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10.辺居

 翌日。植木高等学校の玄関は、朝の乾いた空気と、床用ワックスの匂いが混ざっていた。透は下駄箱の前にしゃがみ込み、上履きを脱いで靴へ履き替える。指先が妙にぎこちない。昨日の騒動の余韻が、まだ身体のどこかに残っているみたいだった。


「透ー!」


 背中越しに、弾んだ声が飛んだ。振り向くと、綾香たちが手を振っている。いつもなら、当たり前に合流して、くだらない話をしながら教室へ向かう。なのに、今日は足が動かなかった。


「今日さ、放課後――」

「ごめん。今日は用事あるんだ」


 透は自分でも驚くくらい早口に遮った。綾香が目を瞬かせる。もう一人が「え、また?」と口を尖らせたのが見えた。

「ちょっとね……それじゃ」

 透はそれ以上、言葉を足さなかった。目を合わせるのがしんどくて、透は靴紐を結び直すふりをして立ち上がり、そのまま玄関を抜けた。


 校門を出ると、空がやけに明るい。人の声も車の音も、いつもの通りだ。透だけが、そこに混ざりきれていない感じがした。


 ――辺居。


 白枝会が、代表が、罪を犯してでも守ろうとする場所。町中の人間が平気で「掃き溜め」と呼ぶ場所。そこにいる人たちは、どんな顔で、どんなふうに息をしているのか、知らなかった。


 透は制服の襟元を押さえ、歩き出した。駅へ向かい、路線を乗り継ぐ。窓の外の景色が、少しずつ色を失っていく。建物は低くなり、看板は剥げ、道の端に積まれた瓦礫が増える。人の服も、靴も、手の動きも、どこか疲れて見えた。


 降りた駅は、町中より風が冷たい。透は人の流れに紛れて歩いたが、周囲の視線が刺さるのを感じた。制服。整った靴。背に担いだ大槌はない。今日は、ただの学生のふりをするつもりだった――なのに、その“ただの”が、ここでは目立つようだ。

 通り過ぎる人々、遠くで透を見つけた人々。その視線は怪訝に歪み、わずかな敵意が見て取れる。


 細い通りを抜けた先で、空気が変わった。煤けた匂い。油のような匂い。濡れた鉄の匂い。

 透は一瞬だけ足を止め、喉を鳴らす。

 思っていたより近いのに、思っていたより遠い。境目なんて看板一枚もないのに、はっきりと“違う”場所だった。


 透は、意を決して踏み込んだ。

 ――そして、入った途端だった。


「出せよ! 秘傘だ、秘傘!」


 怒鳴り声。乾いた悲鳴。店のガラスが震える音。透の視線の先、電気屋の狭い店先で、男がナイフを振り上げていた。店主が後ずさり、周囲の人間は遠巻きに固まっている。


 透の背中に、ぞくりと冷たいものが走った。

 考えるより先に、足が前へ動きかける。



 電気屋の店先。狭い入口の前で、痩せた男がナイフを突きつけていた。店主はカウンターの端に追い詰められ、両手を上げたまま小刻みに後ずさる。周囲の人間は、数歩――いや、十歩以上距離を取って、誰もが見ていないふりをしている。視線だけが、盗み見るように集まっている。


 透は足を止めた。胸の奥が嫌に冷える。

 秘傘。町中なら端末と同じくらい当たり前に見かける道具だ。値段だって端末よりは安い。けれど、この辺居でそれは“安い”とは言えないのだろうと、男の目つきと、周囲の沈黙が教えてくる。


 強盗の肌は乾いていた。日光浴が足りないのか、ところどころひび割れて、色も悪い。手元のナイフを握る腕は細く、なのに動きは荒い。刃先が店主の喉元をなぞり、店主の喉がごくりと動いた。


