化け物の主導者
これまで化け物は単独で発生し事件を起こしていたのだが、化け物を複数体同時に操れるものが出てきた。どうやら“死の実”を食べたことにより化け物になったのだが、人間の記憶が残っている個体がリーダーになっているらしい。
このリーダーが率いる集団は強い。人間の知識があるため警察や自衛隊が考える作戦を見抜き、隙をついて圧倒的なパワーで集団行動による反撃をしてくる。警察や自衛隊におびただしい被害が出だした。
神木 卓はパン工場の期間行員として働いていた。しかし人員削減のため契約が終了してしまった。また、寮に住んでいたのだが契約終了とともに住む場所を失った。
政府は、同じようなリストラが日本の至る所で行われているのに寝泊りや食事を得られるような救済策を打つこともしなかった。炊き出しが自治体主催でかろうじて行われているに過ぎなかった。
生きることへの希望を失った者たちの絶望が怒りに変わった時、“毒の実”が一縷の救いに見えたとしてもなんら不思議ではなかった。多数の者が社会への復讐者になる事を選んだのだ。
神木は意を決して“死の実”を食べた。一気に貪り食った。食べ残すことなく全部食べることにより、より強い化け物になり世の中に復讐することを自身に誓ったのだ。
喉を焼くような熱さと痛み、胃袋から内臓へ染み渡る苦しさと悪寒、強烈な頭痛、全身から血の汗が吹き出し、しばらく地べたでウネウネともがき苦しんでいたが、やがて意識がなくなった。
意識が覚醒した時、化け物に変身した自分が認識できた。神木は人間の意識を残したまま化け物になったのだ。
外見はバッファローのような角を持つ筋骨隆々の2足歩行の生き物だった。両手足の先端の爪は何でも切り裂けるほどの鋭さを持っていた。
神木は他の化け物の本能に作用する精神力があった。化け物には知性がなく本能のみで動くと考えられているため、精神力が化け物の行動を制御および統制していると考えられる。よって、化け物が単独行動では無防備で銃撃や火炎放射による攻撃で駆逐されるとしても、集団であれば仲間の体を防壁にして被害を抑えることが出来るし、反撃も可能である。神木の率いる化け物集団は警察や自衛隊を返り討ちにして、その存在を知らしめた。神木自身も、もともと死ぬ気だったため、どれだけ警察や自衛隊と戦えるか、やれるだけやってみようという気になっていた。




