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愛おしい

 朝、6時半頃目が覚めた。

 実咲はまだ寝てるのかなと思ったらもう起きて窓の外を眺めていた。

 外はパリっとした寒さなのが部屋からもわかる。

 今日も寒そうだ……。

 寒いけど雪でも降っていたら雪化粧の京都も綺麗なんだろうけど……降ってはいない……。


「おはよう。 実咲、起きてたの?」



「あ、おはよう。 起きた? 私もさっき起きたところ。 景色が良くて見入ってた。 もっと明るくなったらもっとよく見えるだろうねーー。 さ! 着替えて用意しよーっと! 司、もう少しゆっくりしてていいよーー」


 しばらくすると服も髪型も化粧も終わった実咲が現れた。

 俺はまだ布団の中でゴロゴロしていた。

 浴衣もはだけたままだ……。


「女の子ってさ、化粧も髪も上手にするね。 髪とかどうやってんの……?」


 よく見ると昨日とピアスも違う。

 女の子って荷物多くなるのわかる気がする……。



「これは簡単だよ。 編んでるだけだから」



「その編むのが凄いよ……。 さ、俺も着替えようかな」


 男の俺は時間がかからない。

 だから女の子って凄いなって思う。

 何もしなくてもかわいいのに、さらに時間をかけてもっとかわいくする。

 俺は同じ事できない……。



「明けましておめでとうございます。 よく眠れましたか? 朝ごはん、ごゆっくりお召し上がりくださいね」



 朝ごはんが運ばれて来た。

 朝ごはんも感動する程おいしくて、実咲は一口食べては感動していた。


 ゆっくりめに旅館を出発して今日は実咲が行くと決めていたお寺と神社へ。


 初詣。

 やっぱり人は多い。

 はぐれない様にぎゅっと手を繋いで少しずつ歩いた。

 お寺も神社も凄い人で人にも酔ってしまった俺たちは近くにあったお茶屋さんで休憩した。


「実咲、大丈夫?」



「ん? 大丈夫だよ。 疲れてそうに見えた?」



「何となく? 大丈夫じゃなかったすぐ言ってよ」



「わかった」


 抹茶と団子のセット。

 抹茶の温かさが体に染みる。


 隣のカップルはパフェを食べていた。

 2人で仲良く食べてる。

 寒くないのかな……。

 でもおいしそうなパフェだった。



「この後、どうする? 実咲の行きたいところは一応行ったんでしょ?」


 まだ14時過ぎ。

 朝ごはんがまだ全然お腹に残ってて、お昼ごはんは食べずにお寺と神社間を移動した。


「お腹もまだそんなに減ってないんでしょ?」



「減ってない……。 今日の夜ごはんがまた楽しみだから少しでもお腹減らせておきたいかな」



「あ! だから抹茶だけだったの?」



「うん……。 抹茶だけでいい」



「じゃあ、旅館まで帰って、旅館の東側の辺りまだ行ってないからそっち散策してみる? お土産とか見たりする? 疲れたら旅館にすぐ帰れるし……」



「そうしよっか!」


 旅館までの道のりを歩いた。

 途中、何もないところもあったけど、実咲と一緒に何でもない話をしながら歩く事だけでも楽しかった。

 今日は昨日より寒さは少しマシな気がした。

 また季節が違えば違った事を感じるんだろうな……。


「今度はさ、春に京都来ようよ。 いつになるかわからいけど……」



「春は桜が見れるといいねーー。 冬の京都は体験できたから、春、夏、秋、体験したいねーー」



「また一つずつ制覇していこっか」


 いろんな京都を満喫する事を想像した。

 まだ知らない京都をどのタイミングでどんな歳でどういう心情で知る事になるのかはわからないけれど、わからないのがまたそれも楽しみの一つなんだろうなと思った。


 夕方まで旅館近くを見て回り、お土産も買えた。


 実咲はある店でかんざしを手に取った。

