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悲劇

俺は姉弟にスーパーの奥に隠れているように指示を出し、入り口へ駆け出した。

入り口には巨大な化け物が2体いた。マンモスのような生き物とサソリそっくりの化け物だった。しかもこの2体は争うことをせず、まるで共闘しているかのような行動をしていた。この化け物は知性があるのか。


俺はメタモルフォーゼした。悪鬼の形相をしたケンタウロスに似た化け物に変身した俺はマンモスの踏み付け攻撃を回避する。時々、触手が伸びてきて体を捕らえようとしてくる。さんざん回避した挙句、羽を使って空中に一時避難したその時、背中から鋭利な突起でくし刺しにされた。サソリの尻尾による攻撃だった。俺は血反吐を吐きながら、両手で突起を掴み脱出を試みる。サソリが俺を遠心力で投げ飛ばしたため、スーパーの壁面に激突し落下した。このままでは殺される。どうする。


姉弟はスーパーの奥の従業員の休憩室に逃げ込んでいた。誰もいなかったがテーブルの上に見たことがある物が複数個あった。まぎれもなくそれは“死の実”だった。

なぜそこに置かれていたのかはわからない。しかしそんなことはどうでもよい。

ハルカは考えた。変身した豪徳寺さんは強い。でも私たちがいることで足手まといになるかもしれない。今だって私たちを逃がすために戦ってくれている。1人であれば戦わず逃げることも可能なのだ。確か“死の実”を食べれば化け物か、または意志の力が強ければ人間の意識を持ったまま化け物になれるはず。もしもの時は食べよう。

ハルカは、1個を手に取った。


ススムは、豪徳寺のことが気になって仕方がなかった。ハルカが呼び止める間もなく、スーパーの入口に駆け出した。入り口にたどり着いたススムがみた光景は・・・・。


ケンタウロスに似た姿をした豪徳寺が瀕死の状態で倒れていた。腹から体液が吹き出しどう考えても助かりそうになかった。

「お兄ちゃん、死なないで。」それがススムの最後の言葉だった。

マンモスの触手がススムを絡めとり口に投げ込む。

その光景を、ススムを追って駆けてきたハルカは見た。脳天から稲妻が体を一気に通り過ぎた。立っていられずその場に崩れ倒れこむ。

「逃げろ」豪徳寺のかすれた声が聞こえた。

その時のハルカに意識はなかった。無意識のうちに手に持っていた“死の実”をかじっていた。


体内から急速に湧き上がってくる無限の怒りのパワーが1度死んだ体を再構築していく。

ハルカは化け物に再生した。果たして人間の意識を持ったままで変身したのか。


ハルカの体は、オオカミの姿だった。鋭い牙が口の両脇に並び、手足の爪は何でも切り裂けるような鋭利な刃物だった。この化け物の一番大きな特徴は、俊敏性とジャンプ力、そして噛み切る力が強大なことだ。

攻撃してくるマンモスの触手をすべて噛み千切り、サソリの両手の鋏も尻尾も噛み千切り戦力を無効化した。俊敏性に長けていたため、マンモスの踏み付け攻撃もかわし続け、喉元に噛み付き攻撃を仕掛ける。マンモスは体液を撒き散らしながら死に絶えた。

サソリは武器がなくなり、動けなくなっていた。

この戦いは、オオカミの化け物の本能とハルカの無意識の融合による結果だった。

ハルカの人間の意識が強かったら、この力は発揮できていなかったに違いない。


オオカミは、サソリの体を噛み砕き続けていた。動き回る力がなくなったサソリは為すがままの状態だった。

俺は腹部の傷がかろうじて塞がるとオオカミに変身しているハルカを抱きしめた。

俺に敵意を持っていないオオカミは静かになり、落ち着きを取り戻した。

「ハルカ、人間体に戻ろう。意識を集中させるとうまくいく。」

しばらくすると、ハルカは人間体にメタモルフォーゼした。


俺も人間体に戻り、ハルカに向き合う。

「すまない。ススムを守れなかった。」それ以上、言葉が続かなかった。

ハルカは、無言で首を振りながら泣き続けた。


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