第四百八十八話:エキシビションマッチ、VSアリシア2
引きは……ようやく来てくれたかと言った感じだった。
このデッキはほとんどの召喚方法を復活に頼っているので復活系が引けないとかなり苦しい。逆に、復活系が引ければ相当強いので、一長一短ではあるけれど。
「私は支援魔法【ウィンドカッター】を発動、その罠を破壊するよ」
「む、それは残念」
仕掛けられていたのは……【猛毒の落とし穴】か。
召喚に反応して発動する罠で、召喚された召喚獣を浄化する能力を持っている。
浄化と言うのは、冥界でもない場所である浄化ゾーンと言う場所に送られることで、特殊な方法がないと復活できない場所のことを言う。
ただ破壊されるだけなら冥界が肥えるのでまだいいのだが、これをやられると冥界も肥えないし、何のメリットもないから面倒くさい。
【ウィンドカッター】は二枚まで破壊できるから、本当はもう一枚罠が仕掛けられるまで待とうと思っていたけど、使ってしまってよかった。
「そして、支援魔法【輪廻転生の杯】を発動、冥界から【ドラグーン・スペリオル】を復活、さらにスペリオルの特殊能力で【ドラグーン・アーハン】を復活、アーハンの特殊能力を発動、スペリオルを冥界送りにしてスペリオルを復活、スペリオルの特殊能力を再発動させ、【ドラグーン・レヴァテイン】を復活、レヴァテインの特殊能力で【ドラグーン・ライダ】を武具として装備する」
「うわ、いつものコンボだけど、やっぱりえぐいわね」
たった一枚カードを使うだけで最上級召喚獣が三体も並ぶのだからぶっ飛んでると言えよう。その分手札に来てしまった時が大変なのだが。
これ、もし罠を破壊できていなかったら詰んでたかもしれないね。危ないところだった。
「それじゃあ、レヴァテインでグランティを、他の二体でライティとルーティを攻撃するね」
「受けるしかないわね」
あっという間に盤面がひっくり返る。これも『サモナーズウォー』の怖いところだ。
だから、ここで油断してはいけない。なぜなら、アリシアもまたこの盤面をひっくり返せる手段を持っているかもしれないからだ。
と言うか、絶対に持っている。すでに冥界の【ホーリーナイト】は八種類。あのカードの召喚条件が揃ってしまっている。
次のターンでアリシアの手札は七枚。十分抱えている可能性はある。
「これでターン終了だよ」
「では、私のターン。ふふ、ここまで順調なのは初めてかもしれないわね」
「やっぱり、あれ持ってる?」
「当然。……でも、その前に少し工夫しないといけませんわね」
私の場にいるレヴァテインに装備されているライダは場から冥界に送られた時に自分の場の召喚獣すべてを破壊して冥界から召喚獣一体を復活させる能力を持つ。なので、普通に処理してもレヴァテインだけはまた復活してしまうので意味がないのだ。
ミーシャ戦では相手のテキストの確認不足で事が済んだが、アリシアは当然そのコンボも知っている。そして、私の冥界にはまだ二枚目のレヴァテインがいないので、このコンボがまだ不完全であることも知っている。
脳死でカードを出してくれれば一番楽だけど、それはそれで面白くないのでこうして考えてくれる方が嬉しい。
「私は【ホーリーナイト・ライティ】を召喚。特殊能力を発動、冥界に【ホーリーナイト】が三種類以上存在する時、相手の場の罠を一枚破壊できる。よって、武具となっているライダを破壊ですわ」
「やっぱりそう来るかぁ」
罠、と呼んではいるが、正確には罠ゾーンに置かれているカードのことはすべて罠と呼ぶというだけだ。なので、場に残り続ける設置支援魔法や武具支援魔法も罠と呼ぶ。これに当てはまらないのは、専用の地形ゾーンが存在する地形支援魔法だけだ。
