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第87話 深層へ降りる

 装備の補修を終えてレグノアを出たエイルだったが、その日のうちに再び空白地へ戻ることはせず、街から西へ半日ほど離れた丘の上で野営しながら、ドルガンに言われたことを改めて考えていた。


 今の長剣はまだ使える。


 刃も戻り、内部の魔力伝導路も補強され、少なくとも現時点の《衝撃》や《震圧》を普通に使うぶんには問題ない。ただ、これから《衝撃》が上位化し、《魔力圧縮》や《高密度強化》までさらに伸びていけば、次に装備へ限界が来るまでそれほど長くないことも分かっていた。


 身体だけなら、傷を負っても《自己治癒》が追いつく。


 技能も使えば使うほど伸びる。


 しかし武器や防具は、こちらの成長に合わせて勝手に強くなってくれるわけではない。


「次は、素材から考えた方がよさそうだな」


 焚き火の前で長剣を抜き、刃へ薄く魔力を流す。


 今の剣へ足りないのは、単純な硬さだけではない。


 高密度の魔力を何度も通しても内部が荒れにくく、《衝撃》を一点へ絞った時にも、逆に《震圧》として複数へ分岐させた時にも、伝導路そのものが負荷を逃がせる素材が欲しい。


 コートや軽装甲も同じだった。


 防御力だけを上げて重くすれば、エイルの速度を殺す。だから必要なのは軽さを残しながら、急加速、急停止、高密度強化による身体の膨張、魔物との接触、そのすべてへ耐えられる柔軟な素材だった。


 どちらも、普通の店で簡単に揃うものではないだろう。


 そう思いながら地図を眺めていた時、昼間にドルガンが何気なく話していた場所を思い出した。


 レグノア西方。


 旧鉱山迷宮グラウゼン


 もともとは深鉱石を掘っていた大規模鉱山だったが、約60年前に地下へ迷宮核が発生し、坑道の大半がダンジョン化した場所らしい。


 現在は冒険者ギルドと軍が共同管理しており、上層では鉱石採取、中層から下では魔物素材と特殊鉱物を目的に多くの冒険者が潜っている。


 ドルガンが言っていた。


『剣を本気で作り直すなら、金を持ってくるより素材を持ってこい。お前みたいなのが使う剣は、店売りの金属だけじゃ間に合わん』


 具体的に何が必要なのか尋ねたところ、候補として挙げられたものの1つが、《脈晶鉄》だった。


 魔力を通した際に内部へ複数の流路を作りやすく、しかも一度形成された魔力路が崩れにくい特殊鉱石。


 さらに迷宮深部には、《響殻》と呼ばれる魔物素材も出るという。


 振動を受け流しながら、一定以上の力だけを内部へ逃がす性質があり、武器の芯材にも軽装防具の補強にも使える。


 どちらも、今のエイルにはかなり都合がよかった。


「ダンジョン、しばらく行ってなかったな」


 最後に本格的に迷宮へ潜ったのは、かなり前になる。


 最近は湖底遺構、深層施設、西境の空白地、軍の測量任務と外での探索ばかり続いていたため、閉じた地下を階層ごとに降りていく感覚が少し懐かしかった。


 合同演習まではまだ約3週間ある。


 数日潜る程度なら問題ない。


 エイルは翌朝の行き先を決めると、地図を畳んだ。


     ◇


 《グラウゼン旧鉱迷宮》の入口へ到着したのは、翌日の昼前だった。


 丘陵の間に巨大な切れ込みを入れたような採掘跡の底へ、幅10メートルを越える坑道が口を開けている。その前には石造りの管理棟、冒険者向けの簡易宿泊所、素材買い取り所、救護所まで並んでおり、迷宮というより小さな集落に近い規模だった。