 遠くでエンジン音が近づいた。

 警察車両が角を曲がり、通りをゆっくり流れてくる。


 ――来た。


 透は一瞬だけ期待してしまった。だが、車内の警官は窓越しに横目で状況を見ただけだった。誰も降りない。サイレンも鳴らない。速度すら変えず、そのまま通り過ぎていった。


 透の口の中が苦くなった。

 周りの大人たちは、息を潜めるように肩をすぼめたまま、動かない。


 強盗が舌打ちし、ナイフを握り直す。

 刃が、変わった。


 さっきまで太く見えた刃が、すっと薄く伸びる。金属の表面が妙に滑らかに光り、紙みたいに細い線へ変形していく。礼装だ。サバイバル用のナイフに刻まれたルーンが、魔力を受けて“切れ味”を伸ばしたのだと、透にも分かった。


 その刃なら、人を簡単に刈り取れる。


 けれど、強盗の腕から蒸気が立っていた。

 冷たい空気の中で、白い息とは違う、熱のにおいを含んだ湯気。握りこむほどに、炭骨が熱を持っている。日光浴不足と感情の高ぶりによる〝過活性〟が強盗の身体を蝕んでいるようだ。

 発火まで近い――そんな危うさが、蒸気の量で透にも読めた。


「や、やめろ……落ち着け……」


 ようやく数人が声をかけた。誰も近づかない。口だけが動く。

 強盗はナイフを振り回し、近づくなと威嚇した。刃が空気を裂くたび、ひゅっと嫌な音がする。店主の肩が跳ね、ついに棚の奥へ手を伸ばした。


 秘傘が引っ張り出される。

 店主は震える手で、それを差し出した。


 ――終わる。渡して終わる。


 透はそう思った。だが、強盗の目は秘傘ではなく、店主の顔を見ていた。

 ナイフが、ゆっくりと持ち上がる。


 透の足が勝手に動いた。


「おい――!」


 声が出るより早く、透は強盗の腕を掴んでいた。

 掌に、焼けるような熱が伝わる。本来であれば悶え苦しむ痛みを感じているはずなのに、強盗自身はまるで動じておらず、透の方が痛みに歯を食いしばる。


「っ……!」


 グイっと腕を押さえ込むように捻った。強盗が驚いたように振り向く。透はその脚を払う。体重のかけ方は学校の体育とは違う。狩人の身体が勝手に最短の動きを選ぶ。


 強盗が転んだ。ナイフの刃先が宙を切り、地面に火花が散った。


「離せよ、クソが!」


 強盗が暴れる。透の掌が熱でじんじんする。だが離せない。離したら、また刃が上がる。


 透は膝で強盗の腹を押さえ、体重を乗せた。抵抗が一瞬、鈍る。

 それでも強盗はナイフを握り直そうとした。


 透の拳が動いた。


 顎を横から捉える一発。

 乾いた衝撃音。強盗の頭ががくんと落ち、目が泳いで、力が抜けた。脳震盪だと、透にも分かる。自分の拳の重さが、嫌なほど現実だった。


 透は息を吐き、周囲を見回した。


「おい! 誰か! 縛れ! 今のうちに――!」


 声を張り上げた。

 けれど、誰も近づかなかった。


 視線だけが集まって、足は動かない。まるで透のほうが“危ないもの”みたいに、距離が保たれる。透の喉が乾いた。


 そこで、さっき通り過ぎた警察車両が戻ってきた。

 今度は停車し、警官が二人、そそくさと降りてくる。手際だけは早い。強盗の腕を捻り上げ、拘束具で縛り、ナイフを拾って袋へ入れる。透が押さえていた場所から、強盗が引き剥がされる。


