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19/72

大切な人との時間

 最近忙しかった仕事も一気に年末に向けその忙しさから解放されつつあった。


 10月あたりから忙しくなり、休み返上で仕事ばかり。

 自社キャンペーンで客先やエンドユーザー向けのイベントを社内で開催したり、客先のイベントの手伝いに行ったり……。

 忙しいけど仕事は楽しかった。


 実咲とも会う時間も少なくて、電話とメールしかできない日も続いたりしていたが、電話するといつも明るかった。

 その明るさに助けられる。



「今日はね、映画観てきた。 この前言ってたやつ、やっぱり気になって……! おもしろかったよ」


 実咲は会えない事に対して何も言わない。

 会えないならその時間を自分時間に使う。

 そして、その時間もちゃんと楽しむ。


 会えないからと泣かれたりすると、それはそれでかわいいんだろうけど、仕事だからどうする事もできない。

 実咲みたいにしてくれてるのは嬉しいし安心だ。



「映画だけ行ったの?」



「映画だけ。 お茶して帰ってきた! 初めて入ったカフェでドキドキした……」



「初めてのとこ? 冒険したねーー。 実咲、行った事ないとこ、なかなか1人で行かないでしょ?」



「珍しいでしょ? そこのね、ミックスジュースがおいしそうだったから……。 でもね、やっぱりすっごいおいしかったよ! 今度一緒に飲みに行こうね!」



「じゃあ、今度連れてって。 で、年末年始の用意してるの?」



「少しずつやってるよ。 京都って寒いよねーー。 荷物、かさ張るねーー。 けど、冬の京都って素敵だろうなぁーー。 楽しみだねーー」



 実咲が行きたいと言った京都。

 今年の年越しは京都の旅館だ。

 2泊3日の京都旅行。

 実咲は行きたいところは既に決まっている。

 けれど、当日まで言ってくれない。

 俺を楽しませたいらしい……。


 今回の旅行も楽しい旅行になります様に……。



 今年のクリスマスは平日。

 明日も仕事だし、京都旅行に年末年始で行く事になっていたので、今年のクリスマスは一緒にイルミネーションを見に行くだけにした。


 綺麗なイルミネーション。

 ずっと見てても飽きなかった。

 周りにはカップルばっかりでお互いにいい距離を取りつつイルミネーションを眺める。


「ねぇ、来年はどこのイルミネーション見に行く?」



「どこがいいかなぁ……。 実咲は行きたいところあるの?」



「特にここってとこはないよ。 でも司とどこかに一緒には行きたいかなーー」


 目の前の綺麗なイルミネーションを見上げる。

 今日は雲ひとつない空。

 暗さに吸い込まれそうな空にたくさんの星。

 今日はイルミネーションと星を一気に楽しめる夜だった。


「さぁ、帰ろっか」



「今日は遠回りして帰ろう。 だってクリスマスだよ」



「じゃあ、そうしよっか!」


 いつもとは違う道へ車を走らせた。

 ゆったりとした時間が流れた実咲とのクリスマス。


 だけど、俺は京都旅行の準備を全然してなくて帰ったらやらなきゃ……と気持ちが焦り気味だった……。




 年末、京都。

 実咲が行きたかった京都。

 やっぱり冬の京都は寒い。


 旅館に着いて部屋に通された。


「広いーー。 すっごいいい眺めーー。 気持ちいいねーー! ここでごはん食べれるの嬉しいねーー!」


 ほんとにいい部屋だった。


「準備できたら散策する?」



「うん」


 冬の京都は寒いけどやはり俺たちみたいな観光客も多い。

 実咲はどうしても行きたいところに行く以外は旅館でのんびりしたいらしい。


 今日は旅館近くを少し散策。

 石畳の道、緩い坂道、石の階段……、確かに紅葉も終わって緑が寂しい感じになっているけれど、やっぱり目に入るものはそれ以外もやはり京都らしいものだった。

 歩くだけでも楽しめる。


 年末だから閉まっている店もあった。

 その中でも開けてある店を見つけて入ってみたりした。


 少し歩くとお寺に着いた。

 やはり人はたくさん集まっていた。

 外国の人も多い。

 お寺は大晦日や元旦の準備で忙しそうだった。


 ゆっくりお寺の中を見て回る。

 俺も実咲もお寺や神社、仏像が好きだった。


「贅沢なデートだよねーー」


 そう言って、ゆっくり見て回った。


 辺りが薄暗くなるのも早いので旅館に帰りながら散策した。


「何かこのゆっくりした時間を過ごすのっていいねー。 せっかく旅行に来たんだし……って思いっきり予定を詰め込むのも楽しいけど、今日みたいにのんびりもいいな。 司だからのんびりの旅行も楽しめるんだろうねーー」



「俺?」



「司、のんびりでも大丈夫な人でしょ? それに私に合わせてくれるし。 帰ったらおいしいごはんが待ってる! 旅館でゆっくりしよう!」



 冷え切った体で旅館に着いた。

 旅館が天国みたいにあったかかった。


 部屋に戻って浴衣に着替えた。


「はいどうぞ」


 実咲がお茶をいれてくれた。

 あったかいお茶が体の中を通っていくのがわかる。

 実咲も浴衣に着替え一緒にお茶を飲む。


「幸せーー」


 湯呑みに入ったお茶を大事そうに飲む姿がかわいかった。



 しばらくして部屋に料理が運ばれてきた。

 豪華な料理……彩りも鮮やかで凄い。

 実咲もおいしそうに食べていた。

 あれこれ言いながら、明日はどうする?とかいろんな事を話しながらゆっくり食べれて大満足だった。


 お風呂にも入り、もうすぐ年越し。

 時計を見ながらその時を待つ。


 時計が12時を指した。


「あ! 明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」



 お互いに年明けの挨拶。



 ゴーーン…… ゴーーン……



 遠くで鐘の音が鳴り始めた。

 鐘の音を聞きながらゆっくり新年を迎える。

 普通に生活しててこんな事ってなかなかできない。


「何かいいね。 鐘の音が聞こえるの」



「ほんとだねーー。 京都に来てよかったね」



「明日の朝も部屋でごはんでしょ? 早く寝とこうか?」



「寝起きは恥ずかしいよね。 待つぐらいにしといた方がいいかな……」


 布団に入り手を繋いだ。

 遠くで聞こえる鐘の音が心地よかった。

 『ひつじが1匹……』みたいにいつの間にか寝てしまっていた。

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