楽しい一日
次の週末はすぐにやって来た。
先週と同じ駅前のコンビニで待ち合わせ。
コンビニに行くと窓川さんはもう着いていた。
「ごめん! 待った?」
「全然!」
「腕時計、取りに行った? まだなら一緒に行くよ」
「あ、取ってきた!」
そう言って手提げの紙袋を見せてくれた。
「じゃあ、行きますか!」
「で、どこへ?」
駅前のコンビニから歩いて5分くらいのその場所は俺が大学時代に伊藤や池田とよく来たとこだった。
「あーー、もしかして、ここ?」
目の前にスポーツアトラクション施設が見えてきた。
ここでめいいっぱい汗をかきたかったのだ。
「そう! 付き合ってくれる?」
「いいよ!」
こんなとこ、汗もかくし嫌かな……と不安だったけど付き合ってくれるみたいで安心した。
フロントで代金を支払い、スイッチが入った。
大学卒業してから来てない。
2、3年ぶりかな……。
でも今日は相手が女の子。
無茶はできない。
窓川さんでも楽しめそうなものを選んで始めてみた。
3時間ほど、いろんな事をして楽しんだ。
卓球したり、トランポリンしたり、キャッチボールしたり……。
窓川さんは嫌がらず全部付き合ってくれた。
途中、休憩した時も、
「次は何したいの?」
「あんまり時間もないから考えながらやらなきゃね!」
そう言って、最後まで俺に付き合ってくれる気でいてくれたみたいだ。
汗をかいてたくさん笑ったそんな時間はあっという間で3時間ってゆっくり楽しめそうで意外とそうでもなかった。
最後まで付き合ってくれて、ずっと楽しそうに笑っててくれてよかった。
店舗下にある喫茶店に入った。
何度もこの上のスポーツアトラクション施設には来たけど、ここに入るのは初めてだった。
外から見た感じ、しっとり静かにお茶を飲んだりする喫茶店なのかなと思っていたが、入ってみると案外そうでもなかった。
食器の音、雑談する声、結構賑やかだった。
「あーー、楽しかった! 今日パンツで来てよかった!」
「あ、そっか! 女の子はスカートかも知れないもんね。 気が付かなかった! ごめん! でも、楽しかったみたいでよかった。 俺も2、3年ぶりかな? 大学の時友達とよく来てたんだ」
「そうなんだーー。 トランポリンが一番楽しかったかなーー。 なかなかトランポリンってできないでしょ? あれ、結構飛ぶね! おもしろかったーー!」
「窓川さんってもしかしてジェットコースターとか好きなの?」
「私、大好きなんだよ。 曽根くんは?」
「俺も好きだよ」
「おもしろいよねーー」
じゃあ、今度遊園地行こう……までは言いたくても言えなかった……。
「曽根くんは大学の時、彼女はいたの?」
「あ、彼女? いたよ。 けど、振られちゃったけどねーー。 窓川さんは彼はいたの?」
「少しだけ付き合った人はいたけど、自然消滅? 違う大学の人だったから頻繁にも会ってなかったから……。 連絡先も消しちゃったし、今どうしてるかも知らないの」
「向こうはまだ付き合ってるつもりだったりして……」
「あーー、それはないないーー!! 大学2年の時の話だよーー。 ないよーー」
「あ、連絡先と言えばさ、曽根くんの携帯聞いてなかったの、教えてもらってもいいのかな?」
今日俺から聞こうと思ってた事を窓川さんが言ってくれたけど、急過ぎてポケットから出そうと思ったら携帯を焦って落としてしまった……。
「大丈夫……?」
「あ、ごめん……。 大丈夫! 俺も聞こうと思ってたんだ……」
画面を見ながら携帯番号を打つ。
緊張で手が震えてるのをバレない様にしたかった。
何とか間違わず打って鳴らしてみると、目の前で窓川さんの携帯が鳴った。
「あ、これだね! またショートメールでメール送るね」
このやりとりが楽しい……。
携帯で繋がった嬉しさとまたメールを教えてくれるという楽しみとで込み上げる嬉しさを隠しきれなかった。
「あのさ、突然こんな事言ったら困るかも知れないけど……付き合ってくれない?」
俺は急に言いたくなった。
周りは賑やかなはずなのに、音がサッと消えて無音になった気がしていた。
「どこに?」
窓川さんは完全にこの後の事と勘違いしていた。
「あ、いや、そうじゃなくて……彼女の方……」
「……え!」
窓川さんはキョトンとしていた。
少し考えてアイスコーヒーをそっと飲み始めた。
あーー、やっぱり今、言うんじゃなかったかな……。
やっぱり、突然こんな事、言ったらびっくりするよねーー……。
ちょっと後悔し始めていた時、
「でも……ほんとに私でいいの……?」
窓川さんは笑ってそう言ってくれた。
「ぜひ!」
「びっくりしたけど、曽根くんにそう言ってもらえて嬉しいな……。 じゃあ、今日は初デートだね!」
今日は1番ドキドキしたし、1番嬉しい日になった。




