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 うちには、四畳半の小さな和室があってそこに小さな仏壇がある。

 母さんを祀っている小さな仏壇。

 久しぶりに仏壇を磨いた。

 どれくらいぶりだろう……?

 三郷ちゃんが来始めた頃かな……。

 その三郷ちゃんももう来なくなった。


 三郷ちゃんは妹なんだよ、と、母さんに報告した。

 母さんは複雑なのかな……。

 もしかして、全部わかってたのかな……。

 でもさ、一人っ子だった俺に妹ができた事は素直に嬉しかったんだよ。

 そんな話をしながら磨いた。


 仏壇の引き出しに母さんの形見が何個か入れてある。

 母さんが大事にしていた指輪と、最後に使っていたスマホ、そして母さんからの最後の俺宛の手紙。

 指輪は2つ。

 離婚するまでずっとつけていた結婚指輪と、たぶん婚約指輪。

 母さんは自分の部屋のたんすの奥にそっとしまっていた。

 母さんが亡くなってから見つけ、きっと大事にしてあったんだろうと思い形見にすることにした。

 仏壇横には母さんが最後まで大切にした3冊の本と家族のアルバムを立てかけてある。

 母さんの大切にしていた物でいっぱいだ。


 バタバタ続きて母さんとゆっくり話す事から遠ざかってしまっていた。

 今日は久しぶりにいい時間が過ごせた。


 向こうで大好きな本、ゆっくり読んでるかな……。

 母さん、たまにはそっちから俺を眺めてよ。


 淹れたてのコーヒーを仏壇に供えた。




 あれから、実咲と連絡を取っていない。 気付けばもう二週間くらいになる。

 三郷ちゃんの事も少し落ち着いたし、実咲にまた連絡してみる事にした。



 夕方、ジムへ出かけた。

 久しぶりのジム。

 いつもの顔ぶれ、久しぶりだね、と何人かに声をかけられた。

 遠藤さんもいい汗を流している最中だった。

 久しぶりのランニング、いつもよりゆっくりめに走ったのに疲労度が凄かった……。

 少し休憩しているところに遠藤さんに声をかけられた。


「曽根さん、久しぶりじゃない? どうしたの?」



「そうなんです。 ちょっとバタバタしてて来れなくて……」



「そうなんですね。 もう落ち着いたの?」



「まぁ、何とか……。 何か、びっくりする程の意外な事ってあるもんなんですね……。 自分の人生の中にはないと思ってました……。 きっかけがないと気付かないままだと考えると縁の不思議を感じます……」


 そう言った俺の話をさらっと聞いて話してくれた。



「自分の見えてるものって見えてないところの方が多いんでしょうね。 曽根さんには僕ってどう見えてます?」



「え!? どうですか!? 奥さんがいてお子さんがいて……幸せそうなイメージです。 この前、結婚記念日、お祝いしてましたよね?」



「何年目のお祝いだと思いますか?」



「25年目……くらいですか……?」



「実はね、3年目なんです……! 僕と奥さんは再婚同士。 そしてね、僕はバツ2なんです……」


 ちょっとびっくりした……。


「ね? そんな話をするとみんなびっくりするんです。 僕はね、同じ人と再婚して再度離婚したんです。 その相手が離婚してすぐ病気で亡くなって、で、今の奥さんと三年前に結婚したんです。 どうやら僕は離婚とは程遠く見えるみたいで……でもね、バツ2なんですよ」


 今の奥さんはテニスサークルの仲間だったそうで、もうずいぶん前からの知り合いだったそうだ。

 離婚の理由は【酒】の問題で、結局、元奥さんも酒が引き金で病気になり亡くなってしまった、という事だった。



「縁があって結婚しました。 娘も元々奥さんを知っていたので再婚は案外すんなりできたんです……。 こんな話だと思わなかったでしょ?」



「遠藤さん、そうだったんですね……。 意外過ぎてびっくりです。 けど、幸せそうですよ!」



「幸せですよ! 人から見るところってほんの一部に過ぎないんですよ。 そこだけしか見てないから意外に思えるけど、実際の僕は、二度の離婚に、元奥さんは亡くなっちゃって……、再婚してまだ三年目なんですよ。 僕自身、もう結婚はしないと思ってました。 娘が片付いたら寂しくなるけど、のんびり一人で生きていこうと考えてました。 それがまさかの結婚ですよ……。 縁ってどこでどうなるかわからないですよ。 人と話してみないとわからない事ってたくさんあると思う。 現に、曽根さんと縁があったから自分の事を話したし、僕がバツ2だという事も曽根さんは知った訳でしょ? これも縁の一つですよね。 きっと、みんな同じ様な感覚で生きてるんじゃないかな……」


「その人に巻き起こる事の大きさはその人でないと決めれないけれど……。 またジム通いできる様になったのも一歩前進でしょ? それでいいんじゃないですか? 楽しく僕と一緒にジム通いしましょう!」


 晴れやかに話す遠藤さんの話。

 遠藤さんを自分色の眼鏡で見ていた。

 確かにそうだ。

 二度の離婚は想定外だった。

 けれど、その離婚にもちゃんとした理由がある事を聞けたのは、遠藤さんと縁があったから……。

 これも縁なんだよな……。



 話してみないとわからないか……。

 俺は実咲のどこを見てるんだろう……。

 実咲の全てを知りたい。

 会いたい気持ちに拍車がかかる。

 もっと実咲に会いたくなった。

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