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異世界特戦群  作者: 猿渡銀部
第一章 ライラルフ王国の陰
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第12話 炎を断つ――武装投影

魔導士の詠唱が響く中、悠真は自分の足元へちらりと目を落とした。


数メートル先。

弾切れで投げ捨てたライフルが、石床の上に転がっている。


その銃身が、どろりと黒く溶けた。


「……?」

鉄が液体になるはずがない。だが確かに、ライフルは輪郭を失い、黒い泥のようなものへ変わっていく。そして次の瞬間、それはひとつの滑らかな黒い球体になった。


掌に収まるほどの大きさ。


なのに、広場から照らす夕日をまるで吸い込むように暗い。


フェンがはっと顔を上げる。

「主、それは――」


黒い球体が、ひとりでに浮き上がった。

悠真へ向かって一直線に飛来する。


咄嗟に避けようとしたが、間に合わない。黒い球体は悠真の胸元へぶつかるようにして、衣服も肉体もすり抜け、そのまま身体の内側へ沈み込んだ。


「ぐっ……!」

心臓を内側から握り潰されるような衝撃。

悠真は膝をつき、石床へ片手をつく。


頭の奥へ、濁流のように情報が流れ込んだ。


魔力刻印定着エンチャント・インストール


武装投影アームズ・プロジェクション


形状制御イメージ・フォーミング


拳銃ハンドガン長銃ライフル連射銃マシンガン爆砲カノン――


「これは……」

右手が熱を帯びる。

掌の上に、黒いもやが集まった。

次の瞬間、そこには見覚えのある形があった。


拳銃。


だが金属ではない。黒曜石のような質感を持つ、異様に美しいシルエット。


悠真が指をかけると、それが“使い方を知っている武器”であることが、直感ではなく本能として理解できた。


女神の声が、頭の奥でかすかに響く。

――あなたの異物としての力を、この世界の理に接ぎ木しました。


――その武装は魔力だけでなく、あなた自身を喰らいます。


――使い続ければいずれ、あなたはあなたでなくなる。


悠真は立ち上がる。

呼吸は乱れ、こめかみの奥が鈍く脈打っていた。

「都合のいい力なんて、最初から期待してない」


「だが……代償があるなら、使いどころを間違えなければいい」


魔導士が眉をひそめる。

「何をした……!」

悠真は右手の拳銃を構えた。左手には剣。

足元を開き、肩の力を抜く。


フェンが悠真の横へ並ぶ。耳がぴんと立ち、金色の瞳が敵を射抜いていた。


リゼルも息を整え、剣を握り直す。

悠真は低く言った。


「掃討する」


魔導士が両手を広げる。


「死ね!」

放たれた火球が通路を埋めるように迫った。


悠真は半身になり、壁際へ滑るように身をずらす。火球がすぐ横を掠め、熱風が頬を打つ。その一瞬の隙に、右手の黒い拳銃が吠えた。


轟音ではない。


圧縮された衝撃を叩きつけるような、重い破裂音。


黒い弾丸が火球を突き抜け、その向こうの敵兵の胸を穿つ。男は何が起きたかわからない顔のまま壁に叩きつけられた。

悠真の視界がぐらりと揺れる。


「……っ」

一発でこれか。


確かに魔力と集中力を削る。


悠真は舌打ちし、次の敵兵へ踏み込んだ。剣が振り下ろされる。悠真はそれを受けずに、左へ体を流すようにかわす。すれ違いざま、肘を相手の顎へ打ち込み、怯んだところへ喉元へ剣を突き入れた。


右から槍。

低く身を落とし、穂先の下をくぐって懐へ入る。膝蹴りを鳩尾へ叩き込み、男が前屈みになった瞬間、拳銃の銃口を額に押し当てて撃つ。

近すぎる発砲音が鼓膜を震わせた。


フェンが左側の敵兵へ飛び込む。人の姿になっても、その動きには獣の鋭さが残っていた。袖の奥から現れた黒い爪が兵士の喉を裂き、身をひねって次の男の足首を払う。倒れた相手へ迷いなく踵を落とす。


リゼルもまた、気迫で押していた。


疲弊しながらも剣筋は鋭く、騎士としての技量が確かにあった。

だが、魔導士だけは下がらない。


「小賢しいッ!」

両腕を振り上げると、広場の空に火の槍がいくつも浮かび上がった。10、20、それ以上。熱気で空気が歪む。


悠真は拳銃を見た。

この距離、この数では間に合わない。

意識を切り替える。


黒い拳銃が、靄のように形を崩した。

もっと長く。


もっと強く。


遠くを、貫ける形へ。


右手の武器が、瞬時に黒いライフルへ変わる。

変形と同時に、頭の奥へ針を刺し込まれたような痛みが走った。


「っ、ぐ……!」

膝が笑いそうになる。

だが悠真は銃床を肩へ押し当て、照準を覗き込んだ。


世界の音が遠のく。

炎の槍も、敵兵の悲鳴も、すべて背景へ沈む。

照準の中心にいるのは、魔導士ただ一人。


「終わりだ」


引き金を絞る。

黒い閃光が走った。

放たれた一撃は火の槍をまとめて撃ち抜き、その奥で呪文を組んでいた魔導士の胸を、心臓ごと吹き飛ばした。


赤い魔力が霧散する。

火の槍がすべて消え、広場に静寂が落ちた。

悠真は剣を支えにするように一歩踏みとどまる。視界が白む。集中力がごっそり削られていた。


「主!」

フェンが駆け寄る。


「まだ立てる」

悠真は短く言って、額の汗を手の甲で拭った。

広場の奥に残っていた敵兵たちは、指揮官を失って明らかに怯んでいる。


悠真は黒いライフルを再び拳銃へ戻し、低く告げた。


「残党を片づける。城へ上がるぞ」

最後まで読んでくださりありがとうございます。

この作品や題材が面白い、つづきが読みたいと思ってくださればブックマークや率直な評価をお願いします。

励みにさせて頂きます。

指摘に関しても自分の作品に反映させて頂きます。

後書きまでお付き合い頂きありがとうございました。

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