 警官の一人が透を見た。感謝の色はない。眉が寄り、制服に視線が落ちる。


「その制服。町中の学生だな」


 透は息を整えながら頷きかけたが、次の言葉で止まった。


「困るんだ。辺居の中で問題を起こすのだけは止めなさい。ここはキミのような子が来ていい場所じゃない」


 透は口を開いた。反論が喉まで来た。

 ――問題を起こしたのはどっちだ。助けたのは誰だ。


 でも、警官は透の返事を待たなかった。強盗を引きずるように車へ押し込み、そのまま走り去っていく。通りには、また妙な静けさが戻った。


 透は、そこで腑に落ちた。

 警察は辺居の揉め事を片付けに来たんじゃない。町中の学生が関わったから来たのだ。責任問題になるから。面倒だから。そんな理屈が、警官の目の動きから透にも見えた。


 透は地面に落ちていた秘傘を拾い上げた。店主へ返そうとしたとき、手元のそれが妙に重く感じた。

 よく見れば、ところどころ錆が浮いている。骨組みが歪み、開閉の継ぎ目がガタつく。新品の整った作りじゃない。どこかの廃棄所から拾って、自己流で直しながら使っている――そんな雑な修復跡が、手触りで分かる。


 透は秘傘を差し出した。


「これ……落ちてました。大丈夫ですか?」


 店主は秘傘をひったくるように受け取った。透を見ない。眉間の皺だけが深い。


「余計なこと言うんじゃねぇぞ」


 それだけ吐き捨て、店内へ戻っていった。

 扉が閉まる。シャッターの鎖が鳴る。透はその音を、しばらく聞いていた。

 周囲の人間も散り散りになった。さっきまでの緊張が嘘みたいに、誰もが自分の用事へ戻る。何事もなかったように。

 透は胸の奥に、早々に不愉快な塊が沈むのを感じた。


 透は早足にその場を離れた。辺居の通りを歩く。目に入るものは、どれも疲れた色をしている。煤けた壁、継ぎ当ての服、修理跡だらけの道具。町中の綺麗さとは違う“生き延びるための汚れ”が、あちこちにこびりついている。


 しばらく歩くと、酒場の前を通りがかった。店前の粗いテーブルで、作業員らしき連中が酒をあおっている。小人、森人、人間。三人が肩を寄せていたはずなのに――透の制服に気づいた瞬間、空気が変わった。


「おい」


 一人が声をかけてくる。

 別の一人が立ち上がる。椅子が乱暴に鳴る。


 三人が、透を囲むように動いた。

 透は足を止め、口の中の唾を飲み込む。心臓が早くなる。大槌は、持っていない。


 ◆


 作業員たちの影が、透の足元へじわじわ寄ってきた。

 小人の男が椅子を蹴って立ち上がり、森人の男が鼻で笑い、人間の男が肘で透の肩を押すように間合いを詰める。酒の匂いと汗の匂いが近い。


「町中のガキが、なんの用だよ」


 透は反射で一歩引きかけて、踏みとどまった。引いたら、追ってくる。そういう空気だ。拳を握りしめそうになるのを堪えて、視線だけは逸らさなかった。


「別に……」


 透の喉が鳴った。言葉を続けようとした、その瞬間だった。


「――やめんかい!!」


 通りの空気を裂くような怒声が落ちた。

 三人の肩が跳ね、透も思わずそちらを見る。


 ガムテープでぐるぐる巻きにされた秘傘を杖代わりにした老婆が、ずかずかと歩いてきていた。耳が長い。森人だ。背は低いのに、近づくほどに圧が増す。視線ひとつで場が締まる。


