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約束の3ヶ月

 三郷ちゃんから父さんは連絡があったのは、実咲ちゃんがいなくなって一週間経った頃だった。


 今、北海道にいるらしく、一人で旅行中との事だった。

 本人に連絡がついた事は一安心だが、誰にも何も告げずこんな長い間連絡を断つのは良くない。

 一喝しようと思ったが、まず元気な事と、今、また何か言うと帰ってこなかったりする事があっても……と思い、そういった事は何も言わず、ただ携帯は繋げておいてとお願いし、楽しんで帰って来いと伝えたと父さんは言っていた。


 俺は実咲にすぐ連絡した。

 実咲は安心したらしく泣きながら俺の話を、


 「うん、……うん」


 と、一生懸命あいづちを打ちながら聞いてくれた。



「実咲、いまどこ? 俺、行こうか?」


 傍にいてあげたいという気持ちも本当だが、俺自身が傍にいたいと思った。

 自然と出た言葉だった。



「今、家。 ホッとした……。 司、連絡してくれてありがとう……。 母に連絡しなきゃ……。 三郷に繋がるかな……? 連絡してみる。 私、大丈夫だよ、大丈夫……」



「実咲、また会って話そう……。 実咲が嫌じゃなかったら……」



「前にも言ったでしょ? 嫌じゃないって……。 司、私の話聞いてる?」


 そう言って笑っていた。

 よかった……。 実咲が少し元気になった。



「また……、また会おうね……」


 そう言った言葉に少し力がなくなった気がした。

 さっきまでと違って聞こえるのはどうしてだろう……。




 それからしばらくして三郷ちゃんは無事に帰ってきた。

 帰ってこっ酷くお母さんに怒られたらしい……。

 実咲とも話したらしく、取り乱す様な事もなく普段通り話せたと言っていた。


 帰ったと聞いてからずいぶん経ってからうちにやってきた。


 玄関を開けるといつもと変わらない三郷ちゃんが立っていた。


「おじゃましまーす!」


 元気に部屋へ入って行った。



「あーー、なんだかここ、久しぶりーー!!」


 リビングの窓から外を見ながらそう言っていた。

 今日は快晴。

 いい天気でお出かけ日和だ。


「これ、北海道のお土産です! どうぞーー!」



「ありがとう……。 三郷ちゃん、あの……」



「今日は何の日か知ってますか?」


 急な三郷ちゃんの質問に全くピンと来なかった……。

 何の日だっけ……?



「あ! 曽根さん、やっぱりピンと来てないみたいだね。 今日は約束の3ヶ月の最終日です!」


 俺が提案した3ヶ月、今日か……。

 三郷ちゃんの行方不明の件もあってすっかり忘れてしまっていた。


「そっか……。 今日だったんだね……。 ごめん……」



「それでです。 今日で最後。 最後に話をしようと思ってやってきました。 こんなにいいお天気だけど、どこにも行かずここがいいんです。 ここで最後の話をしたい。 ダメ?」



「ここでよかったら……使ってもらってかまわないよ……」



「じゃあ、とりあえず座りますか!」



「じゃあ、コーヒーいれようかな……」


 最後の話か……。

 三郷ちゃんが話そうとしている事って何だろう……。

 三郷ちゃんが聞きたい事にはちゃんと答えたいと思った。


 今日は普段通りのコーヒーが淹れれた気がする。


 コーヒーを手に席に着く。



「ありがとう!」


 三郷ちゃんはゆっくり一口飲んだ。



「はぁーー。 おいしい……」


 一呼吸し、話し始めた。



「まずは……、急にいなくなりすみません! お騒がせしました……!」



「あ、いえいえ。 でも何より無事でよかった。 父さんに連絡してくれてみんな安心したよ。 実咲、泣いてたよ……」



「お姉ちゃん、優しいから……。 えっと……何から話そうかな……。 まずは私が一人旅に出た理由から……話そうかな……。 それは、やっぱり一人で考えたかったからです。 急に会社にも有休依頼出しました。 何とか申請が下りたので大自然のある北海道に……。 急に決めました。 なぜ、北海道だったか……、大自然に癒されるかなという安易な考えから行き先を決めました!」



「そうだったんだね。 で、大自然はどうだった?」



「最初はほんとに癒されに行こうと思いました。 けどね、ごはんがおいしいの! あ、私ってこんな時でも食べれるんだ!って気付いてからは単純に北海道を楽しもうと思いました……」


 三郷ちゃんらしいエピソードだ……。


「お姉ちゃんから曽根さんとの事も聞きました。 その頃の私はまだ小学生でお姉ちゃんが恋愛をしていた事など全く知りませんでした。 腕時計の話。 まさかあの腕時計をお姉ちゃんと曽根さんが一緒に選んだなんて……びっくりです。 しかも、お父さんが曽根さんのお父さんだったなんて……まさかばっかり……」


 三郷ちゃんの中で少しずつ受け入れてもらってる気がしていた。

 本当の話をしたあの日の三郷ちゃんではなかった。

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