よって、武具支援魔法と同じ扱いをしているライダは破壊の対象となってしまう。そして、場から冥界に行ってしまったのでライダの能力が強制発動し、私の場の召喚獣は全滅。代わりに冥界から召喚獣が一体復活することになるが、現在の私の冥界に上級召喚獣はいない。
つまり、アリシアはカード一枚で私のカードを四枚処理したことになる。かなりのアドバンテージだ。
初見には強いレヴァテインライダだけど、やっぱりこういう事故があるから怖いよね。
「ライダの特殊能力が発動。私の場の召喚獣をすべて破壊し、冥界から【ドラグーン・コウライ】を守備状態で復活させるよ。そしてコウライの特殊能力でデッキから【ドラグーン】カードを一枚冥界送りにする」
しっかり冥界が揃っていれば避けられた事態ではあるけど、まあ手札がそこまでよくなかったのだから仕方がない。
せめて次の展開に繋げられるように、ここはコウライの方を復活させて冥界を肥やしておく。
ただ、アリシアの手札が残り六枚。さっきの口ぶりからあのカードが一枚あるのは確定として、さらに復活系があったらやばいんだよな。
生き残れることを祈るしかない。
「では、切り札を出させていただきますわ。冥界に【ホーリーナイト】が七種類以上存在する時、このカードは手札から特殊召喚できる。来い、【ホーリーナイトドラゴン・リヒティ】!」
【ホーリーナイト】は人間の騎士をモチーフにしたテーマではあるが、彼らが崇めるのは守護者である竜であるという設定がある。
これは別に私が竜だから竜を崇めさせようと思っていたわけではなく、前世で存在していた時からこういう設定である。
【ホーリーナイト】達はリヒティの裁定の下、正義を執行する正義の騎士。その親玉がどういう特殊能力を持っているかと言うと、まあ結構なぶっ壊れである。
「リヒティの特殊能力を発動、ライフを支払うことで、このカード以外の場のカードをすべて破壊する」
「うーん、使うかぁ」
そう、これこそが理不尽と呼ばれる所以である。
高い攻撃力があるだけでも強いのに、さらにライフさえ払えば何度でも全破壊を繰り出せるという強さ。
単純にこの能力を発動して全破壊した後に攻撃するだけでも相手のライフを三割ほど削ることができる。
しかも、怖いのはこれだけではない。
「さらに、手札からもう一枚のリヒティを特殊召喚するわ」
「やっぱり持ってるよね……」
そう、この召喚獣は通常の方法での召喚はできないが、先に言った冥界に【ホーリーナイト】が七種類以上存在する時に手札から特殊召喚できるという能力がある。そして、リヒティ自身は場に一体しか存在できないなどの制限はないため、全破壊してからさらに特殊召喚することでさらに制圧力を上げることができるわけだ。
召喚自体はさっきしていたから、さらに召喚獣を召喚しての追撃はないけど、これを全部食らうと私のライフは残り三割ほどになってしまう。
もちろん、リヒティの能力はライフがある限り何度でも使えるので、次のターンで壁を用意したところで無駄。破壊耐性を持つ召喚獣を用意するか、あるいはライフを払えないくらい削るか、二体とも処理するかのどれかをしないといけない。
「二体で直接攻撃よ」
「うん、受けるよ」
「さらに罠を一枚仕掛けてこれでターン終了。リヒティ二体の特殊能力で、デッキトップからそれぞれ四枚冥界送りにするわね」
さて、後はなくなった。
今の私の手札にあの二体を倒せるカードはない。次の引きで何かを引かないと、負けが確定する。
絶体絶命の状況ではあるけど、私は今凄く楽しいと感じている。
前世では、就職してからはご無沙汰となっていた『サモナーズウォー』だけど、こんなにも楽しいものだとは思っていなかった。
ただ、暇つぶしのためだけに作ったこのゲームではあるけど、こうして心が高揚する場面が作れただけでも作った価値があると言うものだ。
ここで負けても悔いはない。私は晴れ晴れとした気持ちでカードを引いた。
感想ありがとうございます。




