俺は人間なのか
神木は気づいた。自分と同じように人間の意識を保ったまま化け物になった奴がいる。
そいつが集団で襲わせた大型ショッピングセンターで死闘を繰り広げたことを。
どうやら化け物の個体としても上位種のようだ。強さのレベルが桁違いだ。
さらに戦いの後、人間体にメタモルフォーゼしたようだ。現在は、幼い人間の子供2人と一緒にいる。どういう奴なのか非常に興味深い。しばらく観察してみよう。豪徳寺は化け物をすべて倒し人間体に戻った。そして、フロアーの隅に隠れていた姉弟と対峙した。他に生きている人間は近くにいなかった。死んだのだろう。
幼い姉弟はフロアの隅からこちらを見ている。目の前で起こった悲惨な状況を理解できないでいるのだろう。俺の頭の中でも現実なのか夢なのかはっきりしない状態だから仕方がない。しかし、このままでは埒が明かない。そう逡巡していた時、男の子が声を出した。
「人間なの?」姉と思しき子供はこちらを注視していた。
「俺は人間なのか?どうだろう。俺はまだ人間のつもりなんだが。」
姉は中学3年生、弟は小学4年生だった。おそらく栄養不良のため体が小さく見えたのだろう。片親である母親は仕事で忙しく、時々2人で時間つぶしに大型ショッピングセンターに来ていたとのこと。最近はこういう行動をしている子供は思ったより多いのだ。
社会の歪みだろう。親は低賃金で子供に構う時間もなく働かねばならず、世間の大人は他人の子供の行動を見守る余裕もなくなっている。文明は進んでいるはずなのにどうしてこうなったのだろうか。不思議だ。
姉の名は斎藤ハルカ、弟はススムであった。
ぎくしゃくしたが、なんとかお互いに名前を教えあうことが出来た。
俺はこの姉弟と一緒にこれからどうするか考えた。まず、この姉弟を母親の元に無事に送り届けることにする。母親の職場を聞くと近くのコンビニだった。その場所は先ほどの化け物の集団が暴れまわった場所であり、どう考えても生存者がいるとは考えられない瓦礫の山になっていた。
この姉弟だけではこれから無事に生きられるはずもない。俺はこの姉弟が安全に暮らせる場所が見つかるまで、しばらく一緒に行動することにした。




