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相手の気持ちなんて関係ない

 「お前、ちゃんと仕事しろよ! 相談者の顔見た途端ガッカリすんな! はい、次!」

 あれから一週間。翔からの連絡は、まだない。


 「……あの、はじめまして……」

 あれ? スカイプじゃない。電話からの直通だ。おじさんの声。

 「こんばんは。今日はどうされましたか?」

 「ここで、相談に乗ってくださると聞いたものですから……」

 「はい、お聞きします」

 「……実は、昔、別れてしまった息子に会いたいんです。でも、何の当てもなくてね。それに、今更私なんかが息子を探して良いものか、悩んでしまいまして……。親切な人に、ここに電話をすると良いと伺ったんです。」

 「そうですか。息子さんとはどのくらい会っていないんですか? あと、あなたのお名前と息子さんのお名前、そしてそれぞれの生年月日を教えてください。何か、ヒントが得られるかもしれません」

 「もうかれこれ24年ほど会っておりません。私の名前は、瀬尾誠治。生まれは1956年12月8日です。」

 「なるほど。いて座で支配星は太陽。あなたはかなりの野心家ですね。情熱的で、これだって思ったら一直線。若い頃はだいぶ無茶もしましたね。でも、その情熱が功を奏して、今はご自身の事業が成功し、社会的地位と生活の安定を手に入れた。24年前は、1992年。あなたはちょうど、大きな責任を負う年だったかと思います」

 「……、はは、そんなことまでわかってしまうんですね。はい、私はその責任に耐えきれず、家族を捨てたんです。今思えば、なんでそんなこと……。でもそれからね、一人になって、ありきたりな話ですが、家族の大切さがわかった。そして、この年になってやっと、やっと、息子に会っても恥ずかしくない自分になれたと思うんです」

 瀬尾の声は震えていた。

 「……でも、息子は、今更私に会いたいだろうか? そう考えると、ね……」

 「……会いたいですよ」

 「え?」

 「あ、いや、息子さんが会いたいか、会いたくないかなんて、関係ありません。あなたの人生の答えを持っているのはあなただけです。あなたが決断すれば、それでいいんです。あの、息子さんの生年月日は?」

 「……そうでしたね、息子の名前は、常磐健治、あ、離縁した妻の旧姓です。生年月日は1982年の4月14日です。」

 「ありがとうございます。……息子さんは今年、過去を精算して、未来を見つめる年です。自分にとって必要なものと、必要でないものを振り分ける。そして、来年は新たな始まりの年です。過去を振り返ることはないでしょう。瀬尾さん、これまで努力してきたんでしょう? そうであれば、息子さんに会うべき時は、今年の他ないでしょう。それから……、これはここで聞いたことは内密にして頂きたいのですが……」

 私は、相談者の情報や相談内容を纏めている相談者カルテの中から橋本貴子さんのシートを取りだした。……、やっぱり同じだ。名前も生年月日も、貴子さんの彼氏と。

 「……この番号にかけてみてください。何か、わかるかもしれません」

と、私は貴子さんのスカイプ番号を瀬尾に教えた。

 「きっと、あなたは息子さんに会うべきなんです。私がこの番号を知っていたのも、あなたが私に連絡をしてくださったのも、偶然ではありません。頑張ってください」


 5歳の時にお母さんが病気で死んで、身寄りがなかった私は施設に預けられた。お父さんは初めからいなかった。10歳の時、私は施設を後にした。引き取ってくれたのは、ジョージ。理由は、人生を舐めてる目をしていたから、だそうだ。物好きな人もいるものだ。それから7年間、私はジョージと暮らしている。

 ……瀬尾さん、ちゃんと息子さんにあえると良いな。


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