか」


「今話すと、お前はたぶん、食えなくなる。今日は帰れ」


店主はそう言って、いつものように腕を組んだ。


「それと、明日は食券を買うな」


俺は眉をひそめた。


「ラーメン屋で食券を買うなって、どういう意味ですか」


店主は、赤い食券の入った缶をカウンターの下へしまった。


「食券を切るのは、店じゃない日もあるってことだ」


その言葉の意味は分からなかった。


ただ、メンちゃんが俺の袖を握る力を強めた。


帰り道、空は暗くなっていた。


俺とメンちゃんは、ほとんど話さなかった。


歩道を歩き、車のライトが流れ、どこかの店から油の匂いがする。


いつもなら腹が鳴るのに、今日は鳴らなかった。


「ご主人様、私、怖い」


「ああ」


「でも、知りたい。私が、何からできてるのか」


俺は足を止めて、メンちゃんを見た。


街灯の下で、彼女の金色の髪が淡く光っていた。


湯気のように柔らかく、けれど、今にも消えそうに。


その髪は、もう乱高下していなかった。


金色のまま、じっと、そこにあった。


「メンちゃん。俺も知りたい。でも、ひとつだけ先に言っておく」


彼女が俺を見上げる。


俺は少しだけ息を吸った。


「お前が何からできてても、俺はお前をラーメンの成分表みたいには見ない」


メンちゃんは目を丸くした。


「言い方」


「悪かったか」


「ご主人様らしい」


彼女は少し笑った。


「あ、それと」メンちゃんは指を一本立てた。「家系法度、第六条」


「まだ増えるのか」


「巡礼は、一日三軒まで。四軒目からは、私が全力で袖を引っぱる」


「さっきは浮気とみなすって言ってたぞ」


「今度は、体を張って止める」


「条項が育ってる」


「私も育ってるの」


彼女は、えへんと胸を張った。


その笑顔に、俺は少しだけ救われた。


だが、胸の奥の不安は消えない。


直系巡礼は、答えをくれると思っていた。


だが実際には、問いを増やしただけだった。


メンちゃんは、俺の家系なのか。


家系全部の影なのか。


それとも、俺が逃げ込んできたラーメン屋の記憶が、一人の少女の形を取っただけなのか。


そして、店主が昔失った擬人化ラーメンとは、何者だったのか。


夜の空気は冷たかった。


俺はポケットの中のノートに触れた。


その表紙が、少しだけ熱を持っている気がした。


気のせいだと思いたかったが、もう気のせいで済ませられるところは過ぎている。


食券は、もう切られた。


最後の一杯は、近い。


俺はメンちゃんの隣を歩きながら、静かに覚悟を決めた。


明日、店主の過去を聞く。


今朝まで持っていた答えは、もうない。


メンちゃんを見ている、それだけで足りると思っていた。


足りなかった。


俺はラーメンに救われてきたが、救われることと逃げ込むことの境目を、見ないようにしていた。


十二軒を追いかける俺は、たぶん、その境目からずっと目をそらしていた。


一軒でやめた今日、はじめて、それが見えた気がした。


答えのないまま、店主に会う。


怖い。


だが、嘘の答えを握ったまま行くよりは、ましだ。


隣で、メンちゃんが俺の袖をつかんだまま歩いている。


その手は冷たい。


けれど、確かにそこにあった。


俺はその手を、そっと握り返した。


「ご主人様?」


「寒いだけだ」


「ふふ。ハードボイルドなのに、言い訳が下手」


「うるさい」


メンちゃんは笑った。


少しだけ、いつものメンちゃんに戻った気がした。


だが、街灯の下を抜ける瞬間、彼女の胸元に、赤い光がまた一瞬だけ灯った。


今度は、前よりもはっきりと。


まるで、見えない誰かが、最後の食券を切ったみたいに。

今回は、直系巡礼の回。


家系をたどれば答えに近づけると思っていた主人公は、むしろ新しい問いを抱えることになる。


店主が見せた赤い食券の先に、もう一つの一杯が待っている。

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