 いろんなものを手に取ってよく見ていたがその中で、紺の玉が付いたかんざしを他のものより眺めていた気がした。


「実咲、それがいいの?」



「何か、これいいかなと思って……」


 実咲には少し地味に思えた。

 花が付いてるのやガラス玉のもある。



「実咲、花とか付いてないけどそれでいいの?」



「花とか付いてるのもかわいいけど、長く使えないかなと思って……。 これだったらいくつになって付けても変じゃないかなと思って……」


 そういう事だったんだ……。



「じゃあ、それにする? それ、俺、買ってあげるよ。 京都の思い出に」



「え! いいの?」



「いいよ!」



 会計をして実咲にかんざしを渡した。



「ありがとう!!」


 紙袋を大事そうに持ち嬉しそう。

 実咲が嬉しそうなのは俺も嬉しい。


 旅館に戻ると紙袋からかんざしを取り出して手に取りずっと眺めていた。


「せっかくだから付けてみよーっと!」


 浴衣に着替え、さっき買ったかんざしを付けて見せた。


「かわいいね」



「やっぱりこれにしてよかった! 司、ありがとうね! 大事にする」


 実咲はしばらく鏡でそのかんざしを眺めていた。



 今日の夜ごはんも豪華でおいしかった。

 お風呂も気持ちよかったしほんといい2日間。


 実咲は帰る準備をし始めていた。

 自分が持って来ていたものを片付けて、明日朝必要なものだけ部屋の隅に置いた。


 部屋をぐるっと見回し、確認した。


「これで準備できた!」


 今日で京都の旅は終わり。

 いつもよりゆっくりした旅だったけど心も体も癒された感じだった。


「楽しかったーー。 ここの旅館、よかったね! ちょっと高かったけどここにしてよかった! 贅沢したねーー」



「ほんとだねーー。 帰ったら仕事頑張ろ! で、もう今回の旅も終わりですが、今度はどこ行きたい?」


 実咲にいつもの質問を投げかけた。



「今度はね、水族館」



「え? 水族館?」



「水族館を含めたところに行きたい!」



「あ、水族館があるところに旅行って事? 俺、一番に沖縄が浮かんだけど……」



「当たり!」



「じゃあ、沖縄ね!」


 実咲と一緒だったらどこでもいいや。



「ねぇ、実咲……」


 実咲の腕を掴んだ。



「電気、消そっか……」



「……昨日は寝たのに?」


 実咲は笑ってそう言った。



「実咲も寝たでしょ?」



「寝たよ、けど司の後でね……。 あーー、今日はギュッてしてくれないんだーーって思ったよ」



「起こしてくれたらよかったのに」



「それは心の声だよ……。 そんなの口に出して言わない」


 俺はスルッと実咲のかんざしを抜いて渡した。



「はい、……大事なんでしょ? 机に置いてくる?」


 繋いだ手を引っ張り机へ向かいかんざしを置いた。

 俺はそのまま優しく実咲を後ろへ押していく……。



 パチン……



 薄暗くなった部屋。

 同じ部屋なのについさっきまでとは表情の違う部屋になった。

 五感全てが研ぎ澄まされ、その全てが実咲に向かう。

 何度このシチュエーションになっても緊張する。


 抱きしめた腕に力を込め、何度も何度もキスをする。

 柔らかい実咲の唇。



「実咲、ずっと傍に居てよ……」


 どうしようもなく実咲が好きで一時も離れたくないと思った。



「……前にも言ったよ、どこも行かないって……。 何でそんなに不安になるの……?」


 俺を見上げ笑顔でそう言う実咲が愛おしく、愛おし過ぎて壊してしまいそうで怖かった。


 自分が放つ衝動と実咲を大事にしたい気持ちとが入り混じり、優しくしているつもりでも優しくしてあげられてるのかがわからなくなる。

 それ程、実咲が好きだった。

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