102:PvP-光を終えて-1
「負けたかぁ……」
「負けちゃいましたねぇ……」
元の位置に戻ってきた俺とノノさんは空を見上げ、軽くため息を吐く。
「とりあえず反省会かな」
「ですね」
では、反省会をしよう。
と言う訳で、いつも通りの処理をしつつ『カコカティ』に入店する。
そして、決闘のログを二人で見ていく。
「うーん、初動については問題ないと思うんだよな」
「そうですね。ここでセフィ様の翼を潰せていなかった場合、以降はヒットアンドアウェイで延々と一方的に攻められていたと思います」
まず初動。
ここでセフィルーラさんの翼を潰したのは正解でいいはずだ。
と言うより、ノノさんの言う通り、此処で翼を潰せていなかったら、俺たちとセフィルーラさんの基礎能力の差もあって、決闘場所が多少こちらにとって有利な事を鑑みてもなお、一方的な試合展開になっていた可能性が高い。
「問題はこの後からですよね。やっぱりハリさんが棍を回収できなかったのは、問題だと思うんです」
「そうだな。素手で戦えなくもなかったし、棍を取りに行く暇もなかったから諦めていたけれど、その後のやり取りを見ている感じだと、棍があればもっと積極的に攻められたし、上手くいけば俺の方が有利だったまであるかもしれない」
だが、やはり素手は良くなかった。
俺とノノさんが見ているログには、俺とセフィルーラさんの攻防が幾つも映っているのだが、その中には俺が素手であるために、リーチが足りなくて攻めきれなかった場面、セフィルーラさんの剣を受け止めるわけにはいかずに引いた場面が幾つも映っている。
勿論、俺が棍を握っていれば、その時点でセフィルーラさんの対処も変わっていた事だろうが……それでも俺は棍を持っていた方が良かったのは確かだろう。
「棍を取りに行けなかったのは私を守るためですよね……」
「それもある。ただ、セフィルーラさんが上手く誘導していたのもあるからな。どの道落とした武器を拾いに行くような隙は無かったかもだ。そうなると、代わりの武器を用意しておくべき……ん?」
「あれ?」
そうでなくとも何かしらの武器があれば……と、そこまで俺が思った時だった。
俺は気づいてしまった。
ノノさんも気づいてしまった。
「あの、ハリさん。ハリさんって『煉獄闘技場』に来たばかりの頃、ナイフを使ってませんでした?」
「使ってました……」
サブ武器になり得るものを俺は既に持っていたと言う事実に。
そのナイフが現在俺の部屋に置きっぱなしになっている事に。
ものとしては普通のナイフであっても、今の俺が使えば最低限の役目ぐらいは果たせていたであろう想像に。
「穴があったら入りたい……」
俺はテーブルに突っ伏し、頭を抱える。
もしかしたら耳まで赤くなっているかもしれない。
「ハ、ハリさんは悪くないですよ。私も忘れていたんですから。これがハリさんのミスだと言うなら、私のミスでもありますから、ね?」
「ノノさん……ありがとう」
うーん、何処かで慢心と言うか気の緩みみたいなものがあったのだろうか……まさか、装備品をシンプルに忘れるとは……冗談抜きに勝敗に関わっていたかもしれないと思うと、本当につらいものがある。
「え、えーと、その後ですけど……この最後の部分はどうなんでしょうか?」
「そこか……額の鉢金でセフィルーラさんの剣を受けようとして、受ける事は成功したんだよな。ただ、その衝撃なのか、偶然なのか、あるいは魔法なのか、剣を受けた直後に眩暈と言うか昏倒と言うか、とにかくマトモに身動きできなくなったんだよな。おかげでセフィルーラさんの追撃を凌げなかった」
とりあえず反省会に戻ろう。
場面は決闘の最後の方、セフィルーラさんによって俺が倒された辺りだ。
「魔法の可能性もあるんですか? この時私は視界が潰されていてよく分からなかったですけど、魔力が動くような感じはなかったですけど」
「どうなんだろうなぁ? ぶっちゃけ、単純な技術と言うのもあり得そうだとは思ってる。ただ、偶然よりは、セフィルーラさんが俺の頭を切れればそれでよし、切れなくても昏倒させられれば仕留められる、と言う考えで何かをしていた可能性は否定できないんだよ」
「なるほど。でもそう言う話なら、剣そのものにそう言う機能があった、まであり得そうですね」
「まあ、無くはないだろうな。ピンポイントな効果ではあるけれど、便利そうではある」
まあ、この辺については俺視点で何があったのかについて話すだけだ。
ただ、セフィルーラさんの方が運が良かったから勝ったと言う可能性については、可能な限り考えないでおく。
『煉獄闘技場』で手に入る武器や魔法ならば、一件偶然に思えるような現象を確実に起こす方法なんて幾らでもあると思っているからだ。
「しかし、こうして実際に戦ってみると、やっぱりPvPは沼だな。レイドバトルに出ていたと言う事はセフィルーラさんは普通の決闘にも出ていて、そっちでも通用するような構成になっているのだろうけど、それでもあの強さだった。だったら、PvPを専門にしている闘士はどんなことになっているのやら……」
「考えてみれば、相手が闘士の方に限定されると言う事は、多種多様な姿の方々が居る『煉獄闘技場』ではありますけど、それでも多少は相手の姿形が絞られると言う事でもありますよね。だったらその分だけ鍛える方向も絞れるわけですから、私たちが思っている以上に凄いことになっているのかもしれませんね」
うーん、やはりPvPは難しい。
勝った時に得られるポイントは多いのかもしれないが、経験不足である今の俺たちだと、PvEの方が安定してポイントを稼げそうな気がする。
と言うかだ。
「うーん、このログをもっと正確に見て、アドバイスをしてくれる人とか欲しい」
「確かにそうかもしれませんね」
なんだか、俺たちが気づけていないだけで、このログには他にも色々と情報が眠っていそうな気がしてきた。
もしかしたらだが、本格的に戦い方の師匠なり、アドバイザーなりを見つけ出すべきなのかもしれない。