 入口周辺には鉱石運搬用の荷車が何台も止まり、背負い籠を持った採掘系冒険者や、鎧を着込んだ戦闘職が頻繁に行き交っている。


 エイルは管理棟でA級証を提示し、最新の迷宮地図を借りた。


 受付を担当していた中年の職員は、エイルが単独だと知った時だけ少し眉を動かしたものの、A級証を確認すると止めることはしなかった。


「現在、地図が安定しているのは第6層までです。第7層は3週間ほど前の地殻変動で新しい通路が開き、内部構造を再調査中。第8層以降は従来通り未踏区画が多いので、単独の場合は特に帰還経路を確認してください」


「脈晶鉄はどこから出ますか?」


「第5層以下ですね。量だけなら第6層が多い。ただ、純度の高いものは第7層以降で見つかることがあります」


「響殻は?」


 職員は少しだけエイルを見る。


「《鳴殻甲獣》狙いですか」


「多分、それです」


「第6層で確認されています。ただし、あれは殻そのものが衝撃や振動を散らすので、打撃主体の冒険者とは相性が悪い。討伐するなら関節か腹部を狙った方がいいですよ」


「分かりました」


 むしろ、その性質を確かめたくなった。


 《衝撃》に耐える素材なら、今後の剣に使う価値がある。


 エイルは簡易地図を受け取り、入口へ向かった。


     ◇


 第1層から第3層までは、ほとんど立ち止まらなかった。


 元鉱山だった名残が強く、壁や天井には人工的に削られた痕跡が残り、その上へ迷宮化したあと生まれた淡い発光苔が広がっている。分岐にはギルドが打ち込んだ標識も多く、魔物も小型種が中心だったため、エイルが戦う必要すらない場面が多かった。


 第4層へ入ると地形が変わった。


 人工坑道が少しずつ消え、代わりに迷宮核が形成した黒い岩壁と、天井から垂れ下がる結晶柱が増えていく。


 通路も広い。


 場所によっては高さ20メートル近い空洞があり、その底を地下水が細く流れていた。


 そこで最初にまともな魔物と遭遇した。


 全長は5メートルほど。


 身体は大きな蜥蜴に似ているが、4本の脚は外側へ大きく開き、足先には壁面へ食い込む鉤爪が6本ずつある。頭部は扁平で、眼球が額の上へ3つ並び、その下に横へ広い口が裂けていた。


