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最低階級の戸籍係 ~皇女に拾われた俺は、身分を管理する役人になった~  作者: 大豆


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第19話 最後の敵

王都は混乱していた。

地方貴族による反乱。それは、単なる政治的な抵抗ではなかった。


彼らは軍を動かした。

理由は一つ。自分たちの特権を失いたくないから。


「現在、各地の領主が兵を集めています。」


軍務大臣が報告する。


「王都へ向かって進軍している部隊もあります。」


会議室。そこにいる人間は、以前なら決して同じ場所に集まらなかった者たちだった。

皇帝。皇女。貴族。役人。そして。元労民の俺。


「予想していたとはいえ、早かったですね。」


俺が言う。

グレイヴ侯爵が頷く。


「彼らは改革案が正式に認められる前に動いた。時間が経てば、民衆の支持が広がる。そうなれば、もう止められないからだ。」


俺は地図を見る。

敵は強い。旧貴族連合。長年、国を支配してきた者たち。

金。兵力。権力。すべてを持っている。


「軍で制圧しますか?」


将軍が聞く。皇帝は黙っていた。

俺は首を振る。


「それでは意味がありません。」


全員が俺を見る。


「なぜだ?」


将軍が聞く。


「反乱した貴族を倒しても。また別の人間が同じことをします。」


俺は答える。


「必要なのは、人を変えることではありません。仕組みを変えることです。」


グレイヴ侯爵が静かに言った。


「では、どうする?」


俺は一枚の紙を出した。


「公開します。改革案の最終版を。」


リリアが驚く。


「今?」


「はい。」


「反乱中に?」


俺は頷く。


「だからです。」


敵は言う。改革すれば国が壊れる。民衆は混乱する。だから今の制度が必要だと。


なら、答えを示す。


「新しい国の形を、全員に見せます。」


その日の午後。王都中に新しい声明が出された。


『王国改革宣言』


内容は明確だった。

・出生による身分区分の廃止

・全ての国民への教育機会

・能力による官職選抜

・戸籍制度の権利保障化

・貴族制度の段階的改革


それは三百年間変わらなかった国の根本を変える宣言だった。


当然反発もあった。

しかし支持する声も増えた。


「子どもには、自分で未来を選ばせたい。」


「父や祖父と同じ人生を強制されたくない。」


「初めて、国が自分たちを見ている気がする。」


民衆の声は広がった。

そして、反乱軍の内部にも変化が起きた。


「本当に戦う必要があるのか?」


「改革後も能力があれば地位は残る。」


「なぜ、すべてを壊そうとする?」


貴族たちの間でも意見が割れ始めた。

しかし、中心人物だけは違った。

旧貴族連合の指導者。アルベルト公爵。彼は最後まで抵抗した。


「愚かな。」


彼は城の中で呟く。


「民に力を与えれば、国は崩れる。支配する者と、される者がいるから秩序は保たれる。」


その報告を聞いた俺は、少し悲しくなった。

グレイヴ侯爵と違う。この男は、本当に何も変えたくないだけだった。


「エイル。」


リリアが言う。


「最後の交渉をするの?」


「はい。」


「危険よ。」


俺は笑った。


「今までずっと危険でしたから。」


翌日、俺は反乱軍の本拠地へ向かった。

護衛は少ない。武器も持っていない。持っているのは。一枚の新しい国の設計図だけ。


城門前。アルベルト公爵が待っていた。


「労民が一人で来るとはな。」


「あなたと話をするためです。」


「何を話す?」


俺は答えた。


「終わらせるためです。」


公爵は笑う。


「何を?」


俺は真っ直ぐ見る。


「三百年間続いた、生まれで人間を決める時代を。」


公爵は剣を抜いた。


「ならば証明してみろ。お前の理想が、この国を守れるということを。」


最後の戦いが始まる。

しかし。これは剣の戦いではない。


国の未来を決める戦いだった。

読んでいただきありがとうございました。

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