「またお前らかい、馬鹿どもが。酒飲んで威張るなら、せめて明日の飯の算段つけてからにしな」


 老婆は言いながら、躊躇なく杖で尻を叩いた。

 ぱしん、ぱしん、と乾いた音。作業員たちは痛みより先に“叱られた”ことに反応して背筋を伸ばし、顎を上げて姿勢を正す。


「す、すんません」

「怖がらせるつもりは」


 三人は透の方へ向き直り、深々と頭を下げた。


「……悪かった。脅すつもりじゃなかった」

「ほんと、すまん」


 透は面食らって、言葉が出なかった。

 さっきまでの険が、まるで別人みたいに引っ込んでいる。


「よし。行け。邪魔だよ」


 老婆がまた尻を叩くと、三人はそそくさと散っていった。椅子を戻す音も小さく、通りに残ったのは酒場のざわめきだけだった。

 店内から店主が顔を出した。眉を釣り上げ、老婆に食ってかかる。


「おい! 金が払われてねぇだろ!」

「世話の焼ける馬鹿どもだよ」


 老婆は懐から小銭を出し、乱暴なくらいの勢いで店主に押しつけた。


「私が払っておくよ」

「いや、あなたから金なんて――」

「うるさい。受け取りな」


 店主は押し負けたように金を受け取り、渋い顔で引っ込んでいった。扉が閉まる。老婆は何事もなかったみたいに息を吐いて、透へ目を向ける。

 透は思わず口にしていた。


「……何者?」


 叱られる、と思った。

 だが老婆は、目尻をしわくちゃにして笑った。


「ただ、ババアさね」


 笑みのまま、顎で先を示す。


「ついてきなさい」


「え、どこに? なんで? だれ……」


 透の疑問が追いつく前に、老婆は歩き出してしまった。

 透は立ち尽くし、背中を見送って――なぜか、追わない選択肢が浮かばなかった。声も、歩幅も、背中も、“従わせる”力がある。


 透は小走りで追いついた。


 細い路地を抜け、瓦礫の匂いが薄れていく。通りの端に積まれた鉄くず、修理痕のある端末、寄せ集めの板で塞がれた窓。辺居の“いつもの景色”が流れていく。


「うちの者が悪かったねぇ」


 老婆がぽつりと言った。


「え?」

「さっきの連中さ」


 透は首を傾げたまま歩き、次の言葉で背筋が伸びた。


「あんた、シルバんとこの子だろう?」

「――っ」


 透の顔が固まったのが、自分でも分かった。

 昨日、少し話しただけの相手なのに。白枝会の“代表”のことを、こんな場所の老婆が、呼び捨てみたいに。

 老婆は、かかかっと喉を鳴らして笑った。


「わかりやすい子だねぇ。そんなんじゃ、すぐに足がついちまうよ」


 透は慌てて顔を取り繕おうとし、姿勢を正したつもりが、逆にぎこちなくなった。口から出たのは、敬語にもなり切れない言葉だった。


「代表のこと、知ってんるんですね?」

「そりゃそうさ」


 老婆は当然みたいに言う。


「なんせ、あの子のオムツを変えてたのは私だからね」


 透は足がもつれそうになった。

 森人の代表よりもさらに年上? 冗談の言い回しじゃない。老婆の目はからかっているだけじゃなく、確かに“過去”を見ている。


 透の中で、別の疑問が膨らんで口をついた。


「……なら、太陽がなくなる前の世界を知ってるん、ですか」

「そりゃそうさ」


 軽い答えが返ってきて、透は一瞬言葉を失った。

 生き字引。そういう言葉が浮かぶ。でも、目の前の老婆は偉そうにしていない。むしろ、肩をすくめるみたいな歩き方だった。

 透は勢いで言いかけて、途中で噤んだ。


「どうして、あなたみたいな人が、こんな所に――」


 失言だ、と遅れて気づく。透の頬が熱くなった。


「……ごめんなさい」


 老婆は足を止めずに言った。


「何を誤ることがあんのさね」


 そして、淡々と、ひどく正直な言葉を並べた。


「あんたの言う通り、ここは掃き溜めさ。敗戦国の者、ろくでなし、退役軍人、孤児、娼婦。どいつもこいつも、うだつが上がらない馬鹿ばかり」


