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戸惑い

「何でそんなにマンションを内覧したいの?」


 俺は三郷ちゃんに疑問に思っている事を聞いた。

 どう考えても、47歳の独身男性のマンションなんて見ても大した事ないだろうし、俺自身、おしゃれには程遠い人間だ……。


「ただ見たいから。 ダメですか?」



「いや……、ダメじゃないけど……、楽しくないよ」


 まぁ、見るだけ見たら満足するかな。

 30代の女の子が好きそうな部屋でもないし、間取りやマンションからの眺めを見てみたいんだろうな……。


 隣で終始楽しそうに元気いっぱいの三郷ちゃんを見ると何だか心をくすぐられる感じで笑ってしまう。

 いつもこんなに元気なのかな……?

 歳の違いもあるせいか、俺にはない感じだった。


 エレベーターに乗り5階のボタンを押す。

 ゆっくり静かに上がるエレベーター。


「曽根さんって趣味って何ですか?」


 三郷ちゃんにそう聞かれ、考えてみたものの浮かばない。

 俺って面白みのない人間かな……。



「趣味? これといってないかな……。 前は旅行とか好きだったけど……」



「何でその旅行、辞めちゃったんですか?」



「母が具合を悪くしたのがきっかけでね……」



「またいつでも行けますよ! 行きたいところないんですか?」



「今は考えた事なかったかな……?」



「じゃあ、考えてみたら? 雑誌とか見るときっと行きたくなりますよ!」


 今までとは違う事をしてもいいんだし、雑誌とか買ってみようかなと思った。



「はい。 どうぞ」



「おじゃましまーーす!」



「ね? おしゃれとは程遠いでしょ?」



「物が少なくてすっきりしてるじゃないですか! 何か想像通りでした! 見ちゃいけないとこってあります?」



「いや、ないけど……。 他の部屋、まだ何も置いてなかったりするよ」


 三郷ちゃんはふらふらいろいろ見て回っていた。


「いい眺めーー! いいなぁ、いつもこんな眺め見れるのーー」



「三郷ちゃん、コーヒー飲む? よかったらどうぞ」


 コーヒーを入れ、テーブルに置いた。



「ありがとうございますーー」



「どうですか? 内覧、できました?」



「できました! 曽根さん、素敵なところに住んでますね! また来ていいですか?」



「え! ……いや……かまわないけど……。 でもここじゃなくて他に行った方がいいところはあると思うよ……」



「でも私がまたここに来たいんです!」



「まぁ、また機会があればね……」



「あの、何でマンション見せてくださいって言ったのかわかりますか?」



「え? どんな感じなのか見たかったんでしょ?」



「それもあります。 けど、それが1番の理由じゃないです。 曽根さんに私をもっと知ってもらいたかったんです」


 え? どういう事?


「曽根さん、私の事嫌いですか?」



「いや……嫌いとか好きとか……」



「じゃあ、嫌いじゃないんですよね? 曽根さん、私を女として見てないでしょ? 見て欲しいんです。 絶対私を好きにさせたい。 だからもっと知ってもらいたい。 私、最初に曽根さんに会った時、この人だって思いました。 一瞬で好きになった」


 いや……俺はやめておいた方がいい……。



「三郷ちゃんさ、何で俺なの? 三郷ちゃん、若いんだし俺みたいに歳の差あるやつじゃなくてもいい人いるでしょ……?」


 三郷ちゃんをそんな風に見れない……。

 女というより友達や妹みたいな感じにしか思えなかった。



「歳の差って関係ないでしょ? 私、年上の人がいいの。 父と離れて暮らしてるのもあるのかな? 年上の人に憧れがあるというか……。 昔から年上の人の方が落ち着く」



「ちゃんと言うと、俺、恋愛する気ないんだ……。 この前のイベントは池田に誘われたんだ。 そんなつもりがないのに参加した俺もいけないけど……。 だから三郷ちゃんとは付き合えないかな……。 俺じゃなくても、三郷ちゃんを受け入れてくれる年上の人はたくさんいるよ」


 俺は思っている事を伝えてみた。

 ここで立ち止まるより先に進んだ方がいい……。



「私を嫌いじゃないならまだ可能性はあるでしょ? 私は曽根さんがいいの。 恋愛する気に私がさせてあげる。 だからまた来る。 いいでしょ?」


 三郷ちゃんっておもしろい子だな……。

 元気でポジティブ……。

 友達なら全然楽しいんだけど……。


 三郷ちゃんの俺への猛攻撃が始まった。

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