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異世界特戦群  作者: 猿渡銀部
第一章 ライラルフ王国の陰
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第5話 対人戦闘

こちらは改稿・推敲版になります。

外壁の門は半壊していた。


片方の扉は焼け落ち、焦げた木材が黒く崩れている。


門前には鎧姿の兵士の死体が転がり、乾ききっていない血が地面に広がっていた。


鉄と血の匂いが、重く鼻をつく。


悠真は黒狼の背から降りる。

ライフルを構え、銃口を門の奥へ向ける。


血溜まりを踏み越え、半壊した門をくぐった。


その直後――


「止まれッ!」

怒声とともに、複数の兵士が飛び出してくる。

装備は粗く、鎧も統一されていない。動きも荒い。


この街の門番には見えない風貌の兵士。

手には血まみれの剣を持ち、悠真を睨んでいる。


間合いに入る。


「お前!どこの所属だ!」

先頭の兵士が悠真にいかける、だが悠真は答えない。


悠真はライフルに手をかけたまま、構えを解き。


一歩、踏み込む。


「おいっ!聞いているのか!?」

先程の兵士が苛立ちを見せながら、悠真に再度問いかける。


「街の方に煙が見えた……だから様子を見に来た」


悠真は兵士のといに淡々と答える。


「つまり、仲間じゃあないんだな?」


先頭の兵士がニヤリと笑う。


悠真に近づき、突如、剣を振り下ろす。

肩から力任せに叩きつける一撃。重い――が遅い。


悠真は半身を切ってかわす。

刃が肩先をかすめる寸前、腕を差し込む。


手首を掴み、そのまま外側へ捻る。

関節が逆に折れかけ、兵士の顔が歪む。


引き寄せ、踏み込みを重ねて間合いを潰す。

ひじを、喉へ叩き込む。


「……ぐ……っ……!」


鈍い手応え、呼吸が潰れる音。

一人が崩れる。


「貴様ぁぁっ!」


二人目が声を張り上げ、横から斬りつけてくる。


腰を落とし、刃を前腕で受け流す。

鋼と布が擦れる音。


軌道が逸れた瞬間、踏み込む。

肩を押し当て、体勢を浮かせる。


膝を、腹へ突き上げる。内臓が揺れる感触。

兵士の身体がくの字に折れる。


そのまま背後へ押し倒す。


三人目。


距離を取ろうとする。だが、遅い。

地面を蹴り、一歩で間合いを詰める。


あごへ、拳を打ち上げる。骨に当たる感触。


兵士の視線が上へ跳ね、そのまま力が抜ける。

崩れ落ちた。


最後の一人。



「お前、な…何者だ!」


兵士は悠真に問いかける、その手に剣を構えたまま、動けない。


呼吸が荒く、目が泳いでいる。


恐怖で判断が遅れている。


悠真はを与えない、無言で一気に踏み込む。


首元の鎧の隙間へ手を差し込み、掴む。

そのまま、足を払い地面へ叩きつける。


後頭部が石畳に打ちつけられる音。


一瞬で沈黙する。


静寂。


倒れた四人、それ以外に動く者はいない。


「…他に…いるか?」


悠真が大きな声で問いかけるが、残っていた兵士たちはその光景を見て誰も動けない。


息を呑む音。


そのとき――


悠真の背後で、低い唸り声。


門前から中に入ってきた、黒狼だ。


漆黒の巨体。金色の瞳が、ゆっくりと兵士たちを見据え、そして威嚇する。


兵士たちの空気が凍る。


「ば、化け物……!」


兵士の誰かが小さく呟く。


次の瞬間、兵士たちは一斉に後退あとずさる。


足がもつれ、剣を落としながら逃げ出す。

我先にと悠真の視界から離れていく。


悠真は追わない、興味がない。


視線を外し、そのまま歩き出す。


黒狼も並ぶ。


街の中から聞こえるのは、悲鳴と怒号、そして剣戟けんげきの音。


市街地へ足を踏み入れる。


焼け落ちた屋根。崩れた壁。

引き裂かれた荷物が石畳の路地に散乱している。


泣き叫びながら逃げる住民。

それを追い回す兵士たち。


剣が振り下ろされる音。何かが倒れる音。


――本来は、違ったはずだ。


倒れた屋台。散らばった果物。


色褪いろあせた看板。割れた窓の奥に並ぶ食器。


生活の痕跡こんせきだけが残っている。


戦いがなければ、人の声で満ちていたはずの街。


悠真は表情を変えない。ただ、歩く。


靴底が血を踏む感触。乾きかけたそれが、わずかに滑る。


黒狼も低く唸りながら周囲を警戒していた。


足並みが揃う。言葉はない。だが、意識は同じ方向を向いている。


煙が低く流れている。風は弱い。


火は消えていない。延焼えんしょうはまだ続いている


――制圧は終わっていない。


視線を流す。


路地の奥、倒れて動かない住民。

その脇を、兵士が無言で踏み越えていく。


扉の壊された家。中は荒らされ、引きずられた跡が外まで続いている。


抵抗した痕跡。


――右。


崩れた荷車の影。


「おらっ!こっちに来い!」


引きずられる若い女の腕。

兵士が一人、乱暴に引き寄せている。


泣き声、そして短い悲鳴。


「助けて…」


女は悠真に気が付くと手を伸ばし助けを求めた。


女の腕を引いていた兵士が気付く――


悠真は咄嗟にライフルを構える。兵士に照準を合わせ、発砲。


乾いた音が石畳の路地に響く。


兵士の頭がはじけ、身体がその場に崩れ落ちた。


女はその場に尻もちをつき、声にならない息を漏らす。

身体は小刻みに震えている。


悠真は視線すら向けない。


「逃げろ!」


短く、それだけ。


女は急いで立ち上がり、悠真に一礼してその場を足早に去る。


次の瞬間には、もう前を見ている。


血と煙の匂い。焦げた木と肉の臭気。

遠くで悲鳴が上がり、すぐに途切れる。


視線は前。だが、すべてを捉えている。

動く気配、潜む視線。すべて把握する。


警戒しながら、街の奥へ。


悲鳴が増え、怒号が近づく。

戦いの音が、より鮮明になる。


足を進めるたびに、元居た世界と光景が重なる。


瓦礫に埋もれた道路。炎に包まれた建物。

崩れる音。叫び声。


「どこに行っても…結局は同じ…か」


そう呟く、悠真の歩みは変わらない。止まらない、迷わない。


そのとき――


細い路地裏の先で、女の怒鳴り声が響いた。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

この作品や題材が面白い、つづきが読みたいと思ってくださればブックマークや率直な評価をお願いします。

励みにさせて頂きます。

指摘に関しても自分の作品に反映させて頂きます。

後書きまでお付き合い頂きありがとうございました。

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