103:PvP-光を終えて-2
「悪いが俺には無理だ」
「私たちにも無理ね」
「「デスヨネー」」
さて、本格的なアドバイザーが欲しい。
そう思った俺とノノさんはオニオンさんに連絡を取ると、以前も訪れた居酒屋でオニオンさん、それに偶々居た一人のドーフェさんに、話をしてみた。
が、結果は御覧の通りだった。
「一応無理な理由を説明しておくとだ。幾つかあるが……まず俺もドーフェもそう言うのにまるで向かない。ほぼほぼ闘士業だけで此処まで来ているからな。ちょっとしたアドバイスくらいならともかく、本格的なアドバイザーになるのは無理だ」
「そうね。初心者闘士に基礎を教える程度ならともかく、基礎が固まり始めているノノとハリに対してアドバイザーとして指導をすると言うのは、ちょっと遠慮したいところになるわ」
「なるほど」
ただ、やはりオニオンさんとドーフェさんは優しい。
あるいはこれでも先輩から後輩へのアドバイスと言う事でポイントが貰えるのかもしれないが、何故出来ないのかを教えてくれるらしい。
「そもそも俺とハリ、ノノの嬢ちゃんじゃ戦い方の方向性が違い過ぎる。ハリたちの戦い方はどちらかと言えば堅実かつオーソドックスな前衛と後衛、そこに環境支配を絡めた、ってところみたいだしな」
「対してオニオンの戦い方は、真っすぐ行ってぶっ飛ばす。が、基本だものね」
「うるせぇ。それを言うならお前は、何人か使って探ったら、数で押し潰す。じゃねぇか」
「なによ」
「んだよ」
「その、お二人とも……」
「えと、その……」
「と、今はそれどころじゃなかったな。怖いのも睨んでるし」
オニオンさんとドーフェさんが少し揉めそうになる。
が、直ぐにその気配はなくなった。
後、オニオンさんの視線の先には、この居酒屋のマスターと思しきアンドロイドの方が、アイスピックのようなものを指の間に数本挟む形で構えていた。
どうやら、この居酒屋で揉めたら、氷のようにカチ割られるらしい。
何がとは言わないが。
「ま、そう言う素質面を抜きにしても、私たちが二人のアドバイザーになるのは無理ね」
「だな。本格的なアドバイザーとなったら、それは業務だ。そうなると、アドバイスの代わりにポイントを受け取る事になる。でないと、他のアドバイザー連中と揉める事になっちまう。だが、ポイントを支払うとなったら……高いぞ? 特に俺やドーフェのように実力のある闘士となると」
「あー、なるほど……そうなると確かに無理ですね……」
「そんなポイントの余裕があるわけじゃないですからね……」
当たり前と言えば当たり前の話なのかもしれないが、どうやら本格的なアドバイザーが欲しいとなったら、ポイントのやり取りが発生するらしい。
どのような雇用形態にするかはそれぞれの契約内容次第のようだが、いずれにせよ今の俺たちには手が届かない話になってしまう。
「それでも今回は俺たちをわざわざ頼ってきてくれたって事で、外からの無責任な意見って形で出すが……そうだなぁ」
「へえ……」
オニオンさんとドーフェさんが、俺とノノさんがセフィルーラさんと戦うログを見る。
そうして見終わった二人は俺の方を見る。
「ハリ。とりあえずお前は装備更新だな。マントだけが良いものになって、他が追い付いていないせいで、折角のいいマントが生かされなくなってる」
「あ……」
言われてみれば納得の話だ。
サミさんの作ったマントは、今の俺が身に着けている他の装備よりも丈夫かもしれない代物だ。
そして、丈夫というのは、俺の目で見ても明らかなのだから、セフィルーラさんの目でも見抜けるのは当然。
それならば、真正面から攻撃する方が有効であるし、真正面から攻撃されるのでは、マントの性能を生かしきれない。
マントに全身に守りをもたらす作用があってもだ。
「後はそうね。たぶんだけど、このセフィルーラと言う魔法剣士は、ハリの視線でノノの位置をだいたいだけど割り出しているわね。色々と利用されているんじゃないかしら。だから、防具更新の際には自分の視線が読まれないような工夫をした方がいいと思うわ」
「あー……」
ドーフェさんの話も分かる。
俺は何度かノノさんの方に視線だけを向けていたりするし、その視線が向く先をセフィルーラさんが気づいていれば……確かに色々と利用出来そうだ。
「あの、私の動きはどうでしょうか?」
「ノノの嬢ちゃんは……とりあえずもっとハリを巻き込むつもりで魔法を撃ってよかったな」
「そうね。今回の相手のように機動力に優れるタイプなら、一撃の威力よりもまずは当てる事の方が重要。それなら、この波の魔法で、前衛ごと敵を攻撃して、確実に手傷を負わせていく方が良かったと思うわ」
「でもそれは……」
「大丈夫だと思うぞ? 今のハリの強化魔法とマントの性能を合わせればな。と言うか、このマントはそこまで考えての性能じゃないか?」
「「!?」」
そして、ノノさんに対する二人のアドバイスで、俺とノノさんは大いに衝撃を受けることになった。
言われてみれば確かな話で、多少ノノさんが規模を抑えたり、俺が防御に専念すれば、確かに俺ごと魔法を撃ち込んでも特に問題など起きないはずなのだから。
で、サミさんがそこまで想定していた可能性と言うのは……あり得る、普通にあり得る。
だってサミさんも俺たちより格上の闘士なのだから。
「今日の所はこんなところか。ま、お前ら二人ともまだ『煉獄闘技場』に来て半年も経っていない。初心者は抜けたが、新人には変わりない。地道に鍛えて行けばいいと思うぞ」
「そうそう。慌てる必要なんてないんだから。自分たちの手札や強みをしっかりと確認して強化すればいいのよ」
「分かりました」
「はい」
そうして、二人から焦る必要はないというアドバイスを受けて、この場での話は終わりとなった。




