第六話 朝食
いつも通り五時に起きる。
俺は毎日朝の五時に起きるようにしている。
理由は夜は眠くて大体のことに集中できないからだ。
起きたとき、同じ部屋に人が寝ているというのは結構特殊な気分になる。
相手が女の子ならばなおさらだ。
彼女は、記憶喪失らしく行く当てがないため少しの間俺の家に泊めることになった。
正直、出会ってから一日もたっていないような男の家で眠れる彼女のメンタルには惚れ惚れする。
いや、もしかしたら、知らない男と寝ることは危険という常識も記憶喪失でなくなっているのかもしれない。
というか、記憶喪失なのになぜ彼女はしゃべれるのだろう?
彼女は寝ているようだし、とりあえず俺の部屋にあるパソコンで、記憶喪失について調べてみることにした。
わかったことは以下のとおりである。
・記憶喪失の原因としては、脳の損傷、精神的ショックやストレスなどがある。
・記憶喪失でもしゃべることができるのは、言葉を扱う脳の領域と個人の経験を記憶する脳の領域が異なっているからである。
・記憶喪失にも軽いもとと重度なものがある。
・基本的に、時間経過や、精神的に安定できる状態を維持することで自然に治癒する。
医者でもない素人の俺に調べられることはこれぐらいだった。
それに、もし彼女の記憶喪失があの空間によって引き起こされたものだとしたら、これまでの医学などまったく意味をなさないのかもしれない。
「どうしましょうかねー」
調べたこと、あるいは、これからどうするのかを考えながら彼女の顔を見つめていたら、不覚にも、下半身の方が元気になってきてしまった。
正直、彼女の顔は、人間離れしていると言っていいほどに美しい。
整った顔立ち、青く輝く瞳、青白くツヤとハリのある肌。
まずいまずい。
俺はトイレに行き、荒ぶる息子をなだめてきた。
ここで、俺の恋愛または性欲に関する考えを紹介しよう。
まあまあ、長くなるが、まあまあ、面白い考えなので最後まで聞いてほしい。
まず、俺は恋愛をする気がない。
理由は三つある。
一つ目は、俺が恋愛にかなり向いてないということだ。
俺は女子と目を見て話せないし、顔は不細工、おまけに清潔感までない、あとなぜか女子としゃべるとき敬語になってしまう。
だから俺は彼女はもちろん女友達もできたことがない。
二つ目は、俺にとって恋愛は時間の無駄だということだ。
これは決して、すべての人にとって無駄だと言っているのではない。
あくまで俺の場合だけだ。
俺の人生の目的は世界の真理、「必ず正しいこと」を見つけることだ、その目標に恋愛は必要ない。
三つ目は、俺が恋愛なんてしたら、相手も俺も不幸になるからだ。
人間にとって、一番苦痛なのは、大切な二つのものの間に挟まれることだと思っている。
もし、俺が本当に人を好きになってしまったら最後。
一生俺の頭の中で、その人との時間、あるいはその人自身を一番大切にしたい自我と恋愛なんて言う時間の無駄なことはせず世界の真理を追い求めることを目指す自我で争いが生まれ続けるだろう。
それはきっと最悪な気分だ。
それに俺は今のところ、賢者タイムになってもその人のことを思ってしまったことは一度もない。
実際、俺も人間ではあるため、本能的に性的な意味での好意が生まれてしまうことは悲しいことにある。
しかし、賢者タイムはそういう本能的な欲求がなくなるため、理性的な愛情による好意しか成立しないのだ。
その時間に好意がなくなるということは、俺はまともに人のことを愛すことができないクズなわけだ。
そんな俺と付き合う彼女が幸せなはずがない。
だから、性欲の管理さえうまくできていれば、彼女を襲ってしまう心配はないのだ。
「おはようございます」
どうやら、彼女も起きたようだ。
「おはようございます、あの、床で眠らせてしまってすみません、ちゃんと眠れましたか?」
「はい、意外と床でもちゃんと眠れましたよ」
「それはよかったです」
「もし、おなかすいてたら何か持ってきましょうか?」
「あ、じゃあ、お願いします」
階段を降りリビングに行く。
今は、朝の六時、しかも夏休みだ。
もちろんリビングに人がいるはずもないので、安心して食料窃盗ができる。
「んー、どれにしよう」
ギトギト系のカップラーメンでも持っていこうかと思ったが、これは俺は好きだが、彼女のような華奢な少女が好むとは思えない。
しかし、それ以外によさげなものはない。
卵はあるが、俺は目玉焼きでさえ焦がしてしまう男だから駄目だ。
仕方ないから、あのカップラーメンを持っていくことにした。
「ごめんなさい、こんなものしかなくて」
「大丈夫ですよ、これはなんて食べ物なんですか?」
「えー、油そばの、カップラーメンです」
「おいしそうですねー」
「もうできたので、どうぞ」
彼女の前にカップラーメンと箸をおくと、おなかがすいていたのかすかさず食べ始めた。
んん??
