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異世界特戦群  作者: 猿渡銀部
第一章 ライラルフ王国の陰
9/28

第9話 帝国の魔導士――黒き影

改稿・推敲版になります。

「まったく……役に立たぬな」


城から広場に足を踏み入れたローブの男――宮廷魔導士が、淡々と呟いた。その視線の先には、倒れ伏した王国騎士たち。


「たった2人。それも女騎士と……妙な装いの男すら止められんとは」


侮蔑が滲む声。

「これが王国騎士団か、笑わせる」


ゆっくりと歩みながら、倒れた騎士の一人を足で転がす。


「……貴重な魔道具を使ったというのに」


手元を見下ろす。そこには鈍く光る腕輪。


“支配の腕輪”本来ならば将を屈服させ、戦を終わらせるためのものだ。

忠誠心が高い程にその効果は強く発現する魔道具。


宮廷魔導士は、わずかに眉をひそめる。

「……あの男に使ったのは、無駄だったか」


「せめて最後まで、駒として役に立てばよかったものを…」


宮廷魔導士の言葉は明確にリゼルへ向けられていた。

煽るように、踏みにじるように。


リゼルの拳が震える。

「……貴様…貴様が!」


声が低く落ちる。

だが、その言葉が続く前に――


悠真は、すでに動いていた。


戦いは終わっていた。

悠真の周囲には王国騎士たちが倒れている。数にして十数、いずれも致命のみを的確に奪われている。


その手には血に濡れた剣が2本。


呼吸は荒い、肩がわずかに上下している。


だが視線は死んでいない。戦闘状態を維持したまま、次を見据えている。


背後から低い足音。


黒狼が静かに歩み寄る。

全長三メートルの巨体、その体躯はすでに複数の命を喰らったことを物語っていた。


牙には血が残り、呼吸は深い。


それでも動きに鈍りはない。


リゼルは、はっとして後方を振り返る。


城門の方角へ。


そこには――先程まで戦っていた王国騎士と侵入してきた敵兵、その両方が倒れていた。

生存者はいない。戦場としては、完全に終わっている。


「……そんな……」


掠れた声が漏れる。

だが次の瞬間、その感情は怒りへと塗り替えられる。


リゼルは振り返る。ローブの男を睨みつける。

「……何故だ」


剣を握り直す。その切っ先が魔導士へ向く。

「何故、帝国の人間がここにいる!」


声が広場に響く。

怒りも、悲しみも、すべてを乗せて。


宮廷魔導士は、わずかに口元を歪めた。


静かに両手を上げる。

その周囲の空気が歪む。魔力の収束、可視化されるほどの熱量。


「これはな、反乱などではない」


「――侵略だ」


その瞬間、魔導士の周囲で炎の気配が膨れ上がる。熱が一気に広がり、空気が焼ける。


次の瞬間、放たれた。


圧縮された炎の球、一直線にリゼルへ迫る。距離およそ十数メートル、回避を許さない速度。


「――っ!」


リゼルの反応が遅れる。疲労、判断の遅延、回避不能。


だが――その前に悠真が動く。


地を蹴る、強引な踏み込み。


リゼルとの腕を掴む、引く、倒す。


そのまま覆いかぶさり、二人の体勢はほぼ地面と水平、防御としては最低だ。


だが間に合う位置に滑り込んだ。


直後、轟音。炎が炸裂する。


爆発点は先程までリゼルが立っていた位置。


石畳が弾け、破片が飛び、熱風が叩きつける。

遅れて衝撃波、広場全体がわずかに揺れた。


悠真は歯を食いしばる。呼吸が乱れる。肺が熱を拒絶する。


ここまでの連戦、すでに限界に近い。

それはリゼルも同じだった。


立ち上がるまでに生まれる、わずかな“間”

本来なら致命的になる遅れ。


――状況は、明確に悪い。


悠真は視線だけで周囲を走査そうさする。

敵の配置、距離、遮蔽物、退路。


戦うか、退くか、その判断を数秒で組み立てる。


だが――その思考が結論に至る前に、新たな熱が生まれる。


二発目だ。


炎の球、すでに発射されている。距離は同等、だがこちらの体勢が違う。回避動作に移れない、間に合わない。


結論は一つ――回避不能。


悠真は理解する。これは、詰みだ。


思考がわずかに静まる。


死を受け入れる直前の静寂。


その瞬間――黒い影が、悠真の視界を埋めた。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

この作品や題材が面白い、つづきが読みたいと思ってくださればブックマークや率直な評価をお願いします。

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指摘に関しても自分の作品に反映させて頂きます。

後書きまでお付き合い頂きありがとうございました。

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