 背中には薄い鉱石板のような鱗が何列も重なり、移動するたび互いに擦れて乾いた音を立てる。


 エイルが通路へ入った瞬間、魔物は壁から天井へ駆け上がり、真上から落ちてきた。


 《警戒圏》にはすでに軌道が入っている。


 エイルは避けるのではなく、落下地点へ一歩だけ前へ入り、腹部が見えた瞬間に長剣を斜め上へ突き込んだ。


 刃が柔らかい腹膜を抜ける。


 そこから《衝撃》を内部へ通すと、魔物は天井から落ちてきた勢いのまま横へ流れ、地面へ転がった。


 倒れるまで数秒も掛からない。


 エイルは素材になりそうな背鱗を数枚だけ切り出し、先へ進んだ。


 第5層でも似たようなことが続いた。


 左右に長い顎を持つ四足獣。


 天井から糸状の触手を垂らす大型軟体種。


 鉱石を食べて外殻へ取り込む6脚種。


 どれも名前は地図へ記載されていたが、エイルは危険度の欄をほとんど見なくなっていた。


 以前なら、その情報を基準に慎重さを調整していた。


 今は実物を感知した時点で、どの程度警戒すべきかある程度分かる。


 少し前までなら、その変化を自分でも気にしたかもしれない。


 しかし空白地で20日以上、名前も等級も分からない魔物と戦い続けたあとでは、むしろ数字が付いていることの方が珍しく感じられた。


     ◇


 第5層の中ほどで、最初の《脈晶鉄》を見つけた。


 通路脇の岩壁に、普通の鉱脈とは違う細い筋が何本も走っている。


 見た目だけなら少し光沢の強い黒灰色の鉱石だが、《魔力感知》を向けると内部へ複数の細い流路が自然に形成されていることが分かった。


 試しに指先から魔力を流す。


 1本だった魔力が鉱石内部で3方向へ分かれ、そのまま大きく減衰せず反対側へ抜けた。


「これか」


 確かに剣向きだった。


 今の長剣は内部に人工的な伝導路を作っているが、この鉱石は素材そのものが複数の魔力路を保持する。


 《震圧》のような分岐運用にも相性がいい。


 エイルは採掘用の小型槌と楔を取り出し、周囲の岩ごと慎重に切り出した。


 量はそれほど多くない。


 純度も分からない。


 ただ、最初の素材としては十分だった。


 その後も第5層を進みながら3ヶ所の鉱脈を見つけ、持ち運べる範囲で回収する。


 戦闘だけではなく素材探しにも《魔力感知》が使えるため、壁の向こうへ隠れた鉱脈まで拾えるのは便利だった。


「これ、採掘だけでも結構使えるな」


 エイル自身は気軽に考えていたが、もし専門の採掘冒険者が見ていれば、また別の反応をされていたかもしれない。


 普通は岩壁の表面、鉱脈の色、周囲の地質から場所を予測する。


 エイルはその上で、壁の数メートル内側にある魔力伝導性まで直接見ていた。


     ◇


 第6層へ下りたところで、迷宮の空気が一段変わった。


 気温が少し下がり、天井もさらに高くなる。


 足元には細かな石ではなく、黒い一枚岩のような床が続き、その表面へ浅い波紋状の模様が刻まれていた。


 《振動感知》を使うと、その床全体が非常によく振動を伝えることが分かる。


「《衝撃》使うなら、かなり広がりそうだな」


 逆に言えば、ここで《震圧》を大きく使えば遠くの魔物まで呼び寄せる可能性がある。


 エイルは普段より範囲を絞ることにした。


 それから1時間ほど探索したところで、《警戒圏》へ大きな反応が入った。


 正面。


 距離は200メートルほど。


 足音は遅い。


 しかし1歩ごとに床へ重い振動が走っている。


 地図を見る。


 この辺りには《鳴殻甲獣》の生息域を示す印があった。


「ちょうどいいな」


 エイルは長剣を抜き、通路を進んだ。


 やがて前方の大空洞へ出る。


 中央にいた魔物は、全長9メートルほどの低い四足獣だった。


 全体の形は巨大な亀に近い。


 ただし甲羅は丸くなく、何枚もの六角形の硬質板が段差を作りながら重なり、背中全体を岩山のように覆っている。それぞれの板の縁には半透明の細い膜があり、魔物が呼吸するたび、その膜が小さく震えていた。


