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133話 黒い言葉は刃よりキレる

【ホテルホーリーウッド・ルーシー視点】

 ※合宿終了まであと6日。



 「()()()! ()()()()!」



 泣きながら窓から飛び出したレグルスを追って私はサンダルを履き、ホテルホーリーウッドの階段を駆け下り、裏口から外へ出た。


 幸い大きな月が辺りを明るく照らし出し、湖の先の樹海の方に向って走る、白いブラウスに青いパンツスタイルの小柄なレグルスの背中を容易に見つけることができた。



 「あっちは樹海なのに」



 とにかく、全速力でその後を私は追いかけた。

 距離は縮まり、レグルスの嗚咽しながら走る苦しそうな声が聞こえてくる。



 ……うううっ……ズッ…うっ……う………ヒック……ううっ……



 もう少し、もう少しで……。揺れるエメラルドグリーンの髪が指先に触れた。




「レグルス! 待って!」




 その時。


()()() ()()()()()!」


 不意に向かって左の方角から、ハント副隊長の怒鳴り声が聞こえた。

 その声に、一瞬振り返ったレグルスを私は迷うことなく捕まえ、抱きしめた。



()()()()っ! 」


「……っうっ、ルー……シー、うううううっ……()()()()


 

 腕の中のレグルスは、肩を震わせ顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。



「レグルス、どうして、どうし「()()()()()()()! 」


 王子!?

 ハント副隊長の声に耳を疑った。


 グイっと、すごい力で肩を掴まれ、私はレグルスから引き離された。



「え……」



 目の前に、私とレグルスの間を遮るように臨戦態勢で立つハント副隊長の背中が見えた。

 短パンにTシャツという軽装だが、腰に携えた黒いアーミーナイフの持ち手の部分が、月の光で微かに光った。



「ルーシー、さっさと宿へ戻れ!」


 背を向けたままハント副隊長が低い声で怒鳴った。


「なんで?」


()()()()()()()()()()()!」


「でも、レグルスが……あっ」


 レグルスの方へ駆けよろうと足を踏み出した途端、凄い速さで足を払われ、その場にうつぶせに転ばされた。


 ドサッ


「ルーシー!「()()()!」


 私に駆け寄ろうとしたレグルスを、ハント副隊長が怒鳴りつけると、レグルスは瞳を潤ませその場に凍り付いたように固まった。



「レグルス、私は、大丈「()()()()()!」


 今度は私を怒鳴りつけた。

 見上げるハント副隊長はビリビリと緊張感を漂わせた恐ろしい形相で私を見下ろし、また、レグルスの方へ顔を向けた。



「レグルス王子は()で、イムの()()だ」


「ハント、やめろ」


 レグルスが、か細い小さな声で叫んだ。


「レグルスは女の子だよ!」


「この人は()()()()()()なんだ! そうやって、お前の心を(もてあそ)んで楽しんでるだけだ」


「そんな……ボクは」


 レグルスは、力が抜けたようにガクンと跪き顔を両手で覆った。


 ()()()()()()!? 

 ”男の子”や”女の子”にもなれるってこと!?


 私のところに来たレグルスは、お花をたくさん咲かせてくれる、可愛いくて恥ずかしがり屋で、優しい女の子。それが例え”男の子”だったとしても、その性格や優しさやは変わらないと思う。



「王子。ルーシーに、何をしたんですか」


 ハント副隊長が、見た目にそぐわないドスの効いた低い声で怒鳴った。


「何もされてない!」


 私は身体を起こしながら、レグルスの無実を訴えた。


「ふざけんな、お前は黙ってろ! すっかり……取り込まれやがって」 私を一瞥した。


「取り込まれてない!」


「ルーシー、ああ見えるが、この王子は俺より年上で、男の姿は妖精王に瓜二つ。お前みたいな小娘、一瞬でかっさらってモノにするくらい朝飯前だ」


「親父とは違う!…ぅっ…やめてくれ!……ハント…」


 泣きながらレグルスが、悲痛な声を挙げた。



「フッ、その姿で油断させて、ルーシーを森へ連れ込む算段なんだろ?」


「違う、そんな事考えてない!」


「何が違う、俺から見れば、下心丸出しだ! イムを出し抜いてこいつをモノにしたら、さぞかし気分がいいんだろうな」


「違う!」


「だったらこいつに、正体を見せてやったらどうなんだ、本当の姿を」


「うっ……ううグシュ……うわぁぁぁ………やめてよ……ハント」


「見せられるわけねぇーか、見せたら終わりだもんな。そうだよな、王子!」


「やめてよ……ううグシュ……ヒック……もう、やめて……グシュうう……もう、ボクはもう……グシュ……ヒック……うううわぁぁぁ……」



 レグルスは地面に小さく蹲り、声を枯らしながら悲痛な声で嗚咽した。

 泣きながら”やめて”と懇願するレグルスに対し、言葉で執拗に(なぶ)るハント副隊長に、沸々と怒りが込み上げた。



「酷い……」


「そうだ、酷い奴だ、お前を騙してたんだからな……」


 ハント副隊長が私に顔を向けニヤッと笑った。

 私はたまらず立ち上がり、ハント副隊長に掴みかかった。



「レグルスは、()()()()()!」


()()()()()()()()!」


 黒い魔力を帯びた青い目が、目の前に現れた。



「あっ」



 ”ギンッ”

 


 第8部隊ハント副隊長の幻術を、まともに食らっていた。



 悔しい……。



 気付いた時にはもう遅くて、傾く景色と涙を流すレグルスの姿が、暗い闇に飲み込まれていった。

 

 +++++

いつもお付き合いいただきありがとうございますm(__)m

ブクマ★感謝です(^_-)/☆彡

次回、来週火曜日更新予定です。


ブクマ★いただけましたら励みになります!応援よろしくお願いしますm(__)m

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