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拍手まとめ

ブログの拍手まとめです。

☆衝動×キス


――視線を感じる。


それは物陰から等ではなく、はっきりと隣に座っているやつから感じるものだ。

それに耐えきれなくなり俺は口を開いた。


「おい、どうした?」

同じように私室のソファに座っているシルクへとそう尋ねた。

無事結婚式も終え、やっと一緒に暮らせるようになり早一年。

長かった。長い。本当にこの平穏までたどり着くのが長かった。

あのシスコンが……


「何か言いたい事でもあるのか?」

それに対してあいつはむっと口元を歪め「……なんでもない」と、手にしている書物から視線を外さずにそう答えた。

先ほどまで意味深なぐらいにこっちを見詰めていたくせに。

それなのに何事もなかったかのように文字を追っている。


一体なんなんだ? まさか、気づかないと思っているのか?

本を読んだ振りをして、ちらちらとこちらを見ているにはバレているんだぞ。


浮気の疑いでもかけられているのだろうか?

そう思う俺は、シルクに女性遍歴を知られているからだろう。

勿論、シルク以外愛している女はいないし、誤解の無いようにしている。

ただ時々あのシスコン野郎に嵌められ、新聞沙汰になるだけだ。

本当に往生際が悪い……


「俺は別れないからな。折角あの最大の障害物が折れて、無事一緒に結婚生活が始まったばかりだというのに」

「急に何を言っているの? それに、私達の結婚に障害なんてあった?」

「あっただろうが! 最大最強の障害が! ……まぁ、いい流せ」

「それよりもどうして別れ話にいくの? 誰もリクと別れるなんて言ってないでしょ?」

「だったらなんだ?」

「……別に」

いや、別にじゃないだろうが。

怪訝に思いながらも、俺はそれ以上シルクが何も言わないからそっとしておいた。

無理やり聞くものでもないしな。


ただ一つだけ、言わねばならない事がある――


「もし何か心配ごとがあるなら、言えよ。俺はお前の夫なんだからな」

そう告げ、俺はシルクの頭を撫でた。


「――っ」

「赤くなった」

「リクのバカっ!」

「お前のバカなら可愛いから構わないぞ。何度でも言え。どこぞのシスコンの『貴方は愚者ですか? いえ、聞くまでもありませんね』の一撃はヤバイけどな」

「え? 誰……?」

「気にするな。どこぞの病的なシスコンだ」

勿論、ラズリに決まっている。

ギルアに来る時は必ず連絡入れろっていうのに、あいつは予告なしで来るから心臓に悪い。

マジで寿命が縮む。わざとだな、アレ。


だから国境沿いの騎士達に、「ラズリが来たら早馬を走らせろ!」と命令しているが、この間は影武者使われてしまい、気が付いた時には本体が城内へ。

あの時は悪い夢でも見ているかと思った……


「シスコン?」

「いい。お前は気にするな。それより何かあったら言えよ? お前のためなら、なんでもしてやる」

「……ほんと?」

「あぁ」

「呆れない?」

「あぁ」

「実はね……」

その時だった。ノック音が耳に届いたのは。

そのため、シルクが言いかけた言葉は音として流れる事は無かった。


「失礼します」

入って来たのは、メイドのルナ。

にこにこと笑みを浮かべ、こちらを――シルクの方を見ると口を開く。


「シルク様。花壇に植える花の準備が整いましたわ! お着替えの準備も整っております」

「はい。今いきます」

シルクはそう返事をすると、すっと立ち上がる。


「……あぁ。今日は花壇の植え替えするんだったな」

以前に俺がプレゼントした花壇。

シルクが居ない間はメル達が手入れをしてくれていたが、シルクが今年からは自分も手伝いたいと言って約束を取り付けていたのを思い出した。

この間ハイヤードのバーズ国王自ら苗を運んできたから、恐らくそれを植えるのだろう。


「じゃあ、行ってくるね」

「あぁ」

シルクは俺が座るソファの後ろを通りルナの元へ。

そしてそのまま、一緒に扉へと消えていく。


――あいつ、何か悩み事でもあるのか?


手にしていた本を閉じながらあれこれ最近のシルクの様子を思い描くが、これといって何も変わったことはない。いつも通りだったが……


「まさか、ホームシックか?」

と呟いた瞬間、キィと数秒前に閉じられたはず扉がゆっくりと開く音が耳に届く。

それにつられるようにそちらへと視線を向ければ、

そこには扉から顔を覗かせるようにしているシルクの姿が見えた。


「シルク?」

小首を傾げる俺に、あいつはただ何も言わず室内へと足を踏み入れて来た。

そして俺の元まで来ると、「目を閉じて」とただ一言だけ告げてくる。


「何故?」

「いいから!」

「わかった」

言われた通りに目を閉じる。すると、唇の端に何か触れた。


「さ、さっきね、キスしたかったの!」

「!?」

キスされたと頭が理解すれば、跳ね上がる心臓と誰かが駆け出していく足音が急速に鮮明に聞こえてくる。そしてすぐ傍に居たはずの愛しい妻の存在が扉の閉まる音と共に消えていった。



+おまけ


ルナ「あら? シルク様。顔が赤いですが……」

シルク「なっ、なんでもないです! 走ってきたからかな?」

ルナ「もしかしてリクイヤード様と何かありました?」

シルク「!?」

ルナ「あらあらー。かまかけただけですのに。ごちそうさまですわ」(にやにや)




☆『リクイヤードとメイド達の会話』


「リクイヤード様。荷物の搬入終わったようです」

「わかった」

馬車の前に佇んでいると、そうスウイに声をかけられたので頷く。

これから俺はシルクの元へと向かう。

精霊祭も終わり、疲れているであろう愛妻の心身を俺の愛で癒すために。

離れている間にあいつに購入したプレゼントもちゃんと持参する。


「忘れ物はございませんね?」

見送りのメイド達の列から、ササラが尋ねて来た。


「あぁ、ちゃんと運ばせてある。それに一番大事な物は常に俺が持っているから大丈夫だ」

「あら? ですが何もお持ちになられてませんわよね?」

「いや持っている。俺の愛だ!」

そう宣言すれば、何故かメイド達全員俺から目を反らして、「ソウデゴザイマスネ」と片言の感情のこもってない呟きを漏らした。


なんだ、こいつらの反応は!? 大事で最も価値あるのが俺の愛だろうが!

分かって無さすぎるだろうが。


「愛は大事だろ」

「えぇ、そうですわねぇ。本当に。ごもっともですわ」

「感情込めろ!」

「込めております」

「込めてないだろうが!」

「そんな事よりも今度こそシルク様の件、ラズリ様を説得なさって来て下さいませ」

「あぁ、なんとかやってみる。あのシスコンしつこいよな。本当に諦めればいいのに」

俺はぽつりと漏らし、ハイヤードの方角を見た。

心なしか、空はどんよりと灰色だった。今にもどしゃ降りの雨が降りそうだ。


なんて色だ……


さい先が悪すぎだろう。これもあのシスコンのせいか?

今回も無理か……いや、駄目だ。諦めるのは早すぎる。今度こそシルクを!


俺は自分を奮い立たせながら、シルクとの結婚を掴むためにあのシスコンと対峙する決意を新にした。

さて、なんと言って説得するべきか。


あいつもしつこいからなぁ……



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