 透は胸の奥がちくりとした。

 さっき警察に言われた“ここは来ていい場所じゃない”と同じ匂いなのに、老婆の言葉には、侮蔑よりも“諦め”が混じっている。


「私だって同じなんだよ」


 老婆は杖を持ち上げ、ガムテープの巻かれた秘傘を軽く振った。


「外の世界を見たいと飛び出して、行く当てもなく身体を売って食いつないで、帝和に流れ着いてからも同じような生活を続けて……気づけばこの様さ」


 透は何も返せなかった。

 言葉が出ない。慰めも、同情も、正しさも、ここでは薄っぺらい。


「それ以外に私がしたことといえば、ただ見てきた世界について語ることだけ」


 老婆は肩をすくめる。


「それしか私には無かったからね」


 透が息を呑んだ、そのときだった。

 小さな足音がぱたぱたと駆け寄ってくる。数人の子どもが、老婆へ飛びつくみたいに寄ってきた。


「未見ばあちゃん! 青い海の話! 船の話!」


 期待で弾む声。さっきまでの重さが嘘みたいに、場が明るくなる。


 老婆は顔をくしゃくしゃにして笑った。


「はいはい。あとで話してやるよ。今は皆、遊んでおいで」


 子どもたちを広場へ追いやるように手を振る。子どもらは笑いながら走っていった。

 老婆に連れられて来た先は、少し開けた場所だった。どこからか持ち込んだ遊具が置かれ、広場の一角では炊き出しが行われている。テントに見える文字――白枝会。

 透の胸の奥が、ふっと緩んだ。

 ここに、白枝会の手が届いている。守っている、という実感が初めて形になった。


「ただ、見てきたものを喋るだけ」


 老婆――未見は、子どもたちを見ながら言った。


「でもね、これだけの事で誰かを楽しませることが出来るんだから、お得さね」


 かかかっと笑う声に、周囲の大人たちもつられて口元を緩める。さっきの電気屋の前の冷えた視線とは違う、柔らかい空気があった。

 未見は顎で、広場の端を示した。


「ほれ、あそこ」


 透が見ると、一人の女性が子どもを連れて、壮年の女性に深々と頭を下げていた。未見が小さく説明する。


「頭を下げてる方が、電気屋の店主を脅してた男の妻で、腕組んでる方が店主の妻さ」


 次の瞬間、頭を下げていた女性の影から、男の子が飛び出し――店主の妻の膝を蹴った。


「――っ!」


 店主の妻が驚いて、その頭をひっぱたく。

 間髪入れずに、強盗の妻も子どもの頭をひっぱたく。二人して、同じ方向を向いて叱り始める。子どもは涙目で逃げ出し、広場の中心へ駆けていった。


 強盗の妻はまた深々と頭を下げる。

 店主の妻は呆れたように肩を落とし――ほんの少しだけ、笑っていた。


 透はその光景を、理解しきれないまま見ていた。

 恨み合うのが普通じゃないのか。なのに、叱るのは一緒で、逃げる先は同じ遊具で、周りの大人たちは止めもしない。


 未見が言った。


「変な場所だろう?」


 透は黙って頷いた。


「誰も彼も毎日が命がけだから、生きるために何でもする。それでも、同じ境遇で生きてる以上、協力もするし、争いもする。家族とはいえないが、他人とも言い難い」


 未見は子どもらの笑い声を聞きながら、最後に笑った。


「なんとも可笑しな場所なのさ。辺居ってところは」


 透は、胸の奥の不愉快さが、別の形へ変わっていくのを感じた。

 嫌いだ、と切り捨てるには、ここには生活がありすぎる。汚れも、優しさも、卑しさも、ぜんぶ一緒くたで――生きている。


 未見は、肩を揺らして笑った。


「未見。それが私の名前さね。名字は忘れたよ。とっくの昔にね」


 そして、白枝会のテントの方へ目を向ける。


「ここにいる人たちの生活を守ってくれてる、白枝会のあの子には感謝してるよ。もちろん――」


 未見は透へ視線を戻し、少しだけ目尻を柔らかくした。


「アンタにもね」


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