きっかけ
月曜日は何だか身体がだるい……。
この週末は母の断捨離の手伝いをしたくらいで何もしていない。
なのにだるい……。
会社まで向かう車の中で段々とそのだるさはなくなり、会社に着いた頃はシャキッとしているのがいつもの感じ。
片道1時間くらいの道のり。
車の中の1人の空間、音楽を聴きながらリラックスしてるんだろうな。
駐車場に着いたら窓川さんがいた。
「おはようございます。 これ、借りてた傘。 ありがとう。 助かった。 あと、これ……」
そう言って手提げの紙袋を渡された。
「傘のお礼。 大したもんじゃないけど……」
「え! そんないいよ!」
「いやいや! 私、ほんと助かったから。 返されても困る……」
「じゃあ……お言葉に甘えて……。 逆にありがとう。 気を遣わせてしまったね……」
窓川さんと一緒に会社まで歩き出した。
「これってロッカーに置いておいても大丈夫? あ、聞いてよかった?」
中身が食べ物だったりすると保存方法も変わるかなと思って聞いてみた。
「あ、それ、ネクタイ。 土曜日に買い物に行ったんだけど、よさそうなのを見つけたから……。 返されても困るでしょ?」
「あ、ネクタイ! ほんとだね、使わないよね……。 でもネクタイなんてもらっていいの?」
「どうぞ、どうぞ! よかったらつけてみて。 気に入らなかったら無理にしないでいいからねーー」
「いやいや、つける、つける! ちょうど新しいの欲しかったし!」
傘を貸しただけなのに申し訳ないな……。
そう思った。
「買い物に行ったって何を買いに行ったの?」
「特にこれっていうのはないんだけど……服とか見たかったかな。 結局買わなかったんだけどね。 チョコレートのお店できたの知ってる? そこ、外から見てきた」
「外から?」
「そうそう。 ちょうどお客さんがきれてて誰もいなかったの……。 入る勇気もなくて外から……。 チョコレート、おいしそうだったよーー。 曽根くん、チョコレート好き?」
「チョコレート……まぁ、好きかな」
「いい匂いしてたよーー」
あの外からしか見ていないチョコレートの店の事を思い出して楽しそうに話してくれた。
やっぱり窓川さんって、些細な事でも楽しめる人なんだなって思った。
会社に着きロッカールームに入る手前で木村さんに声をかけられた。
「曽根くん、おはよう。 何やら朝から楽しそうだねーー」
ん? 何の事?
「ん? 何?」
「その紙袋だよーー」
ニヤニヤして指差した。
「あーー、これ? 金曜日、傘を貸したお礼で貰ったんだけど……。 え? 貰ったの見てたの!?」
「あら! 私も駐車場にいましたけど……気付かないほど??」
全然気付かなかった……。
「木村さん……、気を消してたんだね……。 その能力凄いわ……。 全然気付かなかった!」
「そんな能力ないよ! さぁ、今日も仕事頑張ろうっと!!」
そう笑って木村さんは事務所に入って行った。
営業車に戻ってきた傘を置き、俺は会社を出発した。
車を走らせながら、チョコレートの店ってどこだろう?と、ふと思った。
信号待ちで何となく外を見ていて、少し前に外装工事をしているところがあった事を思い出した。
もう少し走らせたとこだった様な……。
車を走らせ見てみると思っていた店舗はおしゃれな外観のお店に変わっていた。
よく通る道。
今まで気にも留めなかった。
見つけて見てみるとチョコレートの店っぽかった。
ここかな……。
まだオープンしてなかったが、店の前で写真を撮る人がいたり今注目してる店だとわかった。
その店を通り過ぎ、目的地へと急いだ。




