会えない
実咲はどうしてるんだろう?
連絡しよう。
会いたいし話したい……。
そう思いながら、いつもの毎日を過ごしていた。
ゆっくり知っていくと言いながら焦ってないか……?
自問自答の日々。
いつもの毎日を過ごし今日こそは連絡しようと心を奮い立たせるも断念し……を繰り返し、気付けば一週間が過ぎていた。
こんなに連絡するのに時間、かかってたっけ……?
実咲に連絡するのにこんなに悩んでどうしようと迷うんだ……。
50を目前の男がする事か!?
でも、行動に移さないと何も変わらない。
現状のままだ。
母の【自由に、好きに生きなさい。】という言葉が頭に浮かんだ。
人生の折り返し地点、好きに生きてみるのもいいかな……。
玉砕したっていい。
実咲とまた会えたのは縁があったから。
自分の気持ちをもう閉じ込めなくてもいいんだ。
だったら、好きな様にしたい。
思い立ったら吉日。
今、行動しよう。
俺はスマホを手に取った。
『実咲、元気?
三郷ちゃんの事以来、連絡してないね。
どうしてる?
会って話したいんだ。
実咲の都合、教えて欲しい。』
実咲はどう思ってるんだろう……。
二十年ぶりに会い、あの公園で話した時はほとんど自分たちの事は話せなかった。
二十年前と変わらない実咲が隣にいた事だけはわかった。
柔らかい声も、ゆっくりとした話すスピードも、姿形、二十年前と変わってなかった。
二十年ぶりにドキドキした事を忘れる事ができなかった。
触れたくても触れられない。
目が合うだけでどうしたらいいのかわからなくなった。
話をしなきゃいけなくて必死に意識をそっちに向けた。
離れたくなくてその場で立ちすくんだ事。
今度会えるという楽しみや嬉しさと、会えない間の寂しさ。
そう思うであろう自分の姿を実咲の後ろ姿を眺めながら思ってしまった。
実咲の中で俺はどういう存在なんだろう。
二十年も前の話、もう過去の人かも知れない。
思い出の人かも知れない。
二十年のうちで好きな人もいたかも知れない。
俺の知らない人と恋愛をしていたのかも知れない。
もしかしたら、知ってる人かも知れない……。
実咲の二十年を知りたい。
実咲からしばらくして返信があった。
けれど、それは落胆でしかなかった。
『返信が遅くなってごめんね。
最近、仕事が忙しくて時間が取れないんだ……。
ごめん……。』
これってどうしたらいいんだろう……。
今は会えないって事だよね……?
俺は自分の思っている事を返信する事にした。
『そっか……。
忙しいんだね。
実咲が時間作れるの待ってる。
俺は実咲の事を知りたいと思ってる。
少しずつでも知っていきたい。
だから待つよ。
仕事、無理せずにね。
また、連絡するよ。』
実咲の思いはわからない。
本当に忙しいのかも知れないし、会いたくないからの口実なのか、それは実咲にしかわからない。
俺は待つしかない。
本気でぶつかるしかない。
でも、実咲から連絡は来なかった。
1ヶ月、2ヶ月、……待っても待っても来なかった。
同じ市内に住んでいても実咲がどこに住んでいるのかもどこの老人ホームに勤めているかも知らなかった。
実咲と会いたくても会えないもどかしさは積もりに積もっていった……。
俺は三郷ちゃんに聞く事にした。
もう三郷ちゃんに聞くしか方法がなかった。
こんな事、聞いてもいいのかな……。
その気持ちは拭えなかったが、それでもやっぱり実咲を知りたい気持ちには勝てなかった。
「あ、曽根さん。 久しぶり。 元気ですか? どうしたの?」
「久しぶり。 三郷ちゃんも元気? ちょっと三郷ちゃんに聞きたい事があって電話したんだ……」
「お姉ちゃんの事ですか?」
「……あ、うん……、そうなんだ……。 聞いても構わない?」
聞きたい事で実咲の事ってピンとくる三郷ちゃんは凄い……。
「いいですよ。 私、昨日お姉ちゃんと電話しましたよ。 今、京都です」
「え! 京都? 京都にいるの? いや……、実咲と連絡取りたかったんだけど取れてなくて、忙しいのかな……と思って、それを聞きたくて三郷ちゃんに連絡したんだ……」
「あ、そうだったんですね! お姉ちゃん、あと半年は京都なんですよーー。 同じグループの老人ホームでこっちより規模の大きい老人ホームが京都にあるらしくて、そこに今、行ってます。 何かね、仕事をしながら資格をランクアップさせるために勉強もしてるみたいですよ。 だから向こうにアパート借りて暮らしてます」
「そうだったんだ……。 じゃあ、仕事しながら勉強もやってって休む暇ないね……」
「試験があるからそれに向けて勉強してるみたい。 休みはほとんどないかも知れない。 けど、今週末に有名な大きなお祭りがあるからそのお祭りには行くって言ってた。 久々のお休みだーーって言ってましたよ」
「実咲、頑張ってるんだね」
「何か急にその話が決まって……。 私の事があったからギリギリまで行くの迷ってたんじゃないかな……」
実咲、京都だったんだ……。
言ってくれればよかったのに……。