 頭部は甲殻の内側から前へ突き出し、目は小さい。


 口元には上下2対、合計4本の太い牙があり、前脚は地面を掘るためか肩から先が極端に発達している。爪は短いものの幅が広く、歩くだけで床へ浅い傷が残っていた。


 そして最も特徴的なのは、全身から微かな音が出ていることだった。


 耳で聞けば低い唸りに近い。


 《振動感知》では、それが甲殻全体から一定の周期で放たれているのが分かる。


 外から加わる振動へ、反対方向の振動を返している。


「本当に受け流してるのか」


 素材として欲しくなる理由がよく分かった。


 魔物もエイルに気づいた。


 小さな目がこちらへ向き、前脚が床を掻く。


 次の瞬間、見た目に反してかなり速い突進が始まった。


 エイルは避けながら長剣を甲殻へ当てる。


 まず普通に試す。


 刃はほとんど入らない。


 そのまま刀身から《衝撃》を通した。


 重い音が響く。


 しかし、普段なら内部へ抜ける力が甲殻へ入った瞬間に何方向にも散り、魔物の身体全体へ薄く逃げていく。


 巨体が僅かに揺れただけで、ほとんど効いていない。


「なるほど」


 エイルは一度距離を取った。


 面白い。


 単純に硬いのではなく、自分の得意な攻撃そのものと相性が悪い。


 それなら、素材としての価値はさらに高い。


 鳴殻甲獣が身体を低くし、背中の甲殻を震わせる。


 周囲の空気へ低い振動が広がった。


 《警戒圏》へ複数の危険が浮かぶ。


 直後、甲殻から放たれた振動が床へ伝わり、空洞全体を波のように走った。


 エイルの足元まで届く。


 地面が揺れるだけではない。


 脚から入った振動が筋肉へ伝わり、身体強化の魔力まで乱そうとしてくる。


 エイルは《魔力操作》で即座に修正した。


「向こうも振動使うのか」


 少し嬉しくなった。


 同じ系統ではない。


 それでも、自分が長く使ってきた《衝撃》や《振動感知》に近い性質を持つ魔物と戦う機会は多くない。


 鳴殻甲獣がもう1度突進する。


 今度は甲殻へ攻撃しない。


 エイルは前脚の軌道を《警戒圏》で読み、身体の横へ滑り込むと、甲殻と脚の接続部を狙って長剣を差し込んだ。


 ここには硬質板がない。


 ただ、内部から強い振動が返ってきて刃を押し戻そうとする。


 エイルは柄を両手で固定し、《魔力圧縮》を一気に高めた。


 普通の《衝撃》では散る。


 なら広がる前に、もっと細く通す。


 刀身の中を一本だけ。


 剣先から相手の内部へ入ったあとも、極力拡散させない。


 針のような力を作る。


 発動した瞬間、いつもの腹へ響く重音とは違う、短く鋭い音が鳴った。


 鳴殻甲獣の前脚が崩れる。


 散らされる前に、外殻の内側へ抜けた。


「これならいける」


 魔物は身体を大きく回し、甲殻ごとエイルを押し潰そうとする。


 《警戒圏》へ軌道が見えているため、エイルは少し早く後ろへ下がり、さらに床へ《震圧》を狭く流した。


 ただし今回は倒すためではない。


 相手の甲殻が返してくる振動を読む。


 1ヶ所から《衝撃》を入れる。


 甲殻が散らす。


 その流れを《振動感知》で追う。


 2ヶ所目。


 また散る。


 3ヶ所目。


 少し違う。


 六角形の甲殻同士が接触する境界部分だけ、反響が弱い。


「そこが継ぎ目か」


 エイルは魔物の周囲を走りながら、何度か小さな《衝撃》を打ち込んだ。


 戦っているというより、構造を調べている。


 鳴殻甲獣にとってはたまったものではないだろう。


 前脚が振り下ろされ、牙が横から来る。


 それらを避けながら甲殻の継ぎ目を確認し、最も振動の弱い場所を1つ見つける。


 そこへ踏み込む。


 《高密度強化》を腕と背中へ繋げ、長剣を深く差し込んだ。


 今度は《衝撃》をすぐ撃たない。


 刀身から《振動感知》を流し、甲殻の下にある組織と魔力路を読む。


 厚い筋肉。


 骨。


 そのさらに奥へ、振動を生み出している大きな器官がある。


「これか」


 圧縮する。


 細く。


 さらに細く。


 今までの《衝撃》より、力そのものを一本の線へ近づける。


 そして解放した。


 鋭い重音が魔物の内部で響く。


 鳴殻甲獣の身体が大きく傾いた。


 甲殻全体へ流れていた一定周期の振動も乱れ、今まで均等に力を散らしていた構造が一瞬だけ崩れる。