よくよく考えたらおかしい点がいくつかある。
なぜ、見た目が明らかに日本人ではない彼女が箸を普通に使って食べているのだ?
というか、なぜ日本語をしゃべっているのだろう?
もしかしたら、もともと育ちは日本だったのかもしれない。
それにしても、この子、、、
食うのが早すぎる。
俺と同じレベルにいるといっても過言ではない。
俺も、汁がない系のカップラーメンは二口ほどで食べきれる猛者だが、彼女も二口半ぐらいで食べてきた。
それに彼女は右腕なし、左手一本で食べきったのだ。
これまで、俺の周りに俺と張り合えるやつがいなくて退屈していたが、彼女なら俺と早食いバトルしてもいい勝負になるかもしれない。
そんなことはどうでもいいんだ。
「あの、その箸の使い方、どこで覚えたかとかわかります?」
「ん!わからないです、なんで使えたんだろう?」
「それは、多分、記憶を失う前に日常的に使っていて、脳の長期記憶の方に記憶されていたからだと思います」
「へー、そうなんですね」
さっき、調べた情報によると、記憶喪失の回復には、精神的に安定することが大切らしい。
俺としても記憶が戻ってくれれば、あの空間について何かわかるかもしれないので、できるなら彼女には安心して過ごしておいてほしい。
「まだ、不安はありますか?」
「はい、、」
「じゃあ、今日はその不安をなくすために、どこか外に行きませんか?」
「いいですね」
「それに、楽しんだり、安心したりすることで記憶が戻りやすくなるらしいですよ」
「そう、、なんですね、、」
「もしかして、外はあんまり行きたくないですか?」
「あ、全然、そういうわけではないです、ここ辺に何かいいところはありますか?」
んー、外に行こうとは言ってみたものの、ここは、そんな都会でもないし遊べるところは多くない。
それに、彼女は、金髪で、片腕がなくて、めちゃくちゃ美人だ。
あんまり人が多いところに行くのが得策とは思えない。
「近くに、森林公園があるのでそこに行くのはどうですか?」
「行きたいです!」
「じゃあ、僕は外に出てるんで、着替えてもらってもいいですか?あ、そういえば男用の服しかありませんが、、」
「それは全然大丈夫ですよ!でも、、私右腕がないみたいなので服を着るの手伝ってもらいたいです」
??????
「いや、、さすがにそれは、、」
「谷原さんが、私に欲情しなければいいだけでは?(笑)」
??????
「あ!目隠し探してきます!そうすれば大丈夫ですよね」
「目隠ししたらちゃんと着るの手伝えないじゃないですかー、もしかしてー」
「ほんとに欲情しちゃうんですかー?(笑)」
大丈夫だ、俺の息子の世話はさっきやったはずだ。
大丈夫だ、俺ならできる!
「わかりました、やってやりますよ」
「暑いかもですけど、このジャージでいいですか?」
「はい、、、」
「どうしたんですか?」
「あの、、実際やるってなると、ちょっと恥ずかしいなって」
「じゃあ、どうするんですか?」
「いや、、やっぱ、手伝って下さい、、」
彼女が、服を脱ぎ始める。
半裸の彼女に近づき服を着せていく。
ガス抜きした後とはいえ、この状況はさすがに本能的に興奮してしまう。
時々、彼女の体や腕が当たる。
さすがにこれ以上は、まずい、となったとき、幸いにも着替えは終わった。
「ありがとうございました!ホント助かりました!」
「え、ええ」
こうして俺たちは家を出て、朝の公園へ向かった。




