チョコレート
定時過ぎて会社に戻った俺は、窓川さんを探した。
定時過ぎてるし帰ってしまったかな……と思っていたら給湯室でコップを洗っている最中だった。
「窓川さん」
「あ、お疲れさまです。 今、帰ってきたんですか?」
「窓川さん、これ……」
渡したものは朝気付いたチョコレート店のチョコレート。
お昼時にそのお店あたりで休憩に入ったので立ち寄ってみた。
そんなに混んでなかったので、ラッキーな事に時間を待たずして買う事ができた。
「ネクタイのお礼。 傘貸しただけなのにネクタイ貰っちゃったから……。 言ってたチョコレートのお店ってここ?」
窓川さんはびっくりした顔をしていたが笑ってこう言った。
「違うーー」
俺は間違いないと思っていたので違うと言われた事にびっくりしてしまった。
「え! 違うの!?」
「ここもチョコレートのお店だけど、私が行ったのは先週オープンしたお店だったの。 あ、でもここのお店もまだ新しいですよ!」
「ごめん! ここだと思ってた……」
「これを私に? いいんですか? ここのチョコレート、まだ食べた事ないの。 だから嬉しいです……」
「ここだと思ってた! 今日朝たまたま気付いたんだ。 あ、この店なのかな……?って思い込んでたよ。 チョコレートの店ってまだあるんだね」
「もう一つあるんですよ。 私が行った所は大きい道路から1本奥に入ったとこにあるんです。 このチョコレート、味わって食べますね。 曽根くんも自分の分、買いました?」
「え? 俺のは買ってないよ」
「え? 買ってないの? チョコレート、好きなんじゃないんですか?」
「あ、まぁ好きだけど……自分の分まで買う程スイーツ男子じゃないから……」
「じゃあ、一緒に食べよう!」
「え? 一緒に? 窓川さんが食べればいいよ!」
「今日はまだ仕事残ってるんですか?」
「今日は営業日誌書いて、メールチェックして終わりだけど……」
「じゃあ、せっかくだから一緒に食べよう。 私だけいい思いするのも悪いから……」
何となくその提案に乗ってしまった俺は駐車場で窓川さんに待ってもらう事にした。
俺は仕事を急いで終わらせ会社を出た。
途中、自販機でブラックのコーヒーを買って駐車場へ急いだ。
窓川さんは車の中で待っていた。
コンコン
窓をノックした。
「お疲れさま。 意外と早かったですね。 どうします?」
「とりあえず、ここからは移動しなきゃいけないよね? どうしよっかー?」
「じゃあ、中央公園に移動はどうですか? 駐車場もあるしベンチあるからそこはどうですか?」
車で5分くらいのその公園へ行く事にした。
辺りはまだ明るく、暑くもなく寒くもなく過ごしやすい。
公園にはまだ少し人がいて楽しそうな声が聞こえる。
日が落ちるまで1時間くらいかな……。
ベンチに座りさっき買ったコーヒーを渡そうとバックに手を伸ばした。
「はい、これ! ブラックだけど飲める?」
そう言うと、窓川さんは笑って自分のバックからブラックのコーヒーを取り出した。
「もしかして、あの自販機で買った? 私も買ってきた。 しかも同じもの!」
同じコーヒーが4本並んだ。
「こんなにも飲めないですねーー。 せっかくだから、曽根くんが買ってきてくれたの貰っていい?」
「じゃあ、俺も……」
同じコーヒーを買ってきた事にびっくりして笑った。
窓川さんがチョコレートを差し出してくれた。
「いただきます! ……あ、これおいしい……」
やっぱりチョコレート専門店ってだけある!
当たり前だけどおいしかった。
「ほんとだ! おいしいね! 曽根くんに感謝だ!」
口いっぱい頬張る窓川さんは本当に幸せそうで、違ったチョコレート店だったけど、買ってよかったと思った。
「窓川さんって幸せそうに食べるね。 見てて気持ちいいよね」
「そうですか? でもほんとにおいしいから」
辺りがさっきより薄暗くなってきた。
さっきまでいた子供たちも少しずつ帰り始めていた。
この窓川さんとの時間ももう終わる事に少し寂しさをコーヒーを飲みながらひしひしと感じていた。




