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不思議な関係

 とりあえず3ヶ月しかない、この3ヶ月を有意義に過ごしたい、三郷ちゃんの希望でほぼ毎日俺の家へ来ていた。

 ごはんを作って一緒に食べる時もあれば、プラっと来てテレビを一緒に観て帰ったりする時もあった。


 とにかく一緒にいる時間を作りたいと言っていた。


 金曜日に大きめのバックを持ってやってきた。


「どうしたの? その荷物?」



「今日はお泊まりする」



「え! 泊まるの!?」



「泊まる。 明日はお出かけしよう!」


 そっか……。 こういう事もあるんだ……。

 実家暮らしだったし、泊まるって事が今までなかったから想像できてなかった……。


「俺、ちょっとジム行ってくるね」



「じゃあ、ごはん作って待ってる。 どれくらいで帰ってくるの?」



「2時間くらいかな……?」



「わかった。 じゃあ待ってるね!」


 そう言ってキッチンで何か作り始めた。

 三郷ちゃんは音楽を聴きながら楽しそうに料理を始めた。



「じゃあ、行ってくるね」


 三郷ちゃんを一人残しジムへと向かった。


 今日はいつもより人が少なく、ゆっくりできそうだった。

 さっき三郷ちゃんが泊まると言った事。

 正直困る……。

 けど、そんな事も普通の事なんだよな……。

 想定外過ぎて覚悟ができてなかった。

 その事を忘れたい為にいつもより必死でトレーニングした……。

 ジムでひとしきり汗をかいて休憩しているところへ遠藤さんがやってきた。

 いつもならまだジムにいる時間なのだが今日は早めに帰るらしい。


「どうしたんですか? 今日はいつもより早いですね!」


 遠藤さんに声をかけた。



「そうなんです。 今日はね、結婚記念日でね……、妻とお祝いするんです……」



「え! そうなんですか? おめでとうございます! でも、夫婦でお祝いなんて、仲良いんですね!」



「まぁ、仲は良いのかも知れないね。 けど、娘は友達と遊ぶとかで一緒に祝ってはくれないんですよ。 もう親より友達がいいんでしょうねーー。 当たり前ですけどねーー」



「そうですねーー。 俺もそうでした。 親より友達でしたね……」



「みんなそうですよ……。 僕もそう。 わかっているけど寂しいもんですよ、自分勝手ですけどね……。 曽根さんも父親になるとこの寂しさを味わいますよ!」



「父親かぁ……。 一生独身の様な気もしますけど……」



「曽根さん、まだまだ若い! 諦めるの早いですよ!」


 幸せって遠藤さんみたいな人生を言うのかな。

 結婚何年目なのかはわからないけど、大きくなった娘さんがいるくらいだからある程度の年月は経っているんだろう。

 けど、夫婦で結婚記念日を祝うってほんとに仲良いんだなって思った。

 理想の夫婦なんだろうな……。



 あんまり三郷ちゃんを一人で待たせるのも悪いかなと思い、急いで家へ帰った。


 玄関のドアを開けると、明かりがついていて明るく、いい匂いがした。


「あ! おかえりー!」


 三郷ちゃんが明るく出迎えてくれた。



「一人で大丈夫だった?」



「大丈夫。 曽根さんを待つのも楽しいから。 ごはんできてるから食べよう! 手、洗ってきて」


 三郷ちゃんはキッチンに戻り、テーブルに用意してくれた。


「ハヤシライスにしたけど、よかった?」



「何でも。 作ってもらってありがとう」


 テーブルにはランチョンマットに乗ったハヤシライスとコールスローが置かれた。

 湯気の出るハヤシライス。



「さぁ、食べよう! いただきます!」


 おいしいハヤシライスを食べながら、家庭ってこんな感じなのかな……?と思った。


 こういう事をみんなやってるのかな……。

 少し羨ましくなった……。



 食べながら明日の話を始めた。


「私ね、映画観たいの。 明日映画観ようよ」



「映画? いいよ」



「その後、プラプラしたい」



「いいよ」



「日曜日ね、お父さんと約束があるの。 来る?」



「お父さんと約束? いやいや……、俺はいいよ……」



「だよね……。 じゃあ、終わるのを近くのカフェで待ってて。 お昼、一緒に食べるだけだからそんなに時間かからない。 その後は一緒にいたい」



「じゃあ、待ってるよ……」



「その後、デートね! さ! 片付けしよーっと!」


 三郷ちゃんは楽しそうに片付け始めた。



「あ、俺、洗うよ」


 作ってもらったからそれくらいは……と思った。



「今日は私が洗う。 今度お願いするからソファーでゆっくりしてて!」


 そう言ってささっとやってくれた。


 食器や水の音、キッチンでいろいろやってくれる三郷ちゃんを見ていると、こういうのもアリなのかなと思えてきた。


 三郷ちゃんはいつもポジティブで発想がおもしろい人。

 きっと、一緒にいると退屈しないんだろうな。


 洗い物が終わった三郷ちゃんがソファーで座る俺の横に来た。


「ねぇ、曽根さん? 少しは襲う気になりました?」


 そう言って笑ってみせた。



「なりません……。 三郷ちゃん、ほんとおもしろい事言うねーー」



「いつでも襲って下さいねーー。 待ってますからーー。 3ヶ月の間には襲って下さいねーー」


 この関係を3ヶ月……。

 3ヶ月後、自分はどう変わっているのか、変わらないのか……。

 どちらにしてもお互いに意味のある3ヶ月になるといい……。



 三郷ちゃんにはベッドを使ってもらう事にした。


「一緒じゃないの?」


 そう言われたが、もちろん一緒は良くない……。



「俺はソファーでいいから、三郷ちゃんはベッド使って」



 静まったリビングに一人。


「ふぅ……」


 一息ついたその音だけが広がる。


 変われるのかな……俺……。


 そう思いながらソファーに横になった。


 3ヶ月で自分の中で何か変わるのかな……。

 三郷ちゃんは楽しい子だ。

 一緒にいると和ませてもらえるんだろうな……。

 変わればいいな……と期待する自分もいた。

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