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兄妹

「最初はね、諦めさそうとしてるんだと思った。 お姉ちゃんの元カレで自分のお兄ちゃんだったなんてあり得ない話だから……。 なかなかないよ、こんな話。 元カレという事より兄だったって事の方が衝撃的だった。 よりにもよって兄か……、恋愛を断ち切られた瞬間だったかな……」


「でもさ、これだけなかなかない事が普通に私に巻き起こってるって事は運命でしかないんだろうなって思えてきた。 あの、腕時計の時から始まってたんだよ……。 そう思わない? 曽根さんに会い、曽根さんを好きになったのは、このきっかけに過ぎなかったのかなって思う」


「曽根さんが私に気持ちが傾かなかったのも、きっときょうだいの拒否反応だったのかな……とも思う。 あ、やっぱり兄なんだ……と思える様になったのもここ最近。 少しずつだけど私の止まった時間も動き出した。 お姉ちゃんとも北海道から帰ってきた後、結構話した。 当時、お姉ちゃんの恋愛話聞いてもよくわからなかっただろうけど、今は話を聞いても理解できるし、当時のお姉ちゃんの心境もよくわかる。 16も歳が離れてるから今までこんな話をしてこなかったけど、今回のきっかけでお姉ちゃんの事を知れてよかったかなと思う」


「で、今日で約束の3ヶ月は終わりです。 兄と妹へ形を変える事でいいですよね?」


 三郷ちゃんは晴れ晴れした様子でたくましく見えた。



「三郷ちゃん、ありがとう……」


 俺は感謝の気持ちでいっぱいだった……。

 急にいろんな話を聞かされて気持ちの持って行き様に悩んだだろうし、ほんとに大変だっただろうな……。



「あーー、やっと言えたーー!! 何かすっきり!! 一仕事終えた感じ。 今日から曽根さんは兄ーー。 これから曽根さんはどうするの……?」



「え? どうするって?」



「え? お姉ちゃん。 曽根さんはお姉ちゃんへの気持ちは変わらないんでしょ? お姉ちゃん、話してもはっきりとは言わないけど、たぶん曽根さんの事は忘れてないと思うよ……」



「いや……それはどうかな……? もう遅かったのかなと思う……。 時間が経ち過ぎたのかなって思うよ。 実咲はあんまり俺に会いたがってない気がする……」


 実咲の本当の気持ちは実咲にしかわからない。

 でも、ゆっくり実咲の事を知ろうと決めたんだ……。



「お姉ちゃん、何かあるのかな……? そういえば、私には好きになる資格がないとかそんな事をいつだったか言ってた気がする……。 どういう意味だろう……? 他に気になる人がいる? それは曽根さんだと思うけどなぁ……。 私の手前、言えなかったのかなぁ……? あ、彼はいないみたいよ」



「三郷ちゃん、ありがとう……。 ゆっくり知っていこうと思ってるから大丈夫……。 それで玉砕したら仕方ないよ。 そう思ってる……」


 実咲がこっちを見てるかどうかは関係がなかった。

 ただ、今、実咲がどう感じ、どう思って毎日を過ごしているのかは知りたいと思っていた。

 お互い別々の時間を過ごした二十年。

 俺の都合でそうなってしまった二十年。

 これまでどう生きてきたか、俺は実咲の全てを知りたかった。


「曽根さんってほんとにお姉ちゃんの事が好きなんだね。 なかなかそこまで思ってくれる人、いないと思う。 私ってさ、大好きな二人の妹なんだと思うとちょっと今、嬉しくなった……」


 大好きな二人か……。

 俺にとってありがたい言葉だった。


 一人っ子だった俺に妹ができた……。

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