↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最低階級の戸籍係 ~皇女に拾われた俺は、身分を管理する役人になった~  作者: 大豆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/20

第18話 皇帝との約束

公開裁判場の空気は、もう最初とは違っていた。


最初、俺は反逆者としてここへ来た。

しかし今、人々は俺の言葉を聞いている。


貴族も。民衆も。兵士も。そして、皇帝も。


「エイル。」


新皇帝は玉座から俺を見る。


「お前は、身分制度をなくすと言ったな。」


「はい。」


「では聞こう。」


皇帝は静かに続ける。


「身分制度をなくした後、この国を誰が支える?」


予想していた質問だった。

制度を否定するだけなら簡単だ。問題はその後。


「能力のある者が支えます。」


俺は答える。

貴族席から笑い声が上がる。


「理想論だ。」


「人間は平等ではない。」


「生まれによって差があるのは当然だ。」


俺はその声を聞きながら言った。


「違います。」


会場が静まる。


「人間に差があることと、生まれで未来を決めることは別です。」


俺は続ける。


「力がある人間。知識がある人間。人をまとめるのが得意な人間。」


それぞれ違う。だからこそ。

生まれではなく、本人の能力を見るべきだ。


「では。」


皇帝が聞く。


「能力をどう判断する?誰が公平に決める?」


俺は答えた。


「試験制度です。」


会場がざわめく。


「身分に関係なく。誰でも受けられる試験。そこで能力を証明した者が、役職につく。」


ミリアが補足する。


「記録管理も変更します。現在の戸籍は、身分管理のために使われています。しかし改革後は、権利を保障するために使う。」


皇帝は黙って聞いていた。


「面白い。」


彼は呟く。


「つまり、お前は貴族を消したいわけではないのか?」


「はい。」


俺は即答した。

予想外だったのか。会場が静かになる。


「優秀な貴族がいるなら、国を支えるべきです。問題なのは。」


俺は貴族席を見る。


「何もしなくても、生まれだけで権力を持つことです。」


グレイヴ侯爵が目を閉じる。

否定できない。なぜなら、それは彼自身も理解していることだった。


「……なるほど。」


皇帝は背もたれに寄りかかる。


「お前は革命家ではないな。制度破壊者でもない。なら何だ?」


少し考える。

昔の俺なら、ただ不満を叫んでいたかもしれない。

しかし今は違う。


「記録を正す者です。」


俺は答えた。


「間違った記録によって人の未来が決められているなら、正しい記録に戻すだけです。」


皇帝はしばらく黙った。

そして。


「エイル。」


「はい。」


「お前に一つ聞きたい。もし……、もしこの国の頂点に立てるとしたら何を望む?」


会場が緊張する。

皇帝の質問。それは権力欲を試すものだった。


俺が、結局は地位を求めているのか。


しかし答えは決まっていた。


「何も。」


驚きの声が上がる。


「私は、皇帝になりたいわけではありません。貴族になりたいわけでもありません。」


俺は続ける。


「ただ。誰かが、生まれだけで諦める国を終わらせたい。」


リリアが俺を見る。彼女は少し笑った。


皇帝は目を細める。


「欲がない人間ほど、危険だな。」


その時。突然、裁判場の扉が開いた。

一人の兵士が駆け込む。


「陛下!緊急報告です!

地方貴族が反乱を開始しました!」


会場が凍る。


「何?」


皇帝が立ち上がる。


「誰が?」


兵士は震えながら答えた。


「身分制度改革を阻止するため、旧貴族連合が軍を動かしました。」


沈黙。

グレイヴ侯爵の顔色が変わる。


「馬鹿な……彼らは、本当に国を割るつもりか。」


皇帝は窓の外を見る。王都の向こう。遠くで煙が上がっていた。


俺は理解した。裁判で終わりではない。

本当の戦いは、今、始まったのだ。


「エイル。」


皇帝が言う。さっきまで敵だった男が初めて俺に向き合う。


「お前の改革案、国を救うために使えるか?」


俺は驚く。


「陛下……」


「答えろ。」


皇帝の目は真剣だった。

俺は少し考え、頷いた。


「できます。」


「なら。」


皇帝は命じた。


「この国を変えてみろ。ただし。」


冷たい声が続く。


「失敗したら。お前も、私も。歴史に敗者として残る。」


こうして。反逆者だった少年は。


国を変えるため、皇帝と一時的な協力関係を結ぶことになった。

読んでいただきありがとうございました。

よろしければ評価いただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。