もどかしい
実咲からの返信を待つ自分がいる。
最後にLINEをしてから三日が経った。
俺は居ても立っても居られなくなり、実咲にLINEを入れた。
『実咲、俺、実咲と話したいんだ。
返事がないのはもう話したくないのかな……?』
するとすぐに既読が付いて返信が来た。
『返信しなくてごめん……。
司と話したくない訳じゃないよ。
少し時間が欲しい。
少し待っててもらってもいい?』
やっぱり今頃連絡しても迷惑だったかな。
二十年という時間は長すぎたのかも知れない。
実咲にLINEを送った事を少し後悔した。
その日の夜、三郷ちゃんがやってきた。
いつもの様に元気な三郷ちゃんは、俺の変化にはまだ気付いてなかった。
どう切り出したらいいのか考えていた。
きっかけが掴めない。
「ねぇ、曽根さん。 今週の土曜日、どこか行きたいんですけど。 お出かけしたい!」
悩む……。
「三郷ちゃん、土曜日、少し話さない? 話したい事もあるんだ」
やっぱり話そう……、そう決心した。
「話したい事? 今じゃダメなんですか? じゃあ、お出かけしながら話しますか!」
前向きな話ではない事に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
土曜日までの数日で頭の中を整理しておこうと思った。
ひっかかっている事がクリアできてはいないけど、自分の中で出してしまった答えをなかった事にはもうできなかった。
いつもと変わらない三郷ちゃん。
楽しそうにこの部屋で過ごし、少しでも俺の気持ちが変わる様にと健気に頑張ってくれている事が心苦しかった。
恋愛はもうしない、誰かを好きになる事はない、そう思って生きてきた。
そんな自分を想ってくれて、少しの可能性でもあるならと大切な時間を俺の為に使ってくれていた。
三郷ちゃんは素直でいい子で、一緒にいると楽しいんだろうなと、恋愛をしないと決めてこれまで生きてきた俺でも少しそう思える様になってきていた。
実咲を思い出した事がきっかけでなぜここまで頑なに恋愛はしないと決めたのかを考えた……。
実咲か一人か……。
20年前、心に決めたのは、恋愛をしないのではなく、実咲以外の人とは恋愛をしない、だった。
実咲以外なら一人でいい。
それくらい本気の恋だった。
別れを決めたあの日、その類の事は全て捨てた。
三郷ちゃんが実咲の妹だったからではなく、その以前に三郷ちゃんと恋愛はできなかった……。
実咲と話すか、実咲と話す前に三郷ちゃんに話すかどっちになるんだろう……。
土曜日はすぐにやってきた。
少し待っててと言った実咲から連絡はまだなかった。
昨日の夜から落ち着かない。
今日まで頭の中を整理しておこうと思っていたけれど、何からどう話せばいいか整理し切れていなかった。
「おはようございますー! 下、着きましたよー」
三郷ちゃんから連絡をもらって駐車場まで降りて行く。
こんな時はエレベーターもすぐに来るし、いつもより速度も早く感じる。
エレベーターにも早く言え!と言われている気がする。
下に降りると三郷ちゃんが待っていて、一緒に駐車場まで歩いた。
何から話したらいいんだろう……。
車に乗り込んでからも落ち着かない……。
三郷ちゃんはちゃんと聞いてくれるんだろうか……?
真実を受け入れてもらえるんだろうか……。
そんな事を考えながら車を走らせていると、ちょっと寄って欲しいところがあると言われ、三郷ちゃんに言われた通りの道へ進んで行った。
「あ! ここで停まってもらっていい? すぐ戻るから待ってて」
小さな公園の横に車を停め、ハザードを付けて待っていた。
大きな集合団地が近くにあって三郷ちゃんはそっちの方へ歩き出した。
こんなところあったんだ……。
その場所は全く自分が立ち寄った事がない場所だった。
その集合団地から子供たちが公園へ来て遊び出した。
こんなに近くに公園があると遊ぶ場所にも困らないだろうな……。
遊び出した子供たちを眺めつつ、ふと、三郷ちゃんが歩いて行った先を見た。
遠くてよくは見えないが誰がと話していた。
「……え……?」
三郷ちゃんが話すその相手に、思考が止まった。
自分の鼓動が速くなる……。




