動揺
待って……。
どういう事!?
実咲……一緒に見て回って買ったよね……!?
違うっけ……!?
俺は今、目の前で起こっている現実を記憶のパズルを完成させながら紐付けしなければならなかった。
確か、実咲と一緒にプレゼントを探した。
お父さんにあげるプレゼントを探してて腕時計を見つけたんたよ……。
裏に名前を入れれたからお願いしたけど、美咲の名前じゃなかったから、確か聞いたんだ……、何で入れないの?って……。 実咲は妹の名前しか入れなかった。
妹……。
そうだ……。
確か、歳の離れた妹がいるって言ってた……。
もしかして、三郷ちゃんって実咲の……妹!?
いや……でも……。
腕時計の事は実咲と買った時同じ様な事があったけど……。
確実に違うところが一つだけあった。
でもどうして……?
それがわからない……。
「曽根さん? どうかした?」
「あ、いや……何でも……」
言葉が出ない……。
三郷ちゃんが実咲の妹……?
三郷ちゃんからお姉さんがいる事は聞いていたけど、三郷ちゃんからお姉さんの話はあまり聞いた事がなかった。
もう結婚してたりしてるからあまり話題にならなかったのかな……?
勘違いであって欲しい。
でも……もしかして三郷ちゃんが実咲の妹かも?と思った瞬間、実咲を近くに感じてしまった……。
大切に奥の奥にしまっておいた当時の気持ちの蓋が開いてしまった気がした。
その後の事はあまり覚えてなかった。
隣で三郷ちゃんが何が話してくれていたけれど、全く頭に入ってこない……。
頭の中はひたすら、記憶を辿り、実咲が言ってた事を思い出したりしていた。
実咲、何やってるんだろう……。
元気にしているのかな。
【今】を聞きたい様な、そうでない様な……。
でも、お姉さんって実咲なのか……?
腕時計の事と自分の記憶は合致してしまう。
一つ腑に落ちない事。
それを確認したかった。
あの日以来、記憶を辿る日々を送っていた。
実咲との事は覚えている。
けれど、月日が流れ過ぎていた。
それに、実咲の事は思い出さない様にしていた。
思い出すのに時間がかかってしまう……。
忘れたくないと思っていた実咲と過ごした日々の記憶。
少しずつ、少しずつ思い出す……。
いつもの様に三郷ちゃんがやって来た。
ドライブの日以来、三郷ちゃんにどう接していいかわからなくなっていた。
三郷ちゃんと向き合う為に始めたのに、今は実咲の事ばかり思い出している……。
「ねぇ、三郷ちゃん。 腕時計、渡せた?」
「まだ。 いつ渡しに行こうかなぁ……」
……迷ったけど、やっぱり三郷ちゃんのお姉さんの事を聞いて確かめる事にした。
「三郷ちゃんって今、お母さんと2人で暮らしてるの? お姉さんがいるって言ってなかったっけ?」
「今はお母さんと2人で暮らしてるよ。 お姉ちゃんは市内で一人暮らししてるよ。 老人ホームで働いてるの」
「そうなんだ」
一人暮らしのお姉さんか……。
「お姉さん、結婚してないの?」
「してないの。 お姉ちゃん、私と結構歳、離れてるんだ。 何個上だったっけ……?」
「お姉さん、たまには実家に帰ってくるの?」
「あんまり帰って来ないかな……。 前は帰って来てたけど、いつからかな、あんまり帰って来なくなった」
「そうなんだ。 三郷ちゃんは会ったりしてるの?」
「会ってないかなぁ。 LINEや電話で話すくらいかなーー。 お姉ちゃん、夜勤とかあるし不規則なの。 用事がある時はLINEしてたら夜勤明けとかに返してくれたりする」
「お姉ちゃん、優しいんだよね。 歳が離れてるのもあってか小さい頃から優しかったよ。 あの腕時計もね、お姉ちゃんにお願いして買ってきてもらったの。 それを見たお母さんがね、私が持ってるお金で買える物じゃないのがわかったから、『また【ミサキ】にお金出してもらったでしょ!』って怒られたの」
【ミサキ】という名前……。
そのお姉さんに買ってきてもらった腕時計。
動揺が隠しきれない……。
「……あぁ、あの腕時計……。 お姉さん、【ミサキ】さんっていうんだね。 三郷ちゃんと名前似てるんだね」
「ミサキとミサトだもんね。 けど、ミサキのミの漢字はお姉ちゃんは真実の【実】だし、私は漢数字の【三】でしょ? 何でそこ合わさなかったのって思わない?」
どんどん繋がっていく気がする。
真実を知りたくなっている自分がいる。
気持ちに拍車がかかる……。




