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異世界特戦群  作者: 猿渡銀部
第一章 ライラルフ王国の陰
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第14話 玉座の間――殲滅戦

玉座の間の空気が、張り詰めた糸のように震えた。


広間は縦に長い。中央に赤い絨毯が一直線に伸び、その先に段差を上げた玉座。左右には太い石柱が等間隔とうかんかくに並び、上方にはそれを囲うように二階回廊が走っている。死角はいくらでもある構造だった。


次の瞬間、柱の陰、二階回廊、玉座の裏手――あらゆる死角から武装兵が一斉に躍り出る。甲冑の擦れる音、抜剣の金属音、怒号。静まり返っていた空間が、一瞬で殺意に塗り潰された。

前方から突撃。左右の柱の陰から挟撃。上からは弓。包囲は、完成している。


「来るぞ!」

悠真が低く告げる。その声より早く、最前列の敵兵が絨毯を踏み潰す勢いで突っ込んでくる。距離は一気に詰まる。


悠真は半身になり、黒い拳銃を構えた。右腕を伸ばし切らず、左肩をわずかに引いて照準を固定する。


引き金。重い破裂音。先頭の兵の胸部が抉れ、装甲ごと内側から破裂する。血と鉄片が後続に降りかかり、その足を一瞬止めた。


間を置かない。二発、三発。胸部、胸部、喉。倒れる、崩れる。だが数が減らない。前列が崩れた隙間を、次の列が即座に埋めてくる。


(……押し切る気か)


撃ちながら、悠真は状況を切り取る。前方、距離10〜15メートル、盾持ち混在。左右、柱間から横槍。上方、弓兵およそ十数。


「数が多い……!」


リゼルが叫ぶ。彼女は悠真の半歩後ろ、右側面をカバーしている。左から回り込んできた兵の剣を弾き、踏み込み、肩口へ斬り込む。返す刃で膝を断つ。体勢を崩した敵の喉へ、迷いなく刃を通した。


その頭上、弓が引き絞られる音。次の瞬間、二階回廊から矢が雨のように降る。


「上――!」

フェンが叫ぶより早く、彼女の身体が滑り込む。悠真の前へ。袖の奥から伸びた黒い爪が空気を裂く。連続する金属音。飛来した矢がすべて弾かれ、軌道を逸らし、石床や柱へ突き刺さる。


「主、上です!」

「わかってる」


悠真は拳銃を黒い靄へ沈める。選択。単発では間に合わない。制圧に切り替える。


黒い武器が形を変える。銃身が伸び、機関部が肥大し、両手で抱える異形の機関銃へ変貌する。ずしり、と腕に重みが乗る。


同時に、頭蓋の内側を削るような痛み。

(……来たか)


魔力消費が一段跳ね上がる。

「っ……!」


歯を食いしばる。それでも止めない。肩へ銃床を押し当て、上方、回廊へ照準を引き上げる。

引き金。咆哮のような連射音。黒い弾幕が一直線に走り、二階回廊を舐める。石の欄干らんかんが砕け、伏せ損ねた弓兵の身体がまとめて引き裂かれる。肉と石片が空中で交差し、遅れて悲鳴が連なる。


上の圧が消える。

その隙、床を蹴る音。盾兵が一気に間合いへ詰めてくる。


リゼルが前へ出る。剣を低く構える。盾の正面は取らない。半歩ずらす。盾の縁を叩いて角度を崩し、そのまま脇腹の継ぎ目へ刃を滑り込ませる。金属の隙間に血が噴く。兵が膝をつく。


返す刃、喉、一閃。


フェンは人の姿のまま、それでも完全に“獣”の動きだった。踏み込みが異様に軽い。一歩で距離を消す。敵の懐へ潜り込む。爪が走る。手首が宙を舞う。反転、蹴り上げ、顎が砕ける。着地と同時に次へ。耳が怒りにぴんと立ち、金色の瞳が闇の中でも異様に光る。


「邪魔だ」


悠真が呟く。銃口を横へ振る。押し寄せる兵列をまとめて薙ぐ。弾丸が鎧を貫き、身体を抉り、後列まで貫通する。一列が消し飛ぶ。


だが――


(……まだ来るか)

奥からさらに兵が流れ込んでくる。玉座の裏手、扉。そこが増援の入口になっている。無限に近い圧。


心臓が跳ねる。ドクン、ドクンと嫌な速さで。視界の端が滲む。距離感がわずかにズレる。


(魔力……削りすぎだ)


撃つたびに、何かが削られていく。集中、判断、そして命に近い何か。

それでも止める理由はない。


悠真の視線はただ一点、玉座を見据えている。その上で笑っている“偽王女”


(……あそこまで行く)


そのために、撃つ、斬る、殺す。それ以外は――全部、後だ。

最後まで読んでくださりありがとうございます。


この作品や題材が面白い、つづきが読みたいと思ってくださればブックマークや率直な評価をお願いします。


励みにさせて頂きます。


指摘に関しても自分の作品に反映させて頂きます。


後書きまでお付き合い頂きありがとうございました。

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