閑話
緊急事態対策室では真剣な議論が行われていた。
警察及び自衛隊の幹部が会議を行っているのだ。
議論の中身は、化け物の中に化け物と敵対している存在がいること、また、化け物の中に人間の体に戻れる奴がいるらしいことが挙げられていた。
どうやら、化け物になったにもかかわらず人間を守るために、同類の化け物と戦っているらしい。
それは自衛隊の斥候部隊からの報告だった。
「化け物なのに人間を助け、人間に戻った奴を見た。」
あり得ない話ではない。化け物になっても人間の頃の意識や感情が残っていたとしても何ら不思議ではないからだ。ただ、その生命体を人間として扱えるかというと話は別だ。
いつ人間性を失い、化け物の本性を現すかわからない。結果、やはり化け物の扱いは変わらず、見つけ次第、駆逐の対象であると結論付けられた。「疑わしきは罰せよ」の理論だ。
このような緊急事態時では仕方ない判断である。まさに正論だ。
最近は、リーダー格の化け物がいなくなったせいで化け物の駆逐がスムーズに行われていた。ただ、警察も自衛隊もリーダー格の化け物を倒した覚えがない。そうなると、おそらく“化け物”がリーダー格の化け物を倒したのだろう。その“化け物”は人間体として避難所に紛れて生息しているに違いない。
この“化け物”の存在については、政府でも意見が真っ二つに分かれていた。1つは人間に危害を加えず、ましてや人間を守ろうとする存在ならば見逃すべきである。という意見。
もう1つは、あぶりだしてでも駆逐すべきだという意見。
もっとも、探そうにも簡単に正体を明かさないと思われるが。
豪徳寺は一見サラリーマンに見え、ハルカは小学6年生に見える外見をしている。
そのため、一般人に紛れると全く違和感がなかったので発見されていなかった。
人間は極限状態に置かれると本性が現れる。警察官にも自衛隊員にも不届き者は存在する。市民を守る立場にありながら、権力を振りかざし暴力を振りかざすものがいるのだ。
ある日、ハルカが1人で避難所のトイレに行ったところ、入り口に複数の男性警察官が立ち塞がっていた。
「お嬢ちゃんは帰りな。ここは大人専用だよ。」
「おいおい待てよ。俺は趣味だぜ。お嬢ちゃん。トイレの中に入りな。」
気持ち悪くなるニヤけた表情の野郎ども。ハルカには、トイレの中からの複数のうめき声が微かに聞き取れた。何が行われているのか、すぐに気づいた。
今、豪徳寺に相談する時間はない。どうする。変身すれば正体がばれてしまう。しかし、このまま見過ごすのは嫌だ。ならば・・・・。
ハルカは変身すると、人間の皮をかぶった鬼畜どもを粛正した。慰み者にされていた女性たちを開放すると即座にその場から走り去った。
いつしか避難所では「良い化け物がいる。」「私は化け物に助けられた。」「男性の警察官や自衛隊員が怖い。」などの話があちこちで噂されるようになった。
この避難所には人間体に変身している化け物がいるらしい。
政府の何が何でも化け物を駆逐する派のメンバーがやってきた。女、子供を痛めつければ正体を現すことが分かっている。この際、死刑にしてやろうとの思惑だった。
避難所では持ち物検査が行われていた。実際には、きれいな女性や子供の所持品に難癖をつけ別室において反省会という破廉恥なことを企んでいた。
この行動に疑問を投げかけた男性が皆の前で半殺しにされた。そのため、恐怖による支配が実行されようとしていた。
化け物も怖いが人間も怖い。これでは救いがない。
正しいことを行う正義の使者はいないのか。
「避難所にいられなくなるが、どうする。」
「私は見て見ぬふりはしたくない。人間としての自分が許せなくなる。」
「わかった。それでいい。俺も同じ考えだ。」
2人は変身し、ことごとく悪人を排除した。
豪徳寺とハルカは、この避難所を去った。
閑話 終




