第百三十三話:馬を作りたい
とりあえず、いつでも出発できるよう準備をしておくように伝えて、城を後にした。
ルシエルさんは不思議そうな顔をしていたけど、私なら何とかしてくれると思ったのか、最後には満面の笑みで送り出してくれた。
さて、ここまで期待させたからにはちゃんと期待に応えないといけないね。
「それで、何をする気なんです?」
「馬を作ろうかと思って」
現在は、転移魔法で竜の谷まで移動してきた。
別に家の庭でもいいんだけど、使うものがものだから多少場所を考えた方がいいと思って、ここまで来たわけである。
〈馬を作るだぁ?〉
「ホムラ、なんでここにいるんですか」
〈別にいいだろ。ハクが来たからには出迎えないとな〉
「仕事しなさい」
竜の谷に来たからか、いつものようにホムラが出迎えてくれた。
ついでだから一緒に来てもらったけど、エルは少し不服そうである。
まあ、それはいい。今は、馬を作るという話だ。
まず、この世界にはゴーレムと言う魔物が存在する。
正確には、魔物として存在するゴーレムと、錬金術師達によって作られたゴーレムの二種類が存在する。
ゴーレムが動く原理は、核となる魔石が周囲の魔力の影響を受けて意志を持ち、近くにある石などの素材を巻き込んで体を形成し、動き出すという話である。
錬金術師達が作るゴーレムもほぼ同じ過程を踏んで作り出されるため、割と構造は単純なのだ。
で、ゴーレムと言えば基本的には人型なのだけど、別に人型にこだわる必要はない。その気になれば、犬型だろうが猫型だろうが何だって作れるはずなのである。
ここまで言えばもうわかるだろう。要は、馬型のゴーレムを作り出そうという話だ。
「なるほど。確かに、ゴーレムであれば、疲れることはないでしょうね」
〈だが、ハクは錬金術使えないだろ? どうやって作るんだ?〉
「それは、これを使うんだよ」
そう言って取り出したのは、以前ホムラが見つけてくれたダンジョンで大量に採取した神金属、アダマンタイトである。
アダマンタイトに関しては、そこまで使い道が見つかっていなかった。
不変の硬さと魔法耐性は魅力ではあるが、その分重いし、魔力がびっちり詰まっているせいで魔力の流れがなく、魔力伝導率が限りなく悪い。
熔ける温度も相当高く、これを加工するくらいだったら、ミスリルを加工した方がよっぽど効率的だろう。
一応、いくつか武器を作ってお姉ちゃん達に渡したりもしたけど、まあそんな使われないことは目に見えていた。
しかし、今こそこれを使う場面じゃないだろうか?
〈アダマンタイトで作るのか。相当豪華だな〉
「しかし、アダマンタイトではうまく魔力が流れないのではなかったですか?」
「そう、アダマンタイトは詰まってる魔力が膨大過ぎて、ほとんど動きがなかった。けど、よくよく考えると、これって魔力じゃなくて、神力なんじゃないかなって思うんだよ」
元々、神金属は、神の世界にあったから神金属と呼ばれているのである。
当然だけど、神様が持っているのは魔力ではなく神力だ。であるなら、このアダマンタイトに詰まっているものも、神力である可能性が高いだろう。
あの時は、まだ神力というものを理解していなかったけど、今考えれば、これだけ濃い魔力が詰まっているのも納得できる。
〈ああ、今のハクなら神力も余裕で操れるのか〉
「うん。だから、その応用でどうにかできないかなって」
もちろん、神力を操れるとは言っても、アダマンタイトをこねくり回して馬のようにできるわけじゃない。
そのあたりは、どうにかして加工して、馬のような形にする必要があるけど、核を作成するくらいはできるんじゃないかと思う。
「確かに、それならハクお嬢様でもアダマンタイトのゴーレムは作れそうですね」
「でしょ?」
「しかし、それはミスリルなどで作っても変わらないのでは?」
「うっ……」
な、なかなか痛いところをついてくる。
確かに、アダマンタイトで作る必要は全くない。強度と言う面で見れば、ミスリルだって十分な硬さを誇るだろう。
むしろ、アダマンタイトは固すぎてうまく関節が動くかわからないし、そんな精巧な馬型に加工するのはかなりの難作業だと思う。
でも、でもさ、使ってみたいじゃん! 今まで全くいいところがなかったアダマンタイトも使ってあげたいじゃん!
〈ばーか、アダマンタイトで作るから面白いんだろ? 何事にもロマンは必要だぜ?〉
「そ、そうですね、ロマンは大事です」
私の落ち込みように気づいたのか、エルが慌ててフォローしてくる。
まあ、一応ミスリルよりもアダマンタイトが優れている部分もなくはない。
と言うのも、私は生粋の錬金術師と言うわけではない。
ゴーレムの作り方やポーションの作り方など、ある程度は知っているが、その製法を正しく知っているわけじゃない。
だから、扱うのが理解の深い神力ではなく、魔力だった場合はうまく核にならない可能性がある。
もちろん、だったら元々錬金術師の人に頼めばいいって話ではあるんだけど、私だってたまには目新しいものに手を出したい。
大丈夫、これでダメだったらちゃんと錬金術師の人に頼むから。
「こほん……では、まずは加工ですか?」
「そうだね。ああいうのって、鋳型でやるのかな?」
〈大抵はそうだな。もしくは核だけ作って、後は自然に意思を持つのを待つか〉
「そんなことしたら敵対しない?」
〈たまにするらしいな。まあ、詳しいことは知らんが〉
ゴーレムづくりも意外と奥が深そうだ。
さて、加工に関してはどうしようもないので、素直に竜人達に頼むことにする。
完全に専用の型になるだろうから、もしかしたら時間がかかるかもしれないけど、竜人達の技術力ならそこまで大きく時間はかからないだろう。
その時点で躓かないといいんだけど。何とかすると言って置いて、結局ごり押しになったら悲しい。
〈よし、じゃあ頼みに行くか!〉
「まあ、竜人達なら快く協力してくれるでしょう。できるまでの間は、ハーフニル様に会って行かれますか?」
「うん。せっかく来たしね」
まだ努力で何とか出来るかもしれないとはいえ、神力のことも相談したいし、お父さんとはどのみち近いうちに会う予定だった。
ちょっと予定が前倒しになるけど、まあ問題ないだろう。
「うまくできるといいなぁ」
もし、これでアダマンタイトが役立たずだとわかったら、こんなに集めている意味もなくなってきてしまう。
と言うか、他にもヒヒイロカネだってあるんだし、少しくらい使い道を模索していきたいところだ。
別に、私は武器とかはそこまでいらないけど、お姉ちゃんとかお兄ちゃんとかにはいい武器を持ってほしいと思うし、いざと言う時が来るかもしれないしね。
そんなことを考えつつ、私は竜人達のいる里へと向かうことにした。