 その隙を逃さず、エイルは同じ場所へもう1度細い《衝撃》を通した。


 魔物は数歩だけ前へ進み、そのまま前脚から床へ沈んだ。


 完全に止まったことを確認してから、エイルは長剣を抜く。


【《衝撃 Lv.61 → Lv.63》】


【《振動感知 Lv.41 → Lv.43》】


【《魔力圧縮 Lv.48 → Lv.50》】


【《剣術 Lv.41 → Lv.42》】


【高密度・狭域への衝撃収束を確認しました】


【《衝撃》上位化経路の1つが強く進行しました】


 エイルは最後の表示をしばらく見た。


 広範囲へ広げる《震圧》。


 内部へ分岐する《衝撃》。


 遠隔。


 加速。


 そして今は、極端に細くして貫く使い方。


 使い方を増やすほど、上位化先も少しずつ絞られているらしい。


 今すぐ決める必要はない。


 それより、目の前に欲しかった素材がある。


     ◇


 鳴殻甲獣の解体には、戦闘より長い時間が掛かった。


 甲殻そのものが非常に硬く、普通に剥がそうとしても刃が入りにくいため、関節部分から内側へ回り込み、筋繊維を切りながら1枚ずつ外していく必要がある。


 それでも全身分を持ち帰ることはできない。


 エイルは状態の良い甲殻を3枚と、振動を発生させていた内部器官の一部、それから牙を2本だけ回収した。


 甲殻を手で叩く。


 硬い音はするが、振動が手へほとんど返ってこない。


「これ、コートにも使えるかな」


 薄く加工できるなら、肩や脇腹の補強へ使えるかもしれない。


 剣へ使う場合も、芯そのものより伝導路の外周へ配置すれば、高出力時の逆流や振動を逃がせそうだった。


 ドルガンへ見せる価値は十分ある。


 エイルは素材を固定し、さらに第6層を進んだ。


 その日のうちにもう1体鳴殻甲獣を見つけたが、今度は最初の個体ほど苦労しなかった。


 1度目の戦いで外殻の構造が分かっている。


 攻撃を散らされる場所へわざわざ《衝撃》を打たず、最初から甲殻の継ぎ目へ入り、振動器官の位置を探る。


 数分後には2体目も倒れていた。


【Lv.79 → Lv.81】


【《衝撃 Lv.63 → Lv.64》】


【《近域感知 Lv.40 → Lv.41》】


【《高密度強化 Lv.29 → Lv.30》】


 同じ魔物。


 同じ階層。


 それでも成長している。


 《越境》Lv.6になってから、この速度は明らかに以前と違った。


     ◇


 夕方に近い時間になり、エイルは第6層の安全区域として地図へ記載されている小部屋へ向かう予定だった。


 その途中だった。


 《警戒圏》へ、見慣れない反応が入る。


 魔物ではない。


 もっと広い。


 そして動いていない。


 エイルは足を止め、《振動感知》を床へ流した。


 前方の通路。


 そのさらに先。


 地図では行き止まりになっている場所の向こう側に、大きな空洞がある。


「……地図と違うな」


 最近開いた第7層への新通路とは方向が違う。


 第6層の地図では完全な岩壁になっているはずだった。


 しかし感知では、その向こうへ幅の広い通路が続いている。


 しかも入口付近にだけ、比較的新しく崩れた岩が積もっていた。


 エイルは近づく。


 岩の隙間から、冷たい空気が流れてくる。


 人が通った足跡はない。


 ギルドの標識もない。


 試しに魔力を奥へ伸ばすと、かなり遠い位置から強い反応が返った。


 鉱石。


 それも、第5層で見つけた《脈晶鉄》より遥かに密度が高い。


 さらに別の反応もある。


 生物。


 複数。


 そのうち1つだけ、周囲と比べて明らかに大きい。


 エイルは地図と岩壁を交互に見た。


 安全区域へ向かうなら右。


 目の前の崩落を越えれば、地図にない場所。


 少し考える。


 答えは最初からほとんど決まっていた。


「素材もありそうだしな」


 装備更新。


 レベリング。


 未知の探索。


 全部が同じ方向にある。


 エイルは荷物を背負い直すと、崩れた岩の隙間へ手を掛けた。


 合同演習まで、まだ時間はある。


 そして第6層の地図にはない先で、彼の《警戒圏》はすでに、新しい強敵の存在を捉